クルマ好きにとって、「スポーツカー」という響きは特別だ。スタイリッシュなフォルム、刺激的なエンジンサウンド、さらには愉悦のドライビングプレジャーなどなど、それだけで気分は高揚してくる。ここでは世界各国を代表する6台のスポーツカーを集め、各々の個性を深く掘り下げてみたい。
PORSCHE 911 CARRERA 4S/ポルシェ911 カレラ4S
【比較試乗】「アルピーヌA110 vs ルノー・メガーヌ ルノー・スポール」フレンチスポーツの作り方と鍛え方
カレラの日本上陸が楽しみ
スポーツカーの絶対的なベンチマークが、またも基準を塗り替えてしまった。クルマが目指した方向性はタイプ991とほぼ変わらないと感じるが、それだけにハードウェアの進化ぶりが如実に出ていて、タイプ991に乗り換えると想像していた以上に古さを感じてしまう。このインパクトは大きい。ただし、高性能化が進んで全体のタッチが少々ドライになってしまった感はある。その意味ではカレラが楽しみ。そして右ハンドルだとせっかくのドライビングポジションの良さが……好きな方を選ばせてほしい。(島下泰久/Y.Shimashita)
911は怪物のようなクルマだ
RRの911は後ろ寄りの重量配分ゆえにメリットもデメリットもあるが、長い歴史の中での進化は、デメリットを潰すことが主だった。比較的に新しい997ぐらいでもフロントへ荷重を与えることを少しは意識させられることもあるが、991ではトルクベクタリングで折り合いをつけ、992では後輪ステアでさらに進化。しかも自然な感覚を伴っているのがすごい。加えて911のデイリーユーススポーツカーという面での熟成度も凄まじく、そこらの高級乗用車では太刀打ちできないほど。怪物のようなクルマだ。(石井昌道/M.Ishii)
場面を問わず気持ちよく走る
ドイツを代表するスポーツカーであり、世界のスポーツカーの範でもあり続ける911。運動性能的には完璧とはいえないパッケージを技術でカバーし続けてきた半世紀以上の歴史には頭が下がる想いだ。そして最先端・最新鋭でありながら普遍的という稀有な立ち位置を確立したのは水冷世代の功だろう。日々の移動から週末のサーキットまで場面を問わず気持ちよく走るその多用途ぶりは進化の歩を留めない。民主的というには速すぎ高すぎの感もあるも、992は努めて911のポリシーに忠実で居続けている。(渡辺敏史/T.Watanabe)
いまだにスポーツカーのお手本
後軸からリアのオーバーハングにかけて質量のあるパワートレインを置くという、ヨー慣性モーメントの観点からすれば圧倒的に不利なパッケージにもかかわらず、モデルチェンジの度に期待を裏切らない進化を遂げ、いまだにスポーツカーのお手本として君臨するその様には呆れるほど尊敬する。誰にでもどんどん乗りやすくなって、911に対する大衆への間口が広がることがいいのか悪いのかはよく分からないけれど、車両本体価格だけはどんどん大衆を置き去りにする設定になっていることだけは確かである。(渡辺慎太郎/S.Watanabe)
理想的なエンジンに進化
カレラにおけるターボ第二世代となった992は、しかし無粋なレスポンス遅れなど全く感じさせず、むしろ低速からトップエンドまで隙のないリニアリティをもつ理想的な内燃機関へと仕上がった。またシャシーも完璧で、日常域での快適性が非常に高い。その反面ボクサー6の荒ぶれた鼓動や、RRの片鱗といった趣味性の部分が感じ取れず、一見すると刺激が足りなく映る。しかしこのシャシーが持つ潜在能力は恐ろしく高い。本気で走らせる舞台さえあれば、GT3いらずの走りを披露する隠れた主役だと思う。(山田弘樹/K.Yamada)
いい911として進化してきた!?
いい911ってどんなクルマなんだろうか。進化を繰り返しても、911はいいクルマになってはイケナイという宿命を負っている。一時期いいクルマを目指したことがあったけれど、ポルシェの開発メンバーもちゃんとそのあたりは心得ていて方向性を修正してきた。駆動方式はベースをRRとして、エンジンはフラット6。そんなこだわりが、クセのある姿勢変化をもたらす。ただ、最新モデルはクセが薄らいでしまったかな。カレラ4Sだっかからかもしれないけど。エンジンは、まさにカミソリの切れ味!!(萩原秀輝/H.Hagihara)
LOTUS EVORA/ロータス・エヴォーラ
本物のクラブレーサーへと進化
エリーゼのプラットフォームを極限までワイドトレッド化し、3L V6スーパーチャージャーを横置き搭載したミッドシップは、デビュー当初荒々しさや操作性の難しさばかりが目立ったが、度重なる改良を経て本物のクラブレーサーへと進化。特に水冷式インタークーラーを備え、足回りを研ぎ澄ませた410スポーツはアマチュアドライバー珠玉の1台。刺激性は残しながらも、優れた空力性能と足つきの良さが安心感を高め、自分の限界にチャレンジさせてくれる。運転のしやすさは日常域にも反映されている。(山田弘樹/K.Yamada)
ロータス流のデイリースポーツ
どこからか“エンジンはトヨタのV6でしょ”みたいな声が聞こえかねないけど、知らなければ絶対にそうは思わない。だって、中回転域にかけてのトルクの盛り上がり感と高回転域にかけてのパワーの伸び感はスーパーチャージャーの威力があったとしてもトヨタっぽさとは無関係。しかも、4500rpmから高周波サウンドにレーシングエンジンのようないい意味のメカニカルノイズが重なるあたり、ピュアスポーツ用ユニットとして文句ナシ。しかも、エキシージほどトンがってないからデイリーに乗りこなせる。(萩原秀輝/H.Hagihara)
味はちゃんとロータスしている
最高出力は416psもあるし、車重はこの410スポーツでは軽量化されているとは言え1.3トン以上。「少ないパワーでも軽さを活かして……」がロータスじゃないの? なんて思いつつ走らせたら自分の不明を恥じることになった。普通に飛ばしても十分よく曲がるが、エヴォーラはコーナーに放り込むが如く思い切って攻めると、さらにイキイキとした反応を示す。ターボじゃなくスーパーチャージャーを使った効果でエンジンも切れ味上々。絶対的な速さを高めつつも、その味はちゃんとロータスしているのだ。(島下泰久/Y.Shimashita)
ロータスらしさはエヴォーラにも
ライトウエイトゆえにライド&ハンドリングで優位に立つというロータスらしい考え方はエヴォーラにも引き継がれている。生まれが同世代のスポーツカーに比べると、サスペンションはしなやかで路面追従性が良く、乗り心地とハンドリングのバランスが絶妙なのだ。最新世代のドイツ車などは最先端テクノロジーでバランスの次元を高めてきているが、エヴォーラは比較的にプリミティブな中で達成しているのが賢いところ。次世代のロータスが早く現れてくれることに期待したい。(石井昌道/M.Ishii)
エリーゼよりも高度なスポーツカー
エリーゼは近代ロータスの祖といっても過言ではないクルマだ。そのミニマルな成り立ちは様々な影響をスポーツカーの世界に及ぼしている。アルファ・ロメオ4CやアルピーヌA110もそのひとつだろう。エヴォーラはそんなエリーゼの延長線上にあり、1960年代からのロータスの悲願であるスポーツGTでの成功も視野に入れたモデルだ。スペックは過激でも乗ること自体は容易い。でも、理解し乗りこなすには相応のスキルと共にブランドへの敬意が求められる。ある意味エリーゼよりも高度なスポーツカーだ。(渡辺敏史/T.Watanabe)
パワーがなくても速く楽しく走れる
昨今のスポーツカー市場は、特に高額モデルで一種のパワー競争のような事態に陥っている。500ps / 500Nm超えのモデルも珍しくなくなったいっぽうで、数々の電子制御デバイスを発動させてパワーを抑え込みながらまともに走らせるという不合理なロジックも見受けられる。ABSとESPしかなくても、500ps以下/ 500Nm以下でも、速く楽しく痛快に走れることは可能。そもそもスポーツカーとはそういうものだったのではないかと、まるで世間に無言の提案をしているかのごとき主唱者がエヴォーラだと思う。(渡辺慎太郎/S.Watanabe)
LAMBORGHINI URUS/ランボルギーニ・ウルス
毎日快適に乗り回したい方に
見る者を釘付けにするラジカルなスタイリングが魅力のランボルギーニを毎日快適に乗り回したい。そんな要望にピタリとはまるのがウルスだ。ミッドシップのスーパースポーツであるウラカンやアヴェンタドールとは違ってFRベースAWDのSUVであるから、シャシーの生い立ちや性能的にはランボルギーニとしては異端児だが、パフォーマンスの高さでは裏切らない。エアサスペンションは乗り心地も膨大によくしていて、ドライビングにいやな癖などがないのも現代的。コンセプト通りに出来上がっている。(石井昌道/M.Ishii)
ラグジャリーなランボもイイね
ランボルギーニがヤルとSUVがこうなるのか……と、感心することしきり。まず、近年のランボルギーニとしては初めてラグジャリーな一面を備えているからアニマでストラーダにすれば快適な走りが楽しめる。それでも、エンジンは低く唸り続けるので誘いかけがある。それに乗ってスポーツにすれば、俄然ランボになる。アクセルを踏み込めば、エンジンはカーンという快音を響かせながらシャープに吹け上がる。2速でレブリミットまでブン回しても100km /hに収まるあたりもイイね。(萩原秀輝/H.Hagihara)
これぞ現代のスーパーカー
日常での快適性は損なわれないどころかむしろ高く、押し出しがめっぽう強く、驚くほどに速い。公道でのモラルが大きく問われる今、2座スポーツカーが力を発揮する場所は限られる。周りを気にしながら、回せぬエンジンの心配をするよりも、日常でランボルギーニのエキゾチック性をたっぷり味わいながら、快適に乗り回す方がクール。人々の欲望を性能として備え、これをきっちりデザインに表現したという点で、もはやウルスは現代のスーパーカーだと言える。まさにランボルギーニがやるべき一手だと思う。(山田弘樹/K.Yamada)
技術力の高さに感銘
ウルスに乗って感銘を受けたポイントは二つ。VWグループでシェアするMLBEVOと呼ばれるプラットフォームは、ウルスの他にポルシェ・カイエンやベントレー・ベンテイガやアウディQ7も使っているのに、各車の乗り味は見事に差別化が図られている。MLB EVOの許容範囲というかポテンシャルには甚だ驚かされた。そしてもうひとつはランボルギーニの技術力の高さ。誰も味わったことがない現代版ランボルギーニSUVとして、誰の期待も裏切らない性能と品質を備えたプロダクトを完成させたからだ。(渡辺慎太郎/S.Watanabe)
21世紀の新しいスポーツカー像
イタリアといえばスーパーカーの故郷。誰もが思い浮かべるのはフェラーリとランボルギーニだろう。そのランボルギーニが作るウルスは昨年、百花繚乱のSUVカテゴリーに打って出た1台。当然ユーザーが期待するのは破格のスポーティネスだ。その問いに対する答えは、後ろ支えするアウディの技術を拡張した全知全能のトラクション能力に支えられる、雪や砂漠といった状況でもお構いなしだろう、とてつもない速さだ。これぞ21世紀の新しいスポーツカー像といわんがばかりの佇まいも性能との帳尻が合っている。(渡辺敏史/T.Watanabe)
全天候型スーパースポーツ
ついにランボルギーニもSUVか……と思いきや、実際に走らせれば、ウルスは単に流行りに乗っただけの存在ではないと、すぐに解る。最高出力650psを誇るだけに動力性能は強烈だし、サーキット走行も余裕でこなすダイナミクスも実現している。しかも、実はダート路面に急勾配や急斜面など険しいオフロードでも、電子制御を巧みに駆使して痛快な走破力を見せつけるのだ。まさに全天候型スーパースポーツ。やるならすべてを徹底的にというランボルギーニの掟は、しっかり貫かれている。(島下泰久/Y.Shimashita)
CHEVROLET CAMARO SS/シボレー・カマロ
アメ車に乗りたくなってきた!
カマロの何がスゴいって、超アフォーダブルなこと。輸入車では1psあたりのお値段が激安、レクサスRC Fと比べてもざっくり3割引。それでいて、LT1型V8エンジンは6.2Lの排気量を頼りにパフォーマンスを得ているワケではなく、6500rpmまでシャープに吹け上がり回転数でパワーを稼ぎ出している。組み合わせる10速ATは切れっ切れだし、LSDや電制サスを標準装備。しかも、シボレーMyLinkインフォテイメントシステムやBoseプレミアム9スピーカーオーディオシステムなど快適装備まで充実。(萩原秀輝/H.Hagihara)
実は最高の友となれる一台
パワーこそ453psと現代のハイパースポーツと比べれば少ないが、これが不足といえば絶対にウソ。さらに617Nmのトルクをぶちかませば、細かいことはどうでもよくなる。ゆったりしたサスペンションはしかしマグネティックライドダンパーがもたらす減衰反応の良さをもって、この速さを受け止める。思った以上にその操作性は良好なのだ。普段はのんびり。しかしきっちりスポーツできる大排気量FR車としてカマロは、実は最高の友となれる一台ではないか? 6.2Lの税金を払っても手に入れる価値はある。(山田弘樹/K.Yamada)
豪快さこそがアメリカンの魅力
“ガバッ”とスロットルペダルを踏むと“ドドドーッ”と加速して“エイヤ”でステアリングを切れば“ガガッ”と向きをかえる。カマロは(というかアメリカのスポーツカーやスポーティーカーは全般的に)、走りの表現に擬音がよく似合う。この豪快さこそがアメリカンスポーツカーの魅力であることをメーカーもお客も分かっているし、他国とは決定的に異なる美点でもある。それでも現行のカマロは昔に比べればずいぶん細かいコントロールができるようになった。やんちゃを忘れない成熟した大人みたいである。(渡辺慎太郎/S.Watanabe)
コスパに優れた万人向けクーペ
アメリカンスポーツの象徴であるコルベットに対して、カマロは半世紀以上に渡って実用性や快適性、価格も重視した万人向けのクーペとして市場に受け入れられてきた。シャシーが大きく進化した近年、本国では700ps超えの強烈なモデルも用意されるが、それは限られた一部好事家のものであって、このクルマの趣旨は肩肘張らず気持ちよく走るというのものだ。搭載されるV8も飛ばすのではなく流してハマるリズム感で整えられている。そういう緩めの世界観を確信犯で備えるクルマは本当に少なくなった。(渡辺敏史/T.Watanabe)
V8のSSは胸のすく加速を披露
日本では20代からも熱い支持を受けているのが話題となったカマロ。映画『トランスフォーマー』の影響があるのは間違いないところで、そこが入り口の人にとっては2?直4ターボでもまったく不満はないだろうが、やはり大排気量V8を搭載するSSの魅力は捨てがたい。普段乗りでは重厚感のある回り方をしているが、アクセルを踏み込んでいくとシュパンッと切れ味鋭い回転上昇を見せ、まさに胸のすく加速を披露。シャシーも骨太感があってミズスマシのようにコーナーで向きをかえるのが気持ちいい。(石井昌道/M.Ishii)
LT1ユニットの吹け上がりが快感
乗るたび思うのは、アメリカンスポーツをナメちゃいけないということだ。特にSSは、そのLT1ユニットの吹け上がりが快感。OHVも、これまたナメちゃいけない。しかもシャシーが秀逸。電子制御でなだめすかせるのではなく、FRの基本に忠実な挙動が自然と正しい運転に導く。それは操縦のリアリティにも繋がっていて、ゆっくり走っていても充足感、濃密だ。コンペティティブドライビングモードなどの仕掛けも興味深いし価格も最高にリーズナブル。スポーツカー好きなら、一度試してみるべし。(島下泰久/Y.Shimashita)
ALPINE A110/アルピーヌA110
もっともワインディングが楽しい
ミッドシップのスポーツカーは、限界を超えたときのコントロールが難しいからアンダーステア傾向に躾けるのが旧来の常識だったが、最近では車両安定装置などテクノロジーの進化で是正されつつある。A110も車両安定装置を採用してはいるものの、それ以前の基本として4輪ダブルウイッシュボーンでシャシーの基本性能を高め、ニュートラルに近いハンドリングを実現。どんな速度域でもストレスなくクイクイと俊敏に曲がる性能を手に入れた。いまもっともワインディングロードが楽しい1台だ。(石井昌道/M.Ishii)
人たらしな距離感がお見事
アルミニウム製ボディのミッドシップに252psを発揮するエンジンと7速DCTを組み合わせて積み、しかもこのスタイリングでしょ。乗る前からワクワクさせられるし、手を伸ばせば路面に届くほど低いフルバケットシートに腰を降ろすとドキドキしてくる。インテリアも、そんな気分を少しもシラケさせない。ところが、走り始めると“アレっ”となるほどフレンドリー。ドライバーを過剰に身構えさせない絶妙な距離感、それが走り込むほどにクルマと近づいていく。A110の人たらしっぷり、お見事です!(萩原秀輝/H.Hagihara)
最高のポジショニング
A110は真のエンスージアストが選ぶべきスポーツカーの中にあって、今最も輝く存在だ。その理由はルノー・スポールが、自分たちのプロダクトにおいて常にドライビングプレジャーを一番優先する性能として掲げているから。サスペンションはスポーツカーとしては異例なほどストロークフルで接地性が高く、車体の動きが分かりやすい。限界領域を迎えても、ミッドシップとは思えないほど挙動が落ち着いている。エリーゼよりも近代的で、ケイマンよりも刺激的。最高のポジショニングにいると思う。(山田弘樹/K.Yamada)
フランス車らしく快適性も考慮
スポーツカーの作り方にはいろいろあるけれど、A110はばね上もばね下もあえて動かして気持ちいい操縦性を作りだしている。脚を固めて車高を下げて、ばね上の動きを抑え込むことで余計な動きを排除する方法とはむしろ対極に位置する。ばね上をあえて動かしてピッチとヨー方向の挙動をうまく利用しながら旋回するやり方だと、減衰力やばねレートを極端に上げる必要がないから乗り心地への悪影響を最小限にできる。日常の快適性を絶対におろそかにしないクルマ作りはフランス車の真髄とも言える。(渡辺慎太郎/S.Watanabe)
造り手の技の深さを感じる
復活したA110のイチバンの見どころはシャシーの懐深い味付けの妙だと思う。それを支えるのが節々に押出材を贅沢に用いてアルミ材を繋ぎ止める軽量高剛性のフレームワークだ。美しさも感じられる無駄なき取り回しにこのクルマがいかに本気で走りを追求してきたが垣間見える。その上で、A110が目指したのは必死な速さではなく、多くの人が身の丈で楽しくドライブ出来るコントロール性の高さ。スポーツカーを知り尽くしているからこその余裕、それを味わいに変える能力に、造り手の技の深さを感じる。(渡辺敏史/T.Watanabe)
ワインディングで最高の相棒に
車重約1100kgという軽さにミッドシップレイアウトだから、フットワークは俊敏そのもの。しかも、しなやかな脚まわりはロードホールディング性に優れ、安心して限界に挑んでいける。1.8Lターボエンジンは色艶に乏しいが、フラットな特性で優れたコントロール性に貢献している。そう、すべてがコーナリングを楽しむためにA110は出来ている。個人的にはこのクルマなら、サーキットもいいがワインディングロードを目指したい。どこまでも続くコーナーを攻略するのに最高の相棒になるだろう。(島下泰久/Y.Shimashita)
MAZDA ROADSTER RF/マツダ・ロードスターRF
刺激は強烈じゃないけど……
RFがデビューしたとき、開発スタッフに“エンジンがもう少し回るといいのになぁ”と試乗中の一人ゴチを伝えたら、何と“もう少し待ってください”とポロリ。それが、'18年にホントになったというワケ。エンジンは7500rpmまでガンガン回り、でも184psしかないから与えてくれる刺激は強烈じゃない。けれどもワインディングロードを走らせれば、アクセル操作を駆使して高回転域をキープしながら自ら引き出すパフォーマンスに“オレ様だからできる”的な自尊心をまでくすぐってくれるんだよね。(萩原秀輝/H.Hagihara)
本当に運転が好きなら選ぶべき1台
速さと利便性の調和。小型スポーツカーとしてのポテンシャルを楽しむなら2LのRF。でもライトウェイトスポーツカーの本質を問うならやっぱり1.5Lのソフトトップ! いつもロードスターに乗ると答えが出ない。残念なのはデフレ日本において、その価格がどうしても高価に感じられてしまうこと。走りとデザインの良さはもはや語るべくもない。本当に運転が好きなら選ぶべき1台だ。初代NAのような、庶民の宝物感が消えてしまったことだけが残念でならない。もう一度ロードスターに乗りたい!(山田弘樹/K.Yamada)
初代からのコンセプトを守り続ける
パワー競争に巻き込まれず、というよりもハナから参加する気持ちなどさらさらなく、軽量コンパクトでシンプルな構造のFRのスポーツカー作りをコツコツとやってきたマツダとロードスターは、ロータスに少し似ているかもしれない。初代ロードスターを作るにあたりロータス・エランの研究もしたそうで、親和性があるのも頷ける。初代からの基本コンセプトを忠実に守り続ける点ではちょっと911のようでもある。変革より継続のほうがずっと難しく、ロードスターの評価は30年の歴史への評価でもある。(渡辺慎太郎/S.Watanabe)
間違いなく日本を代表するスポーツカー
ロードスターの歴史は今年で丁度30年。911のそれとは比べるべくもないが、初代からのブレなさという点は世界でも例がないだろう。現行ND型の車重は1トンと、オープンスポーツにおいては破格の軽さを誇り、そこにあえて回転フィールや伸びの軽い1.5Lユニットを組み合わせる。そのこじらせ気味な幌仕様のスペックに対して、RFは発売当初よりパワーアップされた2Lユニットを搭載するが、ピュアネスという点でいえば幌屋根に勝るものはない。共に間違いなく日本を代表するスポーツカーだ。(渡辺敏史/T.Watanabe)
911とは対極のスポーツカー
911は最新が最良であり、モデルチェンジのたびに速さも増す、ある意味で常識的なスポーツカーだが、現行のNDロードスターは先代よりも遅くなったという非常識なスポーツカーだ。でもそれこそがロードスターのより所。基本は初代NAぐらいの重量とパワーのバランスが、気持ち良さの要であり、そこを大きく外すことはあってはならないということだ。RFはエンジンの改良が加わったことで使い切る快感がソフトトップ並みになった。速さではなく感性で語るロードスターには重要な進化・熟成だ。(石井昌道/M.Ishii)
いつでも、どこでも楽しい
ハイパワー車が相手でも見劣りしないロードスターで走るのは、いつでも、どこでも楽しい。パワーが限られている分、エンジンを目一杯まで回して、ロスのないラインを見つけてきれいにトレースしていく。軽量で好バランスのロードスターなら危なげなく走りを楽しめる。RFでもそうした魅力は基本的には一緒。車体が重く、それに合わせて排気量も拡大されているが、バランスは取れている。このクルマとのこの上ない一体感は、どんなハイパワー車が相手でもまったく見劣りしない圧倒的な魅力。(島下泰久/Y.Shimashita)
オススメのスポーツカーは?
シボレー・カマロSS/アメリカンスポーツもお忘れなく!(萩原秀輝)
アフォーダブルといっても、現実的に680万4000円は手が届きやすい価格じゃない。そこで、Uカーを狙ってみるか……みたいな自分ネタはさておき、たぶん少なくないクルマ好きにとってアメリカンスポーツは興味の対象ではなかったと思う。たとえば“どうせ大ザッパなんでしょ”とかね。
でも、そんな先入観は捨ててしまった方がイイ。6.2LのLT1型V8が発揮する453psは、高回転域に突入するとレーシングエンジン的な高密度感とともに官能を刺激する。もはやスタビリティ自慢の直線番長ではなく、コーナーを気持ちよく駆けぬけるハンドリングが実感できる。
まずは、興味を持ってみよう。その結果はどうでも、シボレー公式サイトに入るだけでも新しい発見があるはずだし、期待が外れることもない。
マツダ・ロードスターRF/スポーツカーの本質を再確認した(島下泰久)
さすがにここまで勝ち上がってきたスポーツカー達は、いずれも確かな実力、そして固有の魅力を備えている。正直、どれでも好きなのを選べばいいんじゃない? で済ませたいが、それもナンなので個人的な思いを述べると、改めて感心したのはエヴォーラとカマロの実力の高さと味の濃さである。
いずれも思い出しただけでも気分が昂揚してくるほど。メジャーな選択肢ではないが見逃すのはもったいないと改めて思う。同様に、今回見直したのがロードスターだ。いつでもどこでも、速く走らせてもゆっくりでも、1人でも誰かとでも、共に過ごす時間すべてが充実したものになりそう。誰かと競うのではなく、自分の世界を充実させるものだというスポーツカーの本質をこのクルマで再確認した。30年の歴史の積み重ねは伊達じゃないのである。
アルピーヌA110/エレガントな佇まいは他にはない魅力(石井昌道)
圧倒的な完成度を見せつける911を推すべきかどうか迷いまくったが、ドライビング・ファンに重きをおいてA110に軍配を上げることにした。ストリートで楽しむことを考えれば911でも速すぎ、A110もギリギリアウトぐらいに速いが、何とか許容範囲だ。ロードスターは速すぎなくていいけど、毎日乗ることを考えるともう少しだけ広さの余裕が欲しい。
またA110のシャシー性能は決定打だ。道が荒れるほど頼もしくなるしなやかで路面追従性の高いサスペンション、アンダー知らずな前後バランスのハンドリングなどはストリート向けスポーツカーとして理想的。ラリーシーンで活躍したオリジナルA110の精神が受け継がれているようにも思えるのだ。さらに、スポーツカーながらエレガントな佇まいは他にはない魅力となっている。
マツダ・ロードスターRF/ロードスターは現代の奇跡!(渡辺敏史)
スポーツカーといえば、とかく700psを超えるようなアルティメイトものが注目されがちだ。が、一方でアルピーヌA110のように程々のパワーを軽い車体で活かして気持ちよく走る的な企画も人気を集めるなど、意外や様々な手法が商業的に成立する最後の百花繚乱なのかもしれない。とはいえ難しい時が確実に近づく中、最も持続可能性の高いコンセプトといえばきしくも日本のマツダが30年前に世に蘇らせ、これまでまったくブレることなく継承され続けてきたライトウェイトオープンだろう。
クルマを取り巻く環境が劇的に変わる中、1トンのFRというパッケージだけでも貴重だというのに、回す罪悪感も和らぐ小排気量エンジンでも充実した速さも濃い対話も極上の開放感も味わわせてくれる。心底、ロードスターは現代の奇跡とさえ思う。
マツダ・ロードスターRF/ロードスターは運転技術を見直すきっかけに(渡辺慎太郎)
細かいことをツベコベ言うようで申し訳ないのだけれど、「お薦め」と「高評価」(と「自分の好み」)が一致するとは限らない。今回もまさにそうで、「お薦め」はロードスターだが「高評価」なら911である。
人に薦める以上、自分では到底買えないような値段のモデルはちょっと無責任だと思うので、そうなると迷うことなくロードスターである。クルマの出来もいいが、自分の運転スキルを見直すきっかけにもなるはず。電制デバイスが多いと、運転に隙があっても気が付かなくなってしまうからだ。ロードスターなら、クルマの運動特性と運転の基本が楽しく学び直せるに違いない。911は電制デバイスの効かせ方が絶妙だし、クルマと会話しながら運転ができる。このコミュニケーション能力の高さを凌駕するスポーツカーはいまだに存在しない。
ランボルギーニ・ウルス/初のSUVとしては100点では(山田弘樹)
お勧めの一台は、ランボルギーニ・ウルスだ。多くのプレミアムSUVがまだスポーツカーとSUVの境界線をさまよいながら躊躇しているなか、ウルスはもったいぶらずにランボルギーニとしての個性をドーン! と表現している。この潔さに匹敵するのはベントレー・ベンティガくらいなものだが、ウルスはランボルギーニの圧倒感を出すだけでなく、二枚目である。どうせならエンジンはV8ツインターボではなく、ウラカンのV10……いや、アヴェンタドールの自然吸気V12気筒を積んで欲しかった。
室内空間がここまでランボルギーニを全うしているのならボディ剛性だってもっと上げて、その運動性能をスポーツカー並みに高めて欲しかった。そんなことが言いたくなるほどウルスはよくできている。ランボ初のSUVとしては100点ではないか?
【Specification】PORSCHE 911 CARRERA 4S/ポルシェ 911 カレラ4S
■全長×全幅×全高=4520×1850×1300mm
■ホイールベース=2450mm
■車両重量=1590kg
■エンジン種類/排気量=水平対向6DOHC24V+ツインターボ/2981cc
■最高出力=450ps(331kw)/6500rpm
■最大トルク=530Nm(54.0kg-m)/2300-5000rpm
■トランスミッション=8速DCT
■サスペンション(F:R)=ストラット:マルチリンク
■ブレーキ(F:R)=Vディスク:Vディスク
■タイヤサイズ(F:R)=245/35ZR20:305/30ZR21
■車両本体価格(税込)=17,720,000円(9月26日現在)
【Specification】LAMBORGHINI URUS/ランボルギーニ・ウルス
■全長×全幅×全高=5112×2016×1638mm
■ホイールベース=3003mm
■車両重量=1382kg
■エンジン種類/排気量=V8DOHC32V+ツインターボ/3996cc
■最高出力=650ps(478kW)/6000rpm
■最大トルク=850Nm(86.7kg-m)/2250-4500rpm
■トランスミッション=8速AT
■サスペンション(F:R)=マルチリンク:マルチリンク
■ブレーキ(F:R)=Vディスク:Vディスク
■タイヤサイズ(F:R)=285/45ZR21:315/40ZR21
■車両本体価格(税込)=28,161,795円(9月26日現在)
【Specification】LOTUS EVORA/ロータス・エヴォーラ
■全長×全幅×全高=4390×1850×1240mm
■ホイールベース=2575mm
■車両重量=1320kg
■エンジン種類/排気量=V6DOHC24V+スーパーチャージャー/3456cc
■最高出力=416ps(306kW)/7000rpm
■最大トルク=420Nm(42.8kg-m)/3500rpm
■トランスミッション=6速MT
■サスペンション(F:R)=Wウイッシュボーン:Wウイッシュボーン
■ブレーキ(F:R)=Vディスク:Vディスク
■タイヤサイズ(F:R)=235/35ZR19:285/30ZR20
■車両本体価格(税込)=14,688,000円(9月26日現在)
【Specification】CHEVROLET CAMARO SS/シボレー・カマロ
■ 全長×全幅×全高=4785×1900×1345mm
■ホイールベース=2810mm
■車両重量=1710kg
■エンジン種類/排気量=V8OHV16V/6153cc
■最高出力=453ps(333kW)/5700rpm
■最大トルク=617Nm(62.9kgm)/4600rpm
■トランスミッション=10速AT
■サスペンション(F:R)=ストラット:マルチリンク
■ブレーキ(F:R)=Vディスク:Vディスク
■タイヤサイズ(F:R)=245/40ZR20:275/35ZR20
■車両本体価格=6,930,000円(9月26日現在)
【Specification】ALPINE A110/アルピーヌA110
■全長×全幅×全高=4205×1800×1250mm
■ホイールベース=2420mm
■車両重量=1110kg
■エンジン種類/排気量=直4DOHC16V+ターボ/1798cc
■最高出力=252ps(185kW)/6000rpm
■最大トルク=320Nm(32.6kg-m)/2000rpm
■トランスミッション=7速DCT
■サスペンション(F:R)=Wウイッシュボーン:Wウイッシュボーン
■ブレーキ(F:R)=Vディスク:Vディスク
■タイヤサイズ(F:R)=205/40ZR20:235/40ZR20
■車両本体価格(税込)=7,900,000円(9月26日現在)
【Specification】MAZDA ROADSTER RF/マツダ・ロードスターRF
■全長×全幅×全高=3915×1735×1245mm
■ホイールベース=2310mm
■車両重量=1100kg
■エンジン種類/排気量=直4DOHC16V/1997cc
■最高出力=184ps(135kW)/7000rpm
■最大トルク=205Nm(20.9kg-m)/4000rpm
■トランスミッション=6速MT
■サスペンション(F:R)=Wウイッシュボーン:マルチリンク
■ブレーキ(F:R)=Vディスク:Vディスク
■タイヤサイズ(F:R)=205/45R17:205/45R17
■車両本体価格(税込)=3,812,400円(9月26日現在)
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