女王のカーライフ
英国では、ほとんどの事柄についてエリザベス女王(エリザベス2世)の意見は明らかにされていない。しかし、彼女が大のクルマ好きであったことは確かなようだ。
【画像】高級車多し。英国が誇る自動車産業【ロールス・ロイスやジャガーなど、英国ブランドの代表的なモデルを写真で見る】 全100枚
1950年には、エリザベス王女として、シルバーストン・サーキットで行われた史上初のF1英国グランプリに立ち会った。1952年に女王となった彼女は、運転したくなければ生涯その必要はなかったが、彼女にとってそれは不都合だったようで、長年にわたってさまざまなクルマを所有し、運転してきた。
そして、93歳くらいまでクルマに乗り続けたという。この特集では、女王が乗っていたクルマ、そして女王自身が運転していたクルマの数々を紹介する。
陸軍入隊
1945年2月、18歳になったエリザベス王女は、英国陸軍の女性部隊である補助地方義勇軍(ATS)に入隊する。そこでジープやトラック、救急車の整備やメンテナンスを学び、米国のAP通信に「プリンセス・オート・メカニック」と呼ばれ、大きな話題となった。
ロールス・ロイス
戦前の王室御用達の自動車メーカーは主にデイムラー(英国に存在した自動車メーカー)であったが、女王の叔父のエドワード8世はロールス・ロイスを選んだ。1950年、エディンバラ公がエリザベス王女とともにロールス・ロイスのファントムIV(写真手前)を納車し、同ブランドとの関係は一段と緊密なものになる。1952年に女王に即位した後、数年間はこのクルマが主要なセレモニー用車両となり、現在でも時折使用されている。
2022年9月9日金曜日、国王チャールズ3世は、即位初日をバッキンガム宮殿で過ごすため、1992年式のロールス・ロイス・ファントムVI(写真後方、中央)でロンドンのRAFノースボルト飛行場から迎えられた。
ランドローバー・シリーズ1
女王はレジャー活動にランドローバーを愛用したが、戴冠式の翌年の1954年にマルタを訪れた英連邦ツアーのときのように、さまざまな公務にも使用した。女王の敬愛する父王ジョージ6世は、1948年に生産100台目のランドローバーを贈られている。
ルノー・ドーフィン
女王のクルマ人生は、以前の王族たちと同様、ロールス・ロイスなどの高級車だけに留まるものではなかった。女王の曽祖父であるエドワード7世が最初に購入したクルマの1つがルノーで、1904年に14/20HPランドーレットを妻のアレクサンドラ女王に贈ったのだ。
ルノーは1926年、ロンドン西部のアクトン飛行場跡地に工場を建設した。1957年、ルノーはこの写真のように、アクトンで製造されたドーフィンをエリザベス女王に贈っている。チャールズ皇太子はこのクルマで運転を学び、生涯にわたってクルマを愛するきっかけとなった。
ロールス・ロイス・シルバーレイスLWB
1956年2月、ナイジェリアを初めて訪れた女王とエディンバラ公は、この1952年製ロールス・ロイス・シルバーレイスLWBであちらこちらを移動していた。このクルマはカノ首長のアルハジ・モハメド・サヌシ1世が所有していたもの。
デイムラー・コンクエスト
1957年のロイヤル・アスコット競馬に参加した女王が、チャールズ皇太子とアン王女を伴い、デイムラーに乗っているところを撮影した写真。女王はクルマが好きだったのかもしれないが、それをはるかにしのぐのが馬と競馬への愛であった。
彼女の馬は70年間、ロイヤル・アスコットに毎年欠かさず参加し、何度も優勝している(最近では2020年)。
ランドローバー・シリーズ1
女王はランドローバーとの付き合いが長く、何十年にもわたって多くのモデルを所有してきた。写真は1957年、女王とエディンバラ公が英国海軍のセントー級航空母艦HMSアルビオンの飛行甲板を見学している様子。
ランドローバー・シリーズ1
女王と公爵にとって、ランドローバーのどこにでも行ける走破能力だけでなく、車高の高さも競馬を見るときに役に立ったのだと思われる。
ヴォグゾールPAクレスタ・フライアリー・エステート
女王お気に入りの愛車の1つに、1961年製のヴォグゾール・クレスタ「MYT1」があった。愛犬のコーギーを乗せることができるスペースが気に入ったのだろう、定期的に運転していた。
このナンバープレートは、エディンバラ公がユーモアを込めて特別に注文したと言われているが、正確な意味は公式には不明である。2022年9月13日、女王の棺は空軍のC-17輸送機でエディンバラからノースボルト空軍基地に運ばれ、ジャガー・ランドローバーが女王の意見を取り入れながら王室と共同で開発した新しい霊柩車に迎えられたようである。その霊柩車に続いて、「MYT1」のナンバープレートを付けた新型レンジローバーL460(Mk5)が、アン王女とその夫ティム・ローレンス元海軍中将を乗せていた。
アストン マーティン工場
戦時中の訓練を受けていた女王は、自動車だけでなく、その仕組みや製造方法にも深い関心を寄せ、数十年にわたり多くの自動車工場を訪問してきた。この写真は、1966年4月にニューポート・パグネルにあるアストン マーティン・ラゴンダの工場を見学しているところだ。
このときアストン マーティンは、6歳の息子アンドリュー王子のために、スポーツカーDB5を贈呈した。もちろん実車ではなく小型化したもので、12Vのバッテリー2個を動力源とし、15km/hくらいまで出せる。同社はこれと同じものを、イラン国王の息子であるレザーに贈ったことがある。
1969年には、チャールズ皇太子の21歳の誕生日に、女王がDB6ヴォランテを贈ることになった。このクルマは2011年4月29日、ウィリアム王子とケンブリッジ公爵夫人キャサリンの結婚式の際に、バッキンガム宮殿にサプライズ登場している。
ランドローバー・シリーズIIa
1972年頃、スポーツを見学する女王とエドワード王子、アンドリュー王子。
ローバーP5
ランドローバーの親会社であったローバーもまた、王室から多大な庇護を受けていた。女王はV8エンジンを搭載したP5を複数台乗り継ぎ、写真の1971年式P5Bは現在、ゲイドンの英国自動車博物館に所蔵されている。このモデルは、1973年に生産を終了した後も、当時の英国首相に長年愛用された。
レンジローバー
1970年に発売されたランドローバーの高級モデル。すぐに王室御用達のクルマとして、公務に追われることになる。
レンジローバー
女王は、すぐにレンジローバーを公務外にも使用するようになった。
ジャガーXJ
1972年、モーリシャスへのロイヤルツアーに使用されたXJのように、ジャガーはセレモニーにも使用されてきた。
シトロエン・シャプロンSMプレジデンシャル
フランスとフランス人をこよなく愛した女王は、プライベートでも頻繁に同国を訪れていた。この写真では、ポンピドゥー大統領と一緒に写っている。大統領は、シャプロンに4ドア・ドロップトップのシトロエンSMを2台発注。そのうちの1台は1972年5月に行われた女王のフランス国賓訪問の際に初めて使用された。
2004年4月、英仏協商100周年を記念し、シラク大統領とともにパリのシャンゼリゼ通りで観兵式を行った。その際に、女王は再びシトロエンSMに乗っている。
デイムラー・スーパーV8 LWB
ジャガーとランドローバーは1968年から1984年まで、そして2000年から現在まで姉妹関係にある。女王は2000年代初頭にデイムラーV8 LWBのセダン(ジャガー製)とジャガーXタイプのワゴンを所有し、運転を楽しんでいた。
2001年夏、女王の下にブリティッシュ・レーシング・グリーンのカラーリングを施したデイムラーV8 LWBが納車される。このクルマは主に、女王がウィンザー市内とその周辺を移動したり、城とバッキンガム宮殿を往復したりするための比較的控えめな移動手段となっていた。
このクルマは12年間で約1万8000kmを走っている。女王のハンドバッグを入れるホルダーなど、特別な改造が施されていた。2013年、一般の人に4万5000ポンドで売却されている。
ベントレー・ステートリムジン
英国の自動車業界は、多くの国産車を女王が所有し、運転することを誇りに思っていた。2002年、業界はその恩義に報いるためにコンソーシアムを組み、V8エンジンを搭載した2台のベントレー・ステートリムジンを製作し、女王のゴールデンジュビリー(即位50周年)に際して贈呈した。ベントレーのリムジンとしては珍しく、レザーではなく布製のシートが装備されているのは、動物が大好きな女王陛下への配慮だ。
ジャガー・ランドローバーのエンジン工場
2014年にジャガー・ランドローバーがウェスト・ミッドランズ州ウルヴァーハンプトンに設立した新エンジン工場を、女王が見学に訪れた。写真では、当時のCEOであったラルフ・スペスが、同社の新しいインジニウム・エンジンについて説明している姿が見られる。
レンジローバーL405
2014年、新型のL405レンジローバー(Mk4)を見学する女王とスペスCEO。その笑顔から、新型車の発表を楽しんでいたことがわかる。ジャガー・ランドローバーはこの年、輸出の実績が評価され、国際貿易における企業賞(Queen’s Award for Enterprise in International Trade)を受賞した。
BAC
英国企業BACは2016年、リバプールのエキシビション・センターで女王をもてなした。リバプールに拠点を置くBACは、車重わずか580kgの1人乗りスポーツカー、モノを生産している。彼女はBACの代表に、これほどまでに異彩を放つ、しかも英国で設計・製造されたクルマを見た喜びを伝えたようだ。BACはモノの縮尺模型を彼女に贈り、現在ロイヤル・コレクションに収蔵されている。
レンジローバーLWBランドーレット
現代のレンジローバーは、2016年のこの時のように、女王とエディンバラ公のセレモニー用車両として広く使用された。クルマの先端部分、よく目立つところには英国王室旗が掲げられている。
エリザベス女王が惜しまれる理由の1つに、クルマ好きだったことが挙げられる。わたし達は彼女の人生を祝福するとともに、彼女の家族へ思いを馳せている。
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