シーズン終盤3戦突入で、ひさびさの300km勝負となったスポーツランドSUGOでの2023年スーパーGT第6戦は、レース中盤に100号車STANLEY NSX-GTが大クラッシュに見舞われる赤旗中断の緊迫した時間を経て、ポールシッターの8号車ARTA MUGEN NSX-GTを逆転した17号車Astemo NSX-GTの塚越広大/松下信治組が今季初勝利を飾った。ホンダ陣営がワン・ツーを飾るとともに、これで17号車はランキング2位にジャンプアップする大きな勝利となった。
真夏の450kmとなった第5戦鈴鹿に続き、9月中旬のSUGOラウンドは土曜午前の公式練習から一部雨絡みの走行セッションとなった。そんな不安定な天候のもと迎えた予選では、8号車ARTA MUGENの大湯都史樹がドライ路面勝負のなかセッション最後のグリップを最大限に活かし、自身初のGT500ポールポジションを獲得。来季からの新型車投入を控えるホンダ陣営にとっては、鈴鹿での16号車に続き2戦連続の予選最速となった。
その背後には、こちらも今季が最終年ながら雨天で無類の強さを発揮するミシュランタイヤ装着の23号車MOTUL AUTECH Zが路面温度30度を切るドライ路面でも速さを披露し、フロントロウ2番手を確保。
2列目3番手の17号車Astemoを挟んで、39号車DENSO KOBELCO SARD GR Supra以下、38号車ZENT CERUMO GR Supra、37号車Deloitte TOM'S GR Supraのトヨタ陣営3台が並ぶなど、その17号車(58kg)を除いてサクセスウエイト(SW)搭載量50kg以下で燃料流量のランクダウン領域に掛からない、比較的軽量なクルマが上位グリッドを占めた。
早朝には霧雨も舞う曇り空となった日曜も、正午から20分間のウォームアップはドライ条件のまま無事完了。今季ここまで続いてきた給油義務2回の450km戦とは異なり、各ドライバー/1スティント勝負の300kmとなるだけに、各陣営が用意した基本戦略や燃費の要素に加え、FCY(フルコースイエロー)やセーフティカー(SC)、さらには天候の急変などSUGO特有の"変数"をいかに捉えるかも重要なポイントとなる。
午後13時30分のパレード&フォーメーションラップ開始を前に、気温は23度、路面温度は33度と週末のセッション最高値となるも、やはり湿度は83%といつトラック上に降雨があっても不思議でないコンディションに。
オープニングの隊列内は大きな動きなく静かな立ち上がりを見せると、13番手発進だった前戦ウイナーの16号車ARTA、福住仁嶺が5周目突入時にトラブルからか緊急ピットからガレージイン。しかし早々の修復なったか、すぐさまコース復帰していく。
上位のトヨタGR勢では38号車ZENTの立川祐路が1コーナーアウトから39号車DENSOのオーバーテイクを決め、すぐさま4番手に進出する一方、GT300のトラフィックが絡んだ9周目には、やはり98kgのSWで3ランクダウンと最大級のパワーダウンを喫している選手権首位の3号車、Niterra MOTUL Zが混走状態に揉まれポジションダウン。14号車ENEOS X PRIME GR Supraと100号車STANLEY NSX-GTの2台が一気に前へ出る。
首位を行く8号車ARTAの野尻智紀は、序盤に1分12秒580のファステストを記録しながら逃げを打ち、2番手の23号車MOTUL AUTECHロニー・クインタレッリに対し、20周時点で9秒953までマージンを広げていく。
レース距離3分の1となる28周目を迎え、大きなアクシデントや降雨はないまま進むと、やはり"外乱"を避けようとミニマムの戦略でピットに向かうクルマが大勢を占め、その28周目に100号車STANLEYが39.2秒の作業静止時間で山本尚貴を送り出したのを皮切りに、続く周回から次々と上位勢がピットに飛び込んでくる。
首位争いでは、その2周後に2番手の23号車MOTUL AUTECHが36.5秒で松田次生に。さらに2周後にはトップの8号車ARTAが41.3秒で大湯都史樹にスイッチする。
続く33周終了のラップで戻ってきた3番手の17号車Astemoは、ここで32.7秒という迅速な静止時間で塚越をコースへ戻すと、トラフィックを含め10秒以上あったマージンを帳消しにして8号車ARTAの前へ。
アウトラップでタイヤグリップの発動を待つ間も、後方から猛烈に近づいてくる8号車大湯を抑え切った塚越は、ウィービングを繰り返しながらテール・トゥ・ノーズ状態で首位を堅守。ここで実質首位が入れ替わる。
まだピット戦略を引っ張る判断と思われる39号車DENSOの関口雄飛と、トップ10圏外から進出してきた1号車MARELLI IMPUL Zが暫定ワン・ツーで率いるなか、39周目のホームストレートで衝撃的な光景が飛び込んでくる。
クラスの先陣を切ってルーティン作業を終わらせていた100号車STANLEYの山本が、グランドスタンド前のガードレールに激突する状況でストップ。クラッシュした車両はモノコック後部のバルクヘッドから千切れるほど大破し、ここでSC導入の宣言からすぐさま赤旗に切り替わる。
午後14時半を前にした事故発生から、迅速な救出活動を経た山本はサーキット内メディカルでのチェック後、約50分を経てドクターヘリで救急病院へ搬送される。そこからレースは15時20分にSC先導で再開されると、45周突入時点で勝負が再開する。
ここで暫定トップ2のうち2番手にいた1号車MARELLIがピットへ向かい、ベルトラン・バゲットから平峰一貴に交代。同じく序盤にトラブルでピットを経験した16号車ARTAもここでルーティン作業を終えていく。
するとこの1号車MARELLIがコース復帰で首位争いの目の前にバックマーカーとして姿を現す状況となり、52周目にはGT300の処理も絡めて8号車ARTA大湯がターン1で17号車塚越をオーバーテイク。ここで首位の座を奪還する。
53周目には暫定首位だった39号車もクラス最後でルーティン作業に向かい、これで順位を入れ替えたホンダ陣営のNSX-GTが本来のワン・ツーへと復帰。3番手に23号車MOTUL AUTECHの松田が続くトップ3となる。
ここから順調にバックマーカー処理を進め、一時は後続に3秒以上のマージンを築いた8号車ARTA大湯だったが、60周を前後して背後の17号車塚越が徐々にその差を削り始めると、70周目には0.326秒差とテール・トゥ・ノーズに迫る。
レコードラインには大量のマーブルが発生するレース終盤、明らかにタイヤのグリップが厳しくなり、レースペースを上下させながらトップをキープしていた大湯だったが、最終コーナー立ち上がりからGT300の処理判断で選択したラインから車速が伸びず。76周目のホームストレートを駆け抜けた17号車が、ここで首位を奪い返してみせる。
ここから8号車に反撃する力は残されておらず。チェッカー目前の80周目には首位との差が5秒以上に拡大するなかで、背後の23号車を抑え切りフィニッシュ。ここまで安定した戦績を残してきた17号車が今季初優勝を手にし、2位の8号車ARTAを含めNSX-GTがワン・ツー・フィニッシュを達成。3位には前戦鈴鹿ではタイヤトラブルを起因とするスキッドブロックの摩耗で失格となった23号車にとっても、雪辱の表彰台獲得となった。
【追記】トップチェッカーを受けた17号車Astemo NSX-GT(塚越広大/松下信治)は、レース後の車検で『スキッドプロック厚み規定違反』(2023 SUPER GT500 TechR 3.22.4A SKID BLOCK/SKID-PAD)と判定され、失格となった。そのため20時05分発表の正式結果にて、2番手でチェッカーを受けた8号車ARTA MUGEN NSX-GT(野尻智紀/大湯都史樹)が繰り上がりで優勝。2位は23号車MOTUL AUTECH Z(松田次生/ロニー・クインタレッリ)、3位は39号車DENSO KOBELCO SARD GR Supra(関口雄飛/中山雄一)という表彰台となっている。
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