ついに開幕を迎えたフォーミュラE 東京E-Prix。今回の舞台となる東京・有明にある東京ビッグサイトの東ホールエリアを囲むようにコースは、全長2.585kmの左回りのコース。開催直前にシケインが追加されたため、合計コーナー数は20となる。
多くのドライバーが事前にシミュレーターで練習をしてきているが、初開催となる東京E-Prixのコースはどのような特徴があるのか。3月29日の走行直前に行われたメディアペンで、日本にゆかりのある4人のドライバーたちに印象について聞いた。
フォーミュラE東京E-Prix初のフリー走行は赤旗2回。雨上がりの路面でフラインスがトップタイム
■セバスチャン・ブエミ「ファーストセクターはすごく狭い」
「東京でレースができるというのは、アメージングなことだ。ここに至るまでに何年もの時間がかかったけど、ついに明日レースが開催される。たくさんのファンが見にきてくれることを願っている」とブエミ。
セバスチャン・ブエミ(エンビジョン・レーシング)は現在、WEC(FIA世界耐久選手権)でToyota Gazoo Racingチームの一員として戦っているほか、フォーミュラEではニッサンのドライバーも務めた経歴を持つ。
「僕も富士や鈴鹿でレースをしたことがあるけど、もちろん、ここはまだない。だから素晴らしい経験になると思う。良い天気の中でレースができれば最高だ」と、好天の中でのレースを期待していた。
コースの印象についてブエミは「ファーストセクターはすごく狭くて、コーナーがたくさんある。ここではオーバーテイクは難しいだろう。だけどセクター2とセクター3はいくつかストレートがあるから、そこでエナジーセーブもできるし、オーバーテイクのチャンスはあると思う。とはいえ、(第2戦)サンパウロほど追い抜きが簡単だとは思わない。いずれにしても予選が重要になると思う」とシミュレーター練習をした感想を語った。
■ニック・キャシディ「有明は日本にいた頃、よく通っていた場所」
日本のレースで3度(2019年にスーパーフォーミュラ、2017年にスーパーGT GT500、2015年に全日本F3)のチャンピオン経験を持つニック・キャシディ(ジャガーTCSレーシング)。今季のフォーミュラEでは現在ドライバーズランキング首位につけている。
「日本にいた頃、有明にあったジムに通っていたんだ。毎週月曜日から木曜日までそこでレースに向けた準備をしていたし、ランチも有明でよく食べていた。トレーニングコーチも有明にいたから、ここはよく知っている場所だ。そんな場所にチャンピオンシップリーダーとして戻ってくることができて本当に嬉しい」と、東京・有明でのフォーミュラE開催を感慨深く感じている様子のキャシディ。
キャシディもシミュレーターで事前にコースを走ったとのこと。直前にシケインが追加されたが、「幸いにも(シケインが追加された)最新のレイアウトでシミュレーションできたから、そこはラッキーだった」と話す。
「(シミュレーターで走ったコースの印象は)テクニカルだし、ストレート区間もそれなりにあって、良いコースだと思う。たぶん、オーバーテイクポイントはターン10(東京ビッグサイト交差点手前のシケイン)とターン15(公道区間から私有地に切り替わる左コーナー)になるのではないかなと思う」と印象を語った。
■サッシャ・フェネストラズ、鍵になるのは「ターン4のアタックモード」
2022年まで日本でレースをしていたサッシャ・フェネストラズ(ニッサン・フォーミュラEチーム)も東京E-Prixには並々ならぬ想いで臨んでいる。
「僕がお台場を訪れたのは2年前、まだ日本に住んでいた頃だ。その時からここでフォーミュラEをやるかもしれないということを聞いていた。本当に東京でレースができるというのは最高の気分だ。そして、僕たちにとってはホームレースでもある。週末のレースが楽しみだ」
彼も他のドライバーと同様にセクター1が難しいとの分析している様子。「ファーストセクターがものすごく難しい。だけど、セカンドセクターとサードセクターは少しスピード域が上がる気がする。おそらく、すごく面白いレースが見られると思う」とコースの印象を語った。
その中でフェネストラズはアタックゾーン(通過することで一時的に出力が挙げられるエリア)の直後に高速区間が設けられていることに着目。「アタックモードが、すごく低速なターン4に設置されている。その後に長いストレートが待っているから、そこでたくさんのアクションが生まれるだろう」と予想していた。
オーバーテイクポイントについては「ターン10が有力だと思うし、ターン19もチャンスがあるかもしれない。あとはビックブレーキングになるターン1で機会を作れればいいなと思う」とフェネストラズ。数少ないビッグブレーキングポイントに焦点を定めていた。
■ストフェル・バンドーン「このコースをマスターするのはかなりチャレンジング」
2021-2022シーズンのフォーミュラEチャンピオンであるストフェル・バンドーン(DSペンスキー)。彼も2016年にスーパーフォーミュラで戦い、2勝を記録した。
「フォーミュラEが日本にやってきて、東京でストリートレースができるというのは素晴らしいことだと思う。ここで開催を実現するために長い年月がかかっていたから、おそらく携わっているみんなにとって特別な瞬間になるだろうし、僕も素晴らしいイベントになることを願っている」とバンドーン。
フォーミュラEでのレース経験が長い彼だが、他のコースと比べても難しいポイントが多いと語る。
「シミュレーターで走ったけど、すごく興味深いサーキットだと思う。ファーストセクターはすごく狭くて、タイトで、小さいコーナーが密集している。しかも、すごくバンピーな印象だ。全ドライバーにとって、このコースをマスターするのはかなりチャレンジングなことだと思う。実際にまだ走っていないから詳細は分からないけど、(他の国のコースと比べて)すごくバンピーだと思う」とバンドーン。
オーバーテイクポイントについては「ターン1やターン10がチャンスかなと思っている。ターン16も候補ではあるけど、そこは実際に走ってみないと分からない。いずれにしても長いストレートの終わり部分で可能性が出てくると思う。いずれにしても、まだ走っていないからなんとも言えない」と話していた。
バンドーンが語る通り、シェイクダウンやフリー走行1回目を見ると、公道セクションでマシンがかなり跳ねている様子が見られた。特に2コーナーから3コーナーにかけては映像でもマシンが跳ねているのがわかるほどの大きなバンプが見られた。
今回の有明のコース周辺には大きな物流倉庫があり、港が近いことから大型トラックの通行量が多い場所でもある。加えて東京ビッグサイトにもイベント開催のために大型車が機材搬出入で往来するため、その影響でうねりの大きい路面になっているようだ。
また、ピットアウトのラインが1コーナーのアウト側まで続いていることから、フリー走行1回目では1コーナーのブレーキングで止まりきれなかったサム・バード(ネオム・マクラーレン・フォーミュラEチーム)がピットアウトしたフェネストラズに接触して、赤旗になるというシーンも見られた。
まさに、何が起こるかわからない未体験の東京コース、明日の予選では、このコースを最初に誰が攻略しポールポジションを奪うのだろうか。
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