優先順位の1番は公道用モデルとして
G82型BMW M4 CSLのインテリアは要所要所が特別仕様で、素材もスポーツ度合いの高いものが用いられている。しかし、軽量化メニューから想像するほど、カーペットやパネル類などは省かれていない。
【画像】ハードコアでも一般道に妥協なし BMW M4 CSL 競合モデルと歴代のCSLも 全130枚
ダッシュボードの中央には、通常のM4と同じタッチモニターが据えられ、メーターパネルはモニター式。ドライバーが望めば、ヘッドアップ・ディスプレイも装備できる。
ポルシェ911のRSで選べるような、ストラップ状のドアノブや消化器、ロールケージなどはオプションリストにもない。CSLの優先順位の1番は、あくまでも公道用モデルとして。サーキットモデルとしては2番目になる。
実際のところ、オーナーがサーキット走行を楽しむ機会は、多いとはいえない。ハードコアな雰囲気を追い求めるのもカッコイイが、快適性や実用性に支障が出ないとは限らない。BMW M社は、その采配を理解しているのだろう。
M4 CSLを発進させてみると、公道の速度域でもロードノイズやメカニカルノイズが車内へ届く。非常にパワフルで、生々しいフィーリングに満ちている。だが、圧倒されるほど濃厚というわけではない。
3.0Lの直列6気筒ツインターボ・ユニットを支えるエンジンマウントは強化され、8速ATの変速マナーもクイックに調整を受けている。低速域ではアクセルペダルを丁寧に傾け、シフトチェンジのタイミングにも気を配る必要がある。
吸気を圧縮する2基のターボはブースト圧が高められ、タービンノイズが響いてくる。アクスルもリジッドマウントされている。
郊外の道で圧倒的な速さを発揮する
とはいえ、アダプティブダンパーをソフトな状態に保っていれば、乗り心地は不満ないほどしなやか。メインスプリングとヘルパースプリングを備える専用品で、アンチロールバーも新しい。車高は8mm落ちているが、普段乗りもいとわない。
路面変化に対する反応はタイトながら、滑らかさも伝わってくる。アーチェリーのピンと張った弓に乗っているような、そんな印象を受けた。
見た目は前例がないほどアグレッシブ。しかし、アダプティブダンパーを引き締めない限り、乗り心地が落ち着かないということはない。
それでいて姿勢制御にはまったく無駄がない。路面の隆起や舗装の剥がれを通過しても、粗野な振動はドライバーへ伝えず、ミシュラン・パイロットスポーツ・カップ2Rという本気のタイヤは安定。常に路面を掴み続ける。
過去の特別なBMWと比較しても、M4 CSLのサスペンションの動きや減衰力の設定は絶妙。この足まわりだけでも、体験する価値はあると思う。
公道の速度域では、タイヤの温度が充分ならグリップ力はとてつもない。ワダチに進路が乱されることもなく、操縦に対する反応は機敏で、シャシーバランスも素晴らしい。郊外の道で圧倒的な速さを発揮する、サーキット対応モデルといえる。
ブースト上昇が叶える別の味わいと550ps
動力性能だけを見れば、現代のスーパーカー基準には届いていないだろう。しかし、992型911 GT3のように、あらゆるシーンに対応できる能力を獲得している。驚くほど快適に安心して飛ばせる、Mモデルだ。
さらに、パワーの高まりが極めてドラマチック。比類ない加速度や最高速ではなく、最新の高性能な内燃エンジンとして、本当に味わいたいと思える個性が与えられている。
M4 CSLの直列6気筒ツインターボ・エンジンは、M4 コンペティションより40psもパワーアップし、550psを発揮する。25%上昇したブースト圧の成果らしい。確かに、アクセルペダルを蹴飛ばすと、吸気圧の高まりを体感できる。
通常のM4では、不気味なほどリニアにパワーが増していくが、CSLでは2500rpmから明確に勢いが変化する。ペダルを倒してからトルクがみなぎるまでには、1秒前後のラグもある。
この高圧ターボが、3.0L直6エンジンに別の味わいをもたらしている。レスポンスは完璧ではないかもしれないが、より生々しく、心が奪われる魅力がある。その少し近づきにくい性格に、むしろ強く引き込まれてしまう。
その気になれば7000rpmを余裕で超えるほど、吹け上がりは爽快。加えて、チタン製のエグゾーストシステムが素晴らしい排気音も響かせる。
ハードコアな性格ながら公道を楽しめる
今回の試乗は公道のみに限られた。入念に改良を受けたシャシーとブーストアップされたパワートレインが、サーキットでいかに能力を発揮するのか、期待せずにはいられない。
既に素晴らしいサーキットマシンといえたM4 コンペティションから、どこまで充足感が高められているのだろうか。恐らく、脱帽の仕上がりにあるのだろう。
最新のG82型BMW M4 CSLは、その3文字から筆者が最初にイメージした以上に、見事なMモデルのようだ。一層ハードコアな性格のM4でありながら、公道での能力にも妥協は感じられない。
ライバルや過去のCSL以上に、特別な日でなくても、クルマの運転を謳歌することができる。半世紀を迎えたM社の姿が、見事に体現されているようだ。
BMW M4 CSL(英国仕様)のスペック
英国価格:12万8820ポンド(約2125万円)
全長:4793mm
全幅:1920mm
全高:1387mm
最高速度:307km/h
0-100km/h加速:3.7秒
燃費:9.9-10.2km/L
CO2排出量:222-227g/km
乾燥重量:1625kg
パワートレイン:直列6気筒2996ccツイン・ターボチャージャー
使用燃料:ガソリン
最高出力:550ps/56250rpm
最大トルク:66.1kg-m/2750-5950rpm
ギアボックス:8速オートマティック
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みんなのコメント
またデザインが良くなったら戻ってきます。走りはもちろんの事、内装なんかはかなりカッコいいので外装頑張ってください!