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ZF:「自動運転が可能な電動モビリティを2019年に量産化する」

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ZF:「自動運転が可能な電動モビリティを2019年に量産化する」

いつまでも「ZFはトランスミッションの会社」というイメージでいると、このドイツのメガサプライヤーの本質を見誤ることになる。ZFは「次世代モビリティのあらゆるニーズに対応するシステムプロバイダーになる」という目標を掲げており、「自動運転」「電動化」「統合安全」「車両モーションコントロール」の4つ分野に焦点を当てて開発に取り組んでいる。さらに、IoT(モノのインターネット)にも力を入れている。トランスミッションに関する専門知識を有することは「あらゆるニーズに対応するための」強みに違いないが、数多くある事業のひとつにすぎない。TEXT:世良耕太(Sera Kota)

「そんなことに取り組んでいたのか!」と驚きを禁じ得ない事例のひとつが、「自動運転が可能な電動モビリティを2019年に量産化する」と発表したことだ。2018年6月26日のことだ。乗用車ではなく商用車で実現する。

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 e.GO Moverと名付けたモビリティはローカルトランスポーターの形態をとる。全長×全幅×全高は4971×2016×2540mmで、小さなバスが基本形。最高出力150kWのZF製電動ドライブシステムと最大60kWhの容量を持つバッテリーを搭載し、最大10時間の稼動時間を見込んでいる。座席は 10。立ち席は5だ。

 e.GO Moverの運用は都市を想定している。さらには、レベル4の自動運転に対応する。レベル4はドライバーが運転席に座っている必要はあるが、運転に必要な操作はすべてシステムが行なう。万が一、システムの手に負えない状況になったときは、システムの判断で安全に停止する。

 e.GO Moverの事業を推進するのは、ZFの完全子会社であるツーフンクト・ベンチャーズ(Zukunft Ventures GmbH)だ。ツークンフト社が電動モビリティのベンチャー企業であるe.GO Mobile社と提携し、合弁会社のe.GO Mooveを立ち上げ、e.GO Moverの開発に取り組んでいる。2019年から量産化するというから、事業化に向けた動きは非常にスピーディだ。

 ZFアドバンストエンジニアリング責任者兼ツークンフト・ベンチャーズ マネージング・ディレクターのトルステン・ゴレウスキ氏に、e.GO Moverについて聞いた。

──なぜ自動運転、なぜ乗客輸送なのでしょうか。

ゴレウスキ 私たちは都市に注目しています。なぜなら、都市の渋滞はますます激しく、複雑になっているからです。だからそこに、新しい形態のモビリティを導入しようと考えました。そうしたときに、e.GO Mobileが反応し、自動運転という新しいチャレンジに取り組むことにしました。公共交通機関にこそ、自動運転が求められています。乗員の輸送だけでなく貨物の輸送についても、自動運転によるモビリティで検討しています。

──なぜ小型の電動バスなのでしょうか。

ゴレウスキ 都市の多くが、内燃機関を積んだ大きなバスを小さな電動バスに置き換えたがっているからです。小型電動バスにはルートをフレキシブルに選択できるアドバンテージがあります。大きなバスの場合、ルートの選定に制約が生まれますが、小さなバスなら柔軟にルートを選定することができます。

──e.GO Moverの座席は 10、立ち席は5ということですが、他に特徴はありますか?

ゴレウスキ プラットフォームから上を交換することで、貨物輸送用の電気自動車にすることもできます。e.GO Moverはレベル4の自動運転に対応していますが、レベル1(加減速の自動調節を行なう)にも対応可能です。現時点ではすべての国でレベル4での運転が認可されているわけではありません。マーケットの要求が大きいので、そう遠くない将来に認可されることになるでしょう。まずはレベル1で導入し、レベル4が認可された段階で切り替えることも可能です。

──e.GO MoverにはZFのどの技術が生かされているのですか?

ゴレウスキ コアになるのは自動運転の技術ですが、車両モーションコントロールの技術も重要です。ZFは電動ドライブラインを含めすべてのシステムを提供します。車両モーションコントロールに関しては、ブレーキ、ステアリング、ダンパーなどです。自動運転に関してはProAIセントラルコンピュータに加え、ライダーやカメラを搭載します。レベル4に対応したブレーキやステアリングなどは、e.GO Moverで初めて搭載されるプロダクトで、現在開発中です。レベル4に対応したブレーキやステアリングは、競合他社に対する差別化につながると考えています。

──e.GO Moverの発表以来、どのような反応がありましたか?

ゴレウスキ 世界中の多くの都市から問い合わせを受けています。とくに、アジア太平洋地域が強い関心を示しています。残念ながら、マーケットのすべての要求に応えることはできません。2019年に量産を開始し、2020年には量産規模をスケールアップする予定でいます。マーケットの要求に応えるためです。しかしながら、すべての要求に応えることはできません。

──うれしい悲鳴ですね。

ゴレウスキ 70以上の都市から打診を受けています。最初のフェーズでは、そこから20に絞り込む必要があります。2020年から始まるセカンドフェーズでは、50の都市に対応するつもりです。

──なぜ、ZFではなく子会社のツーフンクト・ベンチャーズが新しい事業に取り組むのでしょうか。

ゴレウスキ ZFは大きな会社だからです(筆者注:従業員は約14万6000人、2017年の収益は364億4400万ユーロ)。スタートアップカンパニーの技術を加速させるためにはスピードが重要で、そのために立ち上げたのが、小回りの利くツーフンクト・ベンチャーズというわけです。ZFの事業戦略をサポートする役割を担います。

──ありがとうございました。


 新しい事業を立ち上げるにはスピードが命である。ベンチャー企業同士の提携だからこそ、意思決定が早く、2019年からの量産化が可能になった。その際、メガサプライヤーであるZFが持つ技術をフルに活用できるのが大きい。「車両モーションコントロールの技術をすべて持っている会社は他にありません」とゴレウスキ氏は力を込めて言った。

 70以上の都市から問い合わせを受けている事実が、e.GO Moverに対する関心の高さを物語っている。「ZFはトランスミッションの会社」という考えは古いことを冒頭で記した。「大きな会社は小回りが利かない」という固定観念も改めたほうがよさそうだ。


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