北海道留萌市在住の写真家・佐藤圭さんが撮った貴重な動物、風景写真をお届けする週末連載。
第28回は、北海道石狩平野の北端に位置する沼田町の絶景を紹介します。
沼田町には、この季節、電気をいっさい使わない幻想的なイルミネーションが出現します。
写真・文/佐藤圭
【画像ギャラリー】満天の星空の下、無数のホタルが光の尾を引いて乱舞!
北海道でゲンジボタルが飛ぶのはここだけ
北海道沼田町は、ホタルで町おこしを進めてきた町として知られています。町のカントリーサインもホタルです。
沼田町ほろしん地区にある「ほたるの里」では、毎年、7月上旬から8月上旬にかけてたくさんのホタルが飛び交い、7月下旬にピークを迎えます。この時期、この沼田町には多くの観光客が訪れています。
「ほたるの里」内、まさに乱舞するホタルたち
沼田町のホタルの最大の特徴は、北海道には本来生息していないゲンジボタルも見られるところです。元々、北海道には発光するホタルはヘイケボタルしか棲んでいませんでした。
沼田町は、1988年から、本来本州以南にしか生息していないゲンジボタルを移入、飼育し、観賞用に公園に放しています。交流のあった岐阜県可児市の団体から幼虫約20匹を譲り受けたのが始まりだそうです。
ホタルの寿命は約2週間。繁殖のパートナーを求めて懸命に光り続ける
ゲンジボタルとヘイケボタルの違いは光の大きさです。
ゲンジボタルは、ヘイケボタルよりも強く長く光るので見ごたえがあります。ヘイケボタルの光り方は小さいですが、可憐に光るので日本の風景に合います。
「ほたるの里」周辺には、多い年には2000頭を超えるホタルが飛び交い、晴天の日には、満天の星空と相まって幻想的な絶景が見られます。
「ほたる鑑賞ドーム」の上に横たわる天の川
北極星を中心に回転する満天の星空と乱舞するホタルたち
現在は放流をやめていますが、野生化した個体が命を繋ぎ、観光客を楽しませてくれています。ホタルを守る団体もあり、生息数の調査、エサの調査も行われています。
ホタルは、農薬などで水が汚れてしまうと、すぐに絶滅してしまいます。ホタルを保護するために水質がきれいに保たれ、健やかな自然が育まれているのだと思います。
清流の上を飛び交うホタルたち
沼田町の魅力はホタルだけではありません。公園に隣接して、大型のキャンプ場や、宿泊もできる入浴施設「ほろしん温泉 ほたる館」もあります。
露天風呂、サウナ、冷鉱泉の水風呂も完備されていて、やさしい泉質で肌がすべすべになります。温泉に入ってからのホタル鑑賞もオススメです。
また、この地域は、古代のカイリュウの化石が発掘されていることでも有名です。「ほたるの里」のすぐそばにある「沼田町化石体験館」では化石発掘体験などのイベントもあります。
8月の第4金曜、土曜日には、沼田町中心部で「夜高(ようたか)あんどん祭り」が開催されます。北海道では唯一の「喧嘩あんどん」で、大型のあんどん同士のぶつけ合いはものすごい迫力です。今年はオンライン開催となってしまいましたが、コロナ禍が収まったら、ぜひともおススメしたいイベントです。
ほろしん地区は、開拓時代(大正12〈1923〉年)に、ヒグマによる日本史上2番目に大きな獣害被害があった所です。今でも毎年のようにヒグマの目撃情報はあります。昨年はホタル鑑賞ができる公園にヒグマが出て、数日間、立ち入り禁止になりました。
警報が出ていない限り、公園内は監視員が見回りしているので大丈夫だとは思いますが、ドライブの途中でヒグマを見かけても、決して近づいたりしないでくださいね。
佐藤 圭 kei satou
1979年、北海道留萌市生まれ。動物写真家。SLASH写真事務所代表。MILLETアドバイザー。
日本一の夕陽と称される留萌市黄金岬の夕陽を撮影するために写真家の道に入る。北海道道北の自然風景と野生動物を中心に撮影を続け、各地で写真展を開催し、企業や雑誌、新聞などに写真を提供している。
2018年、エゾナキウサギの写真「貯食に大忙し」で第35回『日本の自然』写真コンテスト(主催:朝日新聞社、全日本写真連盟、森林文化協会)で最優秀賞受賞。
ウェブサイト:https://www.keisato-wildlife.com/
Facebook:https://facebook.com/kei.sato.1612
インスタグラム:https://www.instagram.com/slashslash_photography/
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