アコーディスASPチームのボスであるジェローム・ポリカンが、来月フランスで開催される『ロード・トゥ・ル・マン』において二輪界の“レジェンド”バレンティーノ・ロッシとチームを組み、ライバルチームであるチームWRTのマシンをドライブすることが明らかにされた。
ポリカンとロッシは、今年100周年を迎える『ル・マン24時間レース』のサポートレースとして行われるミシュラン・ル・マン・カップのレースで、ゼッケン“46”を掲げるベルギーチームのBMW M4 GT3をシェアすることになる。
BMW勢が予選1-2-3-4。開幕戦決勝では“5年ぶり”の優勝をワン・ツーで達成/GTWCヨーロッパ
ポリカンのチームであるオートスポーツ・プロモーション(ASP)は、SROモータースポーツ・グループが運営するファナテック・GTワールドチャレンジ・ヨーロッパ(GTWCヨーロッパ)やIGTCインターコンチネンタルGTチャレンジの強豪チームとして知られる、メルセデスAMG陣営を代表する組織だ。昨シーズンはGTWCヨーロッパのエンデュランスカップのタイトルを獲得したほか、スパ24時間で総合優勝を飾った。
対するチームWRTは、アウディ陣営の代表として長くGT3カテゴリーの舞台で活躍。BMWにメーカーをスイッチする前の最後のシーズンとなった2022年には、GTWCヨーロッパ・スプリントカップのドライバー選手権3連覇を果たすなど、つねにASPのライバルとして強さを発揮してきた。
■禁断のタッグはWRT代表からのオファーで実現
ミシュラン・ル・マン・カップのレギュレーションでは、各GT3ラインアップに1名以上のブロンズドライバーを加えることが義務付けられている。ポリカンは元プロフェッショナルドライバーであるが、彼はこの条件をクリアしている。
58歳のポリカンはWRTのボスであるヴァンサン・ボッセから届いたオファーに当初は冗談だと思ったという。
「ヴァンサンから3日前に電話があった。彼は私にバレンティーノ(・ロッシ)と一緒にロード・トゥ・ル・マンを走ることができるかどうか聞いてきたんだ」とポリカンはSportscar365に語った。
「私が『冗談だろう?』と返すと、彼は『ノー』と答えた。なんて答えたらいいのだろう? AMGに問い合わせると、彼らは『イエス』と答えた。(このプログラムが)私のためだけのものであり、私がASPチームのプログラムに関与していないことを考慮してくれたのだろう」
「ヴァンサンと私は20年来の親しい親友だ。毎週のように一緒に戦っていても、お互いに尊敬の念を抱いている。彼が私のことを考えてくれたことに、とても感謝しているよ」
■ル・マンで3度表彰台を獲得
前述のとおり、ポリカンはチームのオーナーシップとマネジメントに入る以前はドライバーとして活躍しており、ル・マン24時間には13回の出場。リュック・アルファン・アドベンチャーズのコルベットC6.Rを駆りGT1クラス2位となった2010年を含め計3回表彰台を獲得している。
58歳の彼は現在も組織のリーダーとしての役割と並行して散発的にレースに参加し続け、最近ではムジェロ12時間レースでアコーディスASPのメルセデスAMG GT3エボをドライブした。
アコーディスASPとチームWRTは、GTWCヨーロッパをはじめとする夏のレースプログラムを忙しく作業をこなしているため、ポリカンがBMW M4 GT3をテストする機会は限られている。
彼がBMWで最後に走ったのは、2009年のフランスGTシーズン最終戦と2010年のFIA GT3ヨーロッパ選手権の1戦で、当時はアルピナ製のB6 GT3をドライブした。
「唯一可能性があるのは、(スパ24時間の)公式テストだけだ」とポリカン。
「だが、ヴァンサンには『この日は彼らにとって非常に重要な日だ』と言ってある。すべてを理解するために4、5周走ることができれば……しかし、完全に保証されているわけではない」
「我々は、ほぼ毎週末レースをしているから、それが唯一の可能性だ。BMWとメルセデスの間に昼と夜があるわけではないと思う」
「(M4 GT3が)素晴らしいクルマであることは間違いないし、(WRTが)素晴らしいチームであることも確かだ。僕は古いタイプのドライバーだから、2周してフィーリングが分かればOKなんだ」
■今年のロッシは速い
ポリカンは、ル・マン復帰の機会を親友からの“ギフト”として楽しむと同時に、20台のGT3カテゴリーでロッシと強力なペアを形成する可能性を示唆した。
「彼の今年のペースは驚くべきものだ」と彼は述べた。
「バサースト(IGTC開幕戦)ではBMWの中でもっとも速い1台だったし、(GTWCヨーロッパ開幕戦の)モンツァでは第1スティントでトップ集団と一緒に走ることができていた。いまや彼はそのレベルにある」
「もし僕が大丈夫なら、間違いなくクルマは前方を走っているだろう。でも、ストレスはない。ベストを尽くすつもりだ」
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