2021年7月20日、デビューから7年以上経つ今も高い人気を保つポルシェのSUV「マカン」が2度目のマイナーチェンジを受けた。その内容はどういうものなのか、ベースモデルのマカンとトップモデルのマカンGTS、キャラクターの異なる2台の新型マカンを試乗して進化を検証した。(Motor Magazine 2022年4月号より)
新型マカン最大の見どころは改良された2つのエンジン
ポルシェのミッドサイズSUV「マカン」が2度目のマイナーチェンジを受けた。マカンが市場に導入されたのは2014年のこと。そして最初の大規模な改良は2018年、2度目となる今回は2021年に行われている。モデルライフ中に2度のマイナーチェンジが実施されるのは極めて異例。ちなみに、新型は「マカン III」の愛称で呼ばれる。
「SHUN SUDO」によるポルシェ タイカンアートカー、展示イベント開催。ボタンフラワーに彩られたデザインに
もっとも、デビューから7年以上が経過してもマカンのセールスは好調で、2021年も全世界で8万8362台が販売された。ポルシェ全体の販売台数はおよそ30万台だから、おおまかにいえば「ポルシェの3台に1台がマカン」という計算になる。
また、これまでにマカンは通算60万台ほど、年平均で約7万5000台が販売されてきたが、発売8年目にこれを上回るセールスを達成した事実は、マカンの人気がモンスター並みに根強いことを示している。
さて、再々デビューを果たした新型マカンは、ベーシックモデルのマカンを始めとして、マカンS、マカンGTSの3グレードが現時点で用意されている。今回のマイナーチェンジの最大の見どころはエンジンの改良で、たとえば4気筒ターボを積むマカンの最高出力は245psから265psへと大幅アップ。最大トルクも370Nmから400Nmへと向上している。
ポルシェ自身はこの4気筒のことを「新開発」と称しているが、少なくともボア×ストロークや圧縮比は先代と同じ。それでも、燃料噴射圧を高めて燃焼を改善したほか、大型ターボチャージャーの装着でパフォーマンスの向上を図るなど、大幅なテコ入れが実施されている。
いっぽう、マカンSに搭載されるV6エンジンは完全な別ユニットに置き換えられた。端的にいえば、アウディ主導で開発された従来の3L V6シングルターボからポルシェ純正の2.9L V6ツインターボにスイッチしたのだ。この結果、最高出力と最大トルクはマカンSが380ps(+26ps)/520Nm(+40Nm)、マカンGTSもパワーアップされて440ps(+60ps) /550Nm(+30Nm)を発生。
※()内は旧型比。
ちなみに、これらの改良により排出ガス規制は最新のユーロ6d-ISC-FCMに適合することになった(従来はユーロ6d-TEMP)。
先代はフロントサスペンションのスプリングフォークがスチール製からアルミ製に置き換えられたが、新型マカンの足まわりにこれと匹敵する大規模な変更は見当たらない。いっぽうで、前後のスプリングレートが引き上げられた(フロント10%、リア15%)ほか、スタビライザーを強化。さらに新開発ダンパーの採用によってピッチングやローリング、そしてリバウンドにおけるボディの動きを従来よりも抑え込んだという。このほか、電動パワーステアリングの設定も見直されているようだ。
外観では、フロントのエアインテーク部分全体がベルト状に黒塗りとされたほか、リアバンパーの下半分を同じく黒にペイントすることでリアディフューザーのような印象を与え、精悍さを強めている。個人的な趣味も交えて申し上げれば、先代のほうが控えめで洗練されており、新型のほうがより個性的でダイナミックといえる。
いっぽうのインテリアは、センターコンソール上の物理スイッチをタッチスイッチに置き換えることで、現代的でスッキリとしたデザインに生まれ変わっている。
軽やかでコーナリングが楽しい4気筒エンジン搭載のマカン
今回は新しいマカンとマカンGTSの2台に試乗した。普通に考えれば、マカンGTSのほうがすべての面で上質かつパフォーマンスが高いという結論に落ち着きそうだが、実際には、2台の位置づけは単純な上下関係ではなく、場合によってはマカンがマカンGTSを凌いでいるケースもあったので、順に紹介していこう。
先にハンドルを握ったのは4気筒エンジン搭載のマカン。記憶にうっすら残っている先代に比べると、サスペンションの動き出しがスムーズになり、よりしなやかで快適な乗り心地に感じられた。そのいっぽうで、素早い周期の振動がそのままバネ上に伝えられたり、大きなバンプを強行突破するとボディの上下動が1回では収まらず、1周期半の揺れでようやく収まる傾向も認められた。もっとも、これらも重大な弱点とはいえず、乗り心地の洗練度でいえばマカンが引き続きクラストップに立っているように思う。
ステアリングが正確でインフォメーションが豊富なことはポルシェの定石どおり。しかも、4気筒エンジンを積んだノーズが、操舵にあわせて右へ左へと小気味よく向きを変える軽快さを味わえる。それも、フワフワとして落ち着きのない挙動ではなく、前後のタイヤがしっかりと路面を捉えている感覚が強い。この軽快感と安定感のバランスはSUVでは得がたいもの。いや、より重心が低いセダンでさえ、マカンと同じレベルのモデルは決して多くないといってもいいだろう。
エンジンのキャラクターも、こうした軽快なハンドリングにぴったりとマッチしている。その特性は、トップエンドでパワーが炸裂するというよりも、2000~4000rpmの中回転域でトルクがレスポンスよく溢れ出てくる印象。おかげでクルマがグンと軽くなったように感じられるのだ。
つまり、ハンドリングもパワートレーンも、マカンをより軽快に走らせるのに役立つ性格に仕上げられていたのである。結果としてドライバーはより自信を持って、そのハンドルを握っていられる。だから、安心して積極的にコーナリングを試せるのはもちろんのこと、たとえそこまでではなくても、いつでも意のままにコントロールできる満足感をマカンは味わわせてくれるのだ。
滑らかな6気筒エンジンと重厚な走りが魅力のGTS
いっぽうのマカンGTSは、V6エンジンが生み出す滑らかなフィーリングがこのうえなく心地いいこのため、ひとたびマカンGTSに触れると、ベースグレードのマカンに乗り換えたとき、それまでほとんど感じなかった4気筒エンジンのかすかなバイブレーションを意識させられるようになって、軽い失望を覚えるほど。
しかもマカンGTSのV6エンジンはただひたすらスムーズというよりは、精緻なメカニズムが滑らかに回転する感触を積極的に伝えるタイプで、その鼓動に耳を澄ましているだけでうっとりしてしまう。この上質な回転フィーリングは、やはり6気筒エンジンならではのものといえる。
しかも、このエンジンが生み出すパフォーマンスがすさまじい。その出力特性は、ボトムエンドではやや穏やかに感じられるものの、回転を上げるに連れてパワーがリニアに上昇。レッドゾーンが始まる6800rpmに向けて出力が一直線に立ち上がっていくというもの。おかげで、まるでスポーツカーに積まれている高回転型ユニットを彷彿とさせるドラマ性を堪能できるのだ。
もっとも、いくら低回転域のパフォーマンスが相対的に低く感じられるとはいえ、550Nmの最大トルクは1900rpmの低回転から発揮されるため、コーナリングの途中で深いバンプに出くわすと瞬間的にトラクションコントロールが作動することもしばしば。
ちなみに、同じバンプをマカンで通過してもトラクションコントロールは一切作動しなかったので、パフォーマンスの差は歴然としている。つまり、ドライバーはV6の滑らかな感触にだまされているだけで、実際にはとてつもないトルクを発揮しているのだ。
この大トルクを生かしてさらにコーナリングを味わうと、滑りやすい路面では後から押される感触が徐々に強まっていき、最終的にはハンドルを少し戻したくなるくらいニュートラルステアの傾向を示すようになる。この感覚もまた、ベーシックなマカンでは味わえなかったものである。
ただし、さすがにノーズにV6ユニットを積んでいるせいか、はたまたパワーステアリングの設定がマカンよりも重めになっているためか、マカンGTSの身のこなしはマカンほど軽快には感じられなかった。よくいえば、どっしりと安定しているとなるし、反対に悪くいえばやや鈍重ということになるだろう。ただし、エアサスペンションを標準装備するマカンGTSは、路面からのショックは余すところなく吸収してくれるのに、ダンピングはむしろマカンよりも強力。このため前述したバンプでは、マカンと違って上下動を1周期で抑え込む強靱さを示してくれた。
4気筒と6気筒それぞれに最適なキャラクターを実現
ここで改めてマカンGTSからマカンに乗り換えると、まるでライトウエイトスポーツカーのようにヒラヒラとコーナーをクリアする感覚を楽しめる。そしてその機敏な反応から「多少滑ってもなんとかコントロールできる」というある種の余裕のようなものさえ感じられる。したがって、動力性能ではマカンGTSにかなわなくとも、スポーツ性ではマカンのほうが上のように私には思えた。
いっぽうのマカンGTSは、ライトウエイトスポーツカーというよりも重厚な走りでロングクルージングも楽々とこなすグランドツアラーといったおもむき。余裕あるエンジンパワー、静粛性の高さ、そしてマカンGTSに標準装備となるエアサスペンションの快適な乗り心地は、いずれもグランドツアラーに必須の条件で、マカンGTSはそれらすべてを兼ね備えている。
また、たとえロングクルージングにでかけなくとも、マカンGTSのゴージャスな味わいは都市部でも十分に満喫できるはず。つまり、サイズを超えたラグジュアリーSUVとしても、マカンGTSは活躍してくれるのだ。
4気筒モデルは廉価版で6気筒モデルは上級、上質なグレードと位置づけるのは簡単かもしれない。けれども、ポルシェはそうした安易な手法を選ぶことなく、4気筒と6気筒のそれぞれに最適なキャラクターを生み出し、それを見事に現実の形として仕上げた。この辺の鮮やかな手腕は、さすがポルシェと唸らざるを得ない。
そのうえで、シャシ、パワートレーン、そして内外装に至るまで、ていねいにブラッシュアップして製品が持つバリューをさらに改善してみせた。「あらゆる面で世界最高峰のミッドサイズSUV」との称号は、新型マカンにもそのまま引き継がれたといっていいだろう。(文:大谷達也/写真:井上雅行)
ポルシェ マカン 主要諸元
●全長×全幅×全高:4726×1922×1621mm
●ホイールベース:2807mm
●車両重量:1845kg
●エンジン:直4 DOHCターボ
●総排気量:1984cc
●最高出力:195kW(265ps)/5000-6500rpm
●最大トルク:400Nm/1800-4500rpm
●トランスミッション:7速DCT(PDK)
●駆動方式:4WD
●燃料・タンク容量:プレミアム・65L
●総合燃費:9.3km/L
●タイヤサイズ:前235/55R19、後255/50R19
●車両価格(税込):754万円
ポルシェ マカンGTS 主要諸元
●全長×全幅×全高:4726×1927×1596m
●ホイールベース:2807mm
●車両重量:1960kg
●エンジン:V6 DOHCツインターボ
●総排気量:2894cc
●最高出力:324kW(440ps)/5700-6600rpm
●最大トルク:550Nm/1900-5600rpm
●トランスミッション:7速DCT(PDK)
●駆動方式:4WD
●燃料・タンク容量:プレミアム・75L
●総合燃費:8.5km/L
●タイヤサイズ:前265/40R21、後295/35R21
●車両価格(税込):1188万円
[ アルバム : 新型ポルシェ マカンとマカンGTSの熟成に迫る はオリジナルサイトでご覧ください ]
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