■VWグループで再び復活したブガッティが手掛けた「ヴェイロン」
1990年代半ばに、巨大なVWグループを率いるフェルディナンド・ピエヒ最高経営責任者が、ブガッティという世界でもっともバリューのあるブランドを手にしようと考えた時、それにはいくつかの野心があったという。
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その象徴的なものは、ブガッティ・ブランドのハイパーカーが、1000ps以上の最高出力をスペック・シートに謳い、同時に400km/h以上の最高速によって、世界の頂点を極めるというものだった。
●2014 ブガッティ「ヴェイロン16.4 グランスポーツ・ヴィテッセ・メオ・コスタンティーニ」
そのために当初必要とされたエンジンは、3列式のW型18気筒だった。しかしながらそれを量産車のパワーユニットとすることは難しく、結局1001psを発揮する、8リッターW型16気筒+4ターボを選択することが決断された。これに7速のDCTを組み合わせ、全輪を駆動する。
ファースト・プロダクトは「ヴェイロン16.4」。プロトタイプは比較的早く発表されたものの、そこから2005年の東京モーターショーで、生産型が300台の限定生産数とともに発表されるまでには相当な時間が必要だった。
ヴェイロンの人気は高く、次々に特別仕様車が誕生したほか、2009年にはペブルビーチでタルガトップ仕様の「グランスポーツ」も発表された。こちらは150台の限定生産とされたから、最終的にカスタマーにデリバリーされたヴェイロン16.4は合計で450台という計算になる。
それらの生産途中で、ヴェイロンの人気をさらに高める大きな理由となったのは、高性能版となるスーパースポーツの誕生だった。まず登場したクーペ仕様のモデルには、ダイレクトに「スーパースポーツ」のサブネームが与えられ、搭載されるW型16気筒エンジンの最高出力はさらに199psをプラスして1200psに。
VWが所有するエーラ・レシエン・オーバルテストコースでおこなわれた最高速テストでは、開発ドライバーのピエール・アンリ・ラファネルによって平均で431・072km/hを記録した。
これはもちろん当時の世界記録にほかならない。
2011年には、ここで紹介する「グランスポーツ・ヴィテッセ」が発表される。これはクーペのスーパースポーツのオープン版ともいえるものだが、同時にさまざまな限定車を生み出したことでもファンには有名な存在だ。
このモデルはかつてブガッティ・チームの監督だった「メオ・コスタンティーニ」の名を掲げるモデルで、3台のみが生産されたもの。同シリーズにはほかに、「ジャン・ピエール・ウィミール」や「ジャン・ブガッティ」、「レブラント・ブガッティ」、「ブラック・ベス」、そして「エットーレ・ブガッティ」がある。
注目の落札価格は175万ドル(邦貨換算約1億8500万円)。まずは納得できる結果といえるのではないか。
■新車価格「ヴィエロン」の2倍という「シロン」の落札の行方は?
2016年登場した「シロン」は、ヴェイロン16.4の後継車となるモデルだ。ヴェイロンが、ピエール・ヴェイロンという戦前のブガッティを支えた優秀なエンジニアの名前に因む車名を得たように、シロンもまたレーシング・ドライバーのルイ・シロンの名を現代に復活させたネーミングを持つ。
●2018 ブガッティ「シロン」
リアミッドに搭載する8リッターW型16気筒+4ターボエンジンなど、基本的なスペックはヴェイロンのそれとは変わらないが、最高出力は一気に1500psとなり、最大トルクも1600Nmを炸裂させることが可能になった。
そして発表時になによりゲストを驚かせたのはその価格であった。実にヴェイロンの倍となる240万ユーロであったのだ。
シロンのデザインは、ヴェイロンのそれ以上に過去のブガッティ車、例えば「タイプ57アトランティーク」などからモチーフを得た部分が見てとれる。
ボディ中央を貫くラインはエアロダイナミクスの向上にも大きく貢献し、ドア回りのCラインは、シロンの大きな個性とされる。
シロンにもその後、よりコーナリング性能を高めた「シロン・スポーツ」などの派生モデルが登場しているが、今回ボナムス1793の「クエイル・モーターカー・オークション」に登場したのは、2018年に生産されたスタンダードなシロンであった。
とはいえオプションの価格は40万ドル(邦貨換算約4200万円)に達することと、この個体が唯一のアメリカ仕様のグリーンカーボン仕様であることなどから、落札価格の高騰は十分に予想できた。
ボナムス1793による予想落札価格は、250万-280万ドル(邦貨換算約2億6000万-3億円)。
残念ながらオークションでの売買はまだ成立していないようだが、これからの動きをぜひチェックし続けて見たい1台である。
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成人し、初めて実車を目の当たりにし、フェラーリやランボルギーニとは全く違う次元のオーラを感じた。