MICHELIN MXV3-A
ミシュラン MXV3-A
【TOPIC】ヴァルター・ロール、「ポルシェ タイカン」に感銘。
21世紀に蘇った“ヤングタイマー”の相棒
かつて1980年代に“魔法のタイヤ”と呼ばれた名作がある。その名はミシュラン「MXV3-A」。そしてこのタイヤが現代に復刻されることとなった。
いま世の中はスポーツカーや大型バイク、機械式クロノグラフといった嗜好品において、かつての栄光を復活させることが一大ブームになっている。しかし、常に技術革新が求められるタイヤというジャンルで、当時の名作とはいえ旧い設計のタイヤをリバイバルすることにどのような意味があるのか?
今回はこのプロジェクトを担当した鈴木義子さんから、そのいきさつを直接お伺いすることができたので報告しよう。
日本ミシュランタイヤ
モータースポーツ クラシックタイヤ担当 鈴木義子さん
「そもそもこれまでもミシュランタイヤでは、クラシックカー用のタイヤを継続販売してきました。この場合のクラシックカーの定義とは、30年以上の年数を経過したクルマであることです。そしてここ数年は、これよりも年代が新しいクルマたちが『ヤングタイマー』と呼ばれ、ヨーロッパを中心に見直されるようになってきました。MXV3-Aは、まさにこのヤングタイマーたちが現役当時履いていたタイヤだったのです」
ヤングタイマーの分類は、おおよそ1980年代後半から1990年代初頭に誕生したクルマたちを指すようだ。そしてこのクルマたちが今なお多くのユーザーに愛され続け、タイヤとしても需要が大きくなったというわけである。
ちなみにこの考え方でいくと、筆者が日常の友として使っている1995年式ポルシェ911カレラ(Type993)はドンピシャのヤングタイマーということになるのだが、ミシュランは今なおこのスポーツカーのためにポルシェと共同開発を継続し、認定タイヤとして「パイロットスポーツ2」を販売し続けてくれている。
911はリヤエンジン・リヤドライブという希有なレイアウトを持ちながら、現存率が非常に高いスポーツカー。だからこそこうした時代に逆らうひと手間が許されるのだろうが、同様にヤングタイマーオーナーたちに向けてミシュランはMXV3-Aを復活させたということになる。
旧車にバランスの良い生産当時のタイヤプロファイル
ではなぜ、ヤングタイマーのオーナーたちが、こうしたタイヤを求めるのか? そこにはまずサイズの問題が切実にある。
ご存じの通り現代のタイヤは、現代のクルマたちのために作られている。電動化を含むパワーユニットの高出力・高効率化。居住空間の拡大やボディ剛性の向上。こうした様々な理由によってタイヤは、30年前に比べ著しく大径化し幅広化したのだ。
また、たとえサイズが適合したとしても、そのグリップ性能や剛性までマッチングを取るのは難しい。旧いとはいえ、かつての高性能車に現行小型車のタイヤを履かせるのはオーナーにしてみればナンセンスであり、銘柄的なドレスダウンは望ましくない。そして当時のクルマには、やはり当時のタイヤプロファイル(タイヤの形)の方が動的にバランスするのである。
「私たちがMXV3-Aを復活させた背景には、モビリティへの貢献という目的もあります。モビリティの発展というと、ローエミッションで利便性の高いEVや先進安全技術(ADAS)を軸にした自動運転の発達ばかりが話題にされがちです。しかし旧いクルマたちを保存することも同じモビリティの発展だと考えているのです」
こうして誕生したMXV3-Aだが、その製造工程は全て現代の基準で品質管理されるのが興味深い。むしろゴムや構造部材は現代の安全基準に合わせる必要があり、当時の素材を用いて作ることは不可能なのだ。そしてモールド(タイヤを作るための型)は、このタイヤを復刻するためにわざわざ作り直されたのだという。
プレミアム・スポーツタイヤの先駆け“MXV3-A”
当時を知らない読者のために説明すると、MXV3-Aはプレミアム・スポーツの先駆けといえるキャラクターのタイヤだった。現代のミシュランタイヤで置き換えるとそれは、「パイロットスポーツ」よりも「プライマシー」寄りの性格。ドライグリップだけでなくウェット性能にも重きを置いたバランスの良さ。
乗り心地や静粛性も大切にする「トータルパフォーマンス」に優れたなタイヤだったが、そもそもの基礎体力の高さから当時の日本ではこれが高性能なタイヤとして認知されていた。またリプレイスタイヤとしても多くのユーザーから支持を受け、前述した“魔法のタイヤ”という称号を得たのだという。
果たして、そのMXV3-Aが現代ではどのような性能を発揮するのか?
これは推測でしかないが、コンパウンドは現代の性能を駆使しつつ、ヤングタイマーたちのボディ剛性にグリップレベルが合わせられているはず。構造も、然りだ。
当時のトレッドパターンを踏襲する排水性は、若干の最適化を見えないところで行ってはいるだろうが、理論的に言えば当時レベルだろう。しかし、現代コンパウンドの路面密着性とタイヤ剛性の最適化によって、ウェット性能は当時より安全方向へと引き上げられているはずである。トレッドパターンだけは現代水準にしてもよいのではないか?と思わなくもないが、タイヤの顔として考えれば商品性につながる大事な要素なのだろう。
そして、もっとも興味深いドライグリップ性能は、そのハンドリングレスポンスがヤングタイマーたちの呼吸と絶妙に合わせられ、乗り心地と共にジャストな快適性を実現しているのではないか? と想像する。
この推測はあながち外れていないだろうと思う。なぜならそれは、筆者が日常パイロットスポーツ2で感じ取っているフィーリングだからである。もしかしたらトレッドパターンに起因するノイズだけは現代水準にないかもしれないが。
ヤングタイマーが本来の走りを再現するためのタイヤを
鈴木さんがMXV3-Aを企画した背景には、ご自身がプジョー306カブリオレに一目惚れして、これを手に入れた経験が生きているのだという。
購入当時履かされていたパイロットスポーツ3を、まずはよりベーシックなエナジーセイバー・プラスに履き替えた。そこからオーナーたちの気持ちを知るためにフレンチブルーミーティングなど様々なイベントへと赴き、彼らの声をヒアリングした。そして何より自分とプジョー306カブリオレとの距離感を縮めるために、見た目にも性能的にももっと愛車にマッチングするタイヤが欲しい!と考えたのだ。
「今はまだそのサイズも195/60R14 86V TLと195/65R14 89V TLの2サイズですが、これからは国産車にも対応して、そのラインナップを徐々に増やしていきたいと考えています」。そう語るときの笑顔は、正しくヤングタイマーを愛するオーナーの表情だった。
往時のヤングタイマーを安全に楽しむタイムマシーン
もし、現代水準の性能が欲しいのであれば現代タイヤを選ぶべきだ。しかしあなたの愛車が現役だった当時の走りを味わいたいのであれば、MXV3-Aはタイムマシーンとなってこれを再現してくれるかもしれない。しかも当時よりも安全に。
当時のトレッドパターンと丸みを帯びたサイドウォール形状。そして当時の大きなタイヤレターフォントを有し、ファッション的に違和感なくコーディネイトできることの嬉しさ。そんなエンスージアズムをわかっているドライバーに、このタイヤを選んで欲しいと思う。
REPORT/山田弘樹(Kouki YAMADA)
PHOTO/服部真哉(Shinya HATTORI)
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