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ポルシェの自宅で楽しめる趣味講座 第2回「自動車のデザインスケッチを描いてみよう」

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ポルシェの自宅で楽しめる趣味講座 第2回「自動車のデザインスケッチを描いてみよう」

スタイル・ポルシェのトップがデザインスケッチを指南

ポルシェ・ニュースルームは、新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大を阻止するために自宅待機を続ける読者に向けて、趣味講座「#GetCreativeWithPorsche」を立ち上げた。この講座には毎回プロの講師が登場し、ロックダウン中でも自宅で自動車に関するクリエイティブなスキルを身につけられるようになっている。

ポルシェの自宅で楽しめる趣味講座 第2回「自動車のデザインスケッチを描いてみよう」

第2回目は、スタイル・ポルシェのトップを務めるミヒャエル・マウアーが登場。「ポルシェ911のデザインスケッチ」について講義を行う。

手元のノートに描き続けられたスケッチの数々

マウアーの手元には常に1冊のノートが置かれている。ミーティングにおいても、彼はいつもちょっとしたイラストをノートに書き続けているのだ。

「朝食の時ですらクルマのイラストをスケッチしているので、いつも妻をイライラさせていますよ(笑)。これは自分でもどうにもならないのです」と、マウアーは苦笑いする。

2004年からポルシェのデザインを手がけるマウアーは、文字通り“スケッチに息を吹き込んでいる”人物だ。このロックダウン中も、彼のノートにはこれまでにない数の様々なスケッチが描き込まれている。彼がポルシェのアイコンである「911」のデザインスケッチの描き方をレクチャーしている時も、鉛筆は紙の上をまるで生きているように、軽々と滑り続けていた。

「デザイナーはスケッチを描くことで、多くの問題を解決できるのです。開発中にはクレイモデルやVRモデルをたびたび評価します。すると、どこか違和感があることに気づくことがあります。例えばルーフラインが低すぎたり、何か技術的な課題が浮上している場合もある。この事態になった時、私たちはとにかく鉛筆を取り出して機能していない要素の周辺をスケッチします。スケッチすることで、問題解決を図ろうとするのです」

“ハッピー・アクシデント”から生まれたタイカン

「以前、ダグ・チェン(スターウォーズのデザイナー)と仕事をしたとき、彼はチームに対して、私が大好きな言葉“ハッピー・アクシデント”について話していました。それこそ、デザイナーは数千にも及ぶスケッチを描き続けています。自分の右手が何を描いていたのか時に驚くときがあります。それこそが“ハッピー・アクシデント”です」

タイカンはチェンが掲げた“ハッピー・アクシデント”の究極例だ。ポルシェ初のフルEVスポーツカーのデザインは、マウアーが918に関するあるテクニカルスケッチを勘違いしたことから生まれているのである。

「ある日、私はスタジオを歩いていて、若いデザイナーのデスクの前を通りました。当時私たちは918の作業を終えたばかりで、そこには彼が描いたちょっとしたデザインスケッチがあったのです。『こりゃすごい! これは918の4ドアバージョンだね。2シーター以外のスーパースポーツなんて考えたこともなかったよ』と、私は彼に言いました」

「私は『次世代スーパースポーツの姿が目の前にあるじゃないか』と大興奮で話しましたが、若いデザイナーは不思議そうに『クレイモデラーのために表面処理を分かりやすく描いたもの』だと説明してくれました(笑)。でも、私にとってはそれがリヤドアのラインに見えたのです」

「そのときは分かっていませんでしたが、この瞬間がタイカン開発のスタート地点になりました。あのデザインの存在をポルシェ初のフルEVスポーツについて話し合っている時に思い出し、スーパースポーツのプロポーションと4シーターのプロポーションを備えたクルマのアイデアに発展させました。これこそが“ハッピー・アクシデント”、幸運な事故です。タイカンを見ると私はあの瞬間を思い出すのです」

マウアーの“秘訣”をポルシェ・ファンにプレゼント

今回、マウアーは自宅でも楽しめる自動車のスケッチについて、様々なテクニックを明かしてくれた。

「自動車をスケッチする際、重要なことに3次元の壁を乗り超えることがあります。つまり、場合によっては次元を超えて何かを強調する必要があるということです。とにかく誇張するのです」

「似顔絵について考えてみましょう。鼻が誇張され、極端に大きくまたは長く描かれていたら、それが誰かすぐに分かりますよね。実際にはそれほど大きな鼻ではないかもしれませんが、おそらくそれが誰かを最も認識しやすくする機能です。これはクルマのスケッチにも少し似ています。例えば、ホイールをいつもより少し大きく描いてみてください。そうすることでクルマに持たせたいキャラクターを視覚化できるのです」

「時々、私は歴史的な名車からデザインの原型をスケッチするときがあります。それはよくよく知っているポルシェ 911ではなく、ランドローバー ディフェンダーだったりもするんですよ(笑)。スケッチするクルマを選んだら、そのクルマを特徴付けるラインを2~4本、考えてみてください」

「構成するラインがシンプルなクルマと、かなり複雑なクルマがあります。複雑なラインを持つクルマは、実はそれほど強烈なアイデンティティを持っていません。クルマに強いアイデンティティがない場合、デザインでブランドの個性を主張することは非常に困難です。クルマをデザインする時、重要なラインが何かを理解することが非常に役立ちます。今回は911の持つデザイン“アイコン”をスケッチの段階を踏んで説明します」

スケッチ1:車輪を描く

「10名のカーデザイナーにスケッチのプロセスを説明するよう頼めば、5つの異なるアプローチが得られるでしょう。あるデザイナーは両方のホイールから描き始めたり、別のデザイナーは前輪から描いてフロントセクションへ、といった具合です。どのアプローチを選択しても問題はありませんが、私はいつも前後のホイールから描き始めます」

「クルマを描く際の課題のひとつに、ホイールベースと正しいプロポーションをどう決めるかがあります。後輪をどの位置におくべきか、考えてみましょう。スケッチを進めていくうちに、後輪の位置が間違った場所にあると気づくことがあります。そうしたら消してもう一度やりなおせばいいのです。ホイールに関してはふたつの円を描くだけでもいいですが、私は5本スポーク・ホイールを描いてみました」

スケッチ2:最初のラインを描く

「車輪を描いたら、次のステップはクルマを地面に置くこと。車輪の間に線を引きます。そこからアウトラインの作成をスタートすることができます。デザイナーとエンジニアは、よく基本的なシルエットを構成する『Y軸とゼロ軸の関連』について話し合います。911の場合は非常に象徴的です。場合によってはシルエットとホイールベースが一致せず、後輪を動かすことを考えなければならないことがあります。でも、それは問題ではありません。先ほど言ったように私たちには消しゴムがあるのですから(笑)」

スケッチ3:少しずつディテールを追加

「順を追ってディテールを加えていきましょう。 まずはウインドウです。デザイナーはこのウインドウを『DLO』と呼ぶことがよくあります。 この用語は誰も理解できない会話を誰もができるように考案されたものだと思います。911のDLOは象徴的です。4人乗りのため、カイエンやパナメーラとは大きく異なります。 私の場合は最初にウインドウを描いて、その後にフロントヘッドライトが続き、そしてリヤセクションへと向かいます。この段階でバンパーの形状が追加されテールランプも描いています」

スケッチ4:レイヤーは加えすぎないように

「クルマのスケッチはレイヤーを追加しながら、ゆるやかにディテールを加えていきます。一番難しいのはスケッチをやめること。『少ないほど多い』という原則を考えると、あまりレイヤーを描き加えすぎない方がいい場合があります」

「この段階でヘッドライトは楕円形。バンパー下にエアインテークを追加して、ドアもフォルムを見せ始めています。リヤバンパー下部のエアアウトレットとリヤフェンダーのディテールに注目してください。私はリヤショルダーに力強い印象を持たせようとしているのが分かりますか?」

「ベルトラインのすぐ下、ホイール間に非常に繊細なラインがあります。これは前の画像にはなかったもの。繊細なラインですが、より立体的な感じになりますよね。この細いラインが後輪に近づくと下がっていくのは偶然ではありません。実車のボディサイドのラインが下がるのではなく、側面からクルマを見ている人が実際にどのように見えているかを視覚化する手法です。つまり911を上から見ると、リヤセクションのフェンダーラインが膨らんでみえることを示しています」

スケッチ5:光を表現するライン

「この段階でさらにディテールを細かく追加していくのが分かります。ドアハンドルを描き込みました。様々な太さのラインがありますが、これは立体感を出します。機会があれば、素敵な背景にクルマを駐車して写真を撮ってみてください。クルマのボディ表面には光と影を示すラインが現れるでしょう。スケッチでもそのラインを模写してみてください。あなたのスケッチが生き生きとしてくるはずです」

スケッチ6:影とコントラスト

「最初の5段階はラインのみでしたが、ここでシャドウとコントラストを追加します。フェンダー上部には光を反射しているような印象を与えたいので、影は置いていません。クルマの写真をじっくり観察して、光が当たっている領域と影になっている領域を確認します。『#GetCreativeWithPorsche』シリーズの第1回で、フォトグラファーのリチャード・パードンは自動車のデザインを見せるために光を活用していると説明していました。このスケッチ6はまさにその段階です」

スケッチ7:ボディに色を加えていく

「このステップはとても楽しいですよ。ここで色を追加します。フォトショップで作業する場合は別のレイヤーを追加するようなものですね。ボディ上部のブルーは空を、暗い色は地面を反射したものです。これはクルマが地面に置かれているような印象を与えてくれます」

「パソコンやフォトショップがなくても大丈夫です。そもそも私はあまり上手に使えませんしね(笑)。ぜひ、水彩絵の具やクレヨンを使って色を塗ってみてください。スケッチをしているとき、例えばミーティング中なのですが、目の前にパソコンはなく私は鉛筆と紙しか持っていませんしね」

スケッチ8:ガラスの色を決める

「ガラスの表現に関しては、それぞれのデザイナーが独自の方法を持っています。私はガラスをブラックに塗りたいと思います。ここに次の段階でハイライトを追加します。 私は通常、サムネイルサイズ(小さめのサイズ)のスケッチを描きます。実際描き始めてみると、手元に収まるくらいのサイズの方がコントロールしやすく、描きやすいと感じませんか?」

スケッチ9:サイドウインドウにハイライトを入れる

「ここでDLO(ウインドウ)にどんな光が当たっているのか再度検討します。私のスケッチでは、サイドウインドウが上下で分けられていますよね。上部が黒く、下部が明るくなっています。ガラスに曲率があるような印象を持つはずです」

「ヒストリックカーのサイドウインドウは、ガラス表面が完全に真っ平でしたが、現代のクルマではサイドウインドウにはカーブがあります。色の微妙な変化でこのカーブを表現することができるでしょう。そしてこのレンダリング段階で、鉛筆のスケッチからペンなどによる実線を引きます」

スケッチ10:仕上げ段階では3次元的な奥行きを見せる

「紙にスケッチを描く場合、当然平面になります。色と影による視覚的なトリックを活用して、最終的に3次元的(立体的)な奥行きを見せる必要があります。もう一度、カメラで撮ったクルマの写真を眺めてみてください。ガラス越しに見える背景、ボディワークに反射する光があるはずです」

「これはクルマが駐車されている場所によって異なりますが、実際の写真を見ることでボディ表面にどんな光や影が入るのか調べることができるでしょう。この段階で白い絵の具を使いハイライトを持ち上げてみました。ヘッドライトとホイールに光を当てて、ブレーキキャリパーも追加しています。他にも室内にステアリングホイールやシートの一部を加えてみてもいいかもしれませんね」

「絵が上手くなるコツは、とにかく描き続けてみることです。そして自分の過去の作品を振り返ってみるのはとても楽しいものです。あの時は会議に参加していたなぁ、面白い内容だった・・・とか、あの時は予算に関する話し合いだった・・・とか、色々と思い出せるのです(笑)。とにかくデザインは常に試行錯誤の繰り返しです。ぜひ、鉛筆を手に取って、描き始めてください!」

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