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【レースフォーカス】フラッグ・トゥ・フラッグが演出したミラー、ザルコ、クアルタラロ、三者三様のドラマ/MotoGP第5戦フランスGP

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【レースフォーカス】フラッグ・トゥ・フラッグが演出したミラー、ザルコ、クアルタラロ、三者三様のドラマ/MotoGP第5戦フランスGP

 MotoGP第5戦フランスGPは、大波乱の決勝レースだった。それも、様々なドラマがあちらこちらで起こり、MotoGPの数レース分がこの1レースに凝縮されたような濃厚ささえあった。ここではトップ3のライダーたちのフランスGPに迫っていく。
 
 フランスGPの週末は、雨が降っては止み、止んでは降る、を繰り返した。決勝日も例外ではなく、午前中のウオームアップセッションで、特にMoto3クラスの時間帯は雨量がかなりのものだった。気まぐれな雨が上がると、次第に路面がドライコンディションに回復していく。サイティングラップを終えてグリッドに着いたときには、すべてのライダーがスリックタイヤを履いていた。
 
 しかしスタートして3周もすると、雨が降り始めたことを知らせるレッドクロスのフラッグが提示され、さらにマシンの乗り換えを許可するホワイトフラッグが提示された。つまり、フラッグ・トゥ・フラッグである。
 
 このルールは天候などにより路面状況が変化した場合、ピットインを行って状況に適したタイヤを履いたスペアマシンに乗り換えることができる。今回の場合は、当初ドライコンディションだったのが降雨によりウエットコンディションに変化し、ライダーはピットインしてレインタイヤを装着したスペアマシンに乗り換え、レースを続行した。

■ミラーのダブル・ロングラップ・ペナルティは悲劇にならず?
 まずはジャック・ミラー(ドゥカティ・レノボ・チーム)から状況を追っていこう。 ホワイトフラッグが提示されたとき、トップ争いを演じていたのはミラーとファビオ・クアルタラロ(モンスターエナジー・ヤマハMotoGP)、マーベリック・ビニャーレス(モンスターエナジー・ヤマハMotoGP)だった。ミラーはクアルタラロとトップ争いを演じていたが、5周目に11コーナーでオーバーラン。グラベルに飛び出したが、転倒は回避してその周にピットに戻りマシンを乗り替えた。
 
 ミラーにとっての“波乱”はこのときに起こった。ピットレーンのスピードオーバーにより、ダブル・ロングラップ・ペナルティが科されたのである。このときミラーは3番手を走行していた。
 
「ロングラップ・ペナルティが科されたのを見て『もう終わりだ』と思ったよ。2周くらいは信じられなくて、ありえないと思っていた。(提示する)ナンバーを間違えているんだろうってね。でも、それは正しかったんだ」

MotoGP第5戦フランスGP:4年ぶりのフラッグ・トゥ・フラッグ。天候に翻弄されたレースをミラーが制す

 ロングラップ・ペナルティは1回につき、約2秒のタイムを失うとされている。ミラーは合計4秒のロスを余儀なくされたのだ。しかし、このときミラーは4番手の中上貴晶(LCRホンダ・イデミツ)以下に対し10秒以上の差を築いていた。
 
「結局のところ、そんなに悪い結果にはならなかったね」とミラー。2度のロングラップ・ペナルティを消化したあともポジションを落とすことはなく、12周目にはこのときトップを走っていたクアルタラロを交わしてトップに立った。

 雨が上がってコンディションがドライになっていったレース終盤には、スリックタイヤを履いたスペアマシンへの乗り換えも想定していたようで、何度もチームにサインを送っていたのだとか。
 
「チームが毎周(もう一台の)バイクを準備して、交換する準備ができていたことは知っている。でも、向こうはコース全体がだいたい乾いていることを知っているのかわからないでしょ。少し濡れていたのは6コーナーくらいだったと思う。あとはだいたい乾いていたんだ。たぶん残り8周~7周から最後まで合図し続けていたんじゃないかな。スリックタイヤで走れると思っていた。ただ、スリックを履いたバイクに乗り替えたのかライダーがいたのかわからなかったし、レースをリードしているときに、その最初のひとりになりたくはなかったんだ」

 ともあれ、最後にはほとんど独走状態。2連勝を飾ったのだった。

■クアルタラロの3位は「優勝と同じくらいの価値がある」
 ドライコンディションではミラーとトップ争いを演じ、ウエットコンディションでも一時、トップを走ったクアルタラロ。こちらの“波乱”もロングラップ・ペナルティである。マシン乗り換えのためにピットに戻ったとき、ビニャーレスのマシンのところで停まってしまった。

「『うわー、ロングラップ・ペナルティだ』って思ったよ」と、そのときの心情を明かす。フラッグ・トゥ・フラッグは2017年シーズン第10戦チェコGP以来であり、2019年からMotoGPクラスに昇格したクアルタラロにとっては、初めての体験だったのだ。

「ピットレーンでは、地面のナンバーを見ていたんだ。最初に(エネア・)バスティアニーニのピットに行きそうになったんだけど、『違うぞ、ここは僕のピットじゃない』と思って、自分のピットに行った。でもマーベリックのバイクのところに止まってしまった」

 マシン乗り換え後、トップを走っていたマルク・マルケス(レプソル・ホンダ・チーム)が8周目に転倒を喫してからは、クアルタラロがトップに立った。しかし、トップを維持できるほどのペースではなかった。加えて科されたロングラップ・ペナルティ。クアルタラロはミラーから離されていき、終盤には後方から追い上げてきたヨハン・ザルコ(プラマック・レーシング)にも交わされた。
 
 それでも、クアルタラロはパルクフェルメで「すごくうれしい。これは僕にとって優勝と同じくらいの価値がある」と語る。そこには、これまでミックスコンディションで苦戦していた背景があったようだ。
 
 クアルタラロは決勝レース後の会見で、こう述べている。
 
「ウエットコンディションでは、ベストではないけど7番手から10番手くらいのポジションだった。でも、ミックスコンディションでは、16番手から18番手くらい。今日はそういうコンディションだった。(そういうコンディションで)一歩、改善できたということだ。このコンディションで表彰台を獲得できたのは素晴らしいことだ。満足しているし、この先にとっても助けになるだろうね」

■ザルコが悔やんだ4周のタイムロス
 順番が逆になってしまったが、2位でフィニッシュしたザルコ。こちらは5番グリッドながら、スタートで失敗し、さらにはバイクに問題が生じたフランコ・モルビデリ(ペトロナス・ヤマハSRT)を避けるためにポジションダウンしてしまったという。
 
 マシンの乗り換え後は5番手に復帰したが、レインタイヤを温めるのに時間がかかったのだとか。
 
「僕は(前後とも)ミディアムタイヤを履いていたんだけど、温まるのに3周から4周かかった。優勝を考えるならば、このときの4周でタイムを失いすぎたと言えるね」

 もしそれがなかったら……といった口ぶりでもあった。確かに、ザルコが5番手だったとき、トップとの差は20秒近くあった。それを20周ほどかけて追い上げ、クアルタラロを交わし、2位でフィニッシュしているのである。レース終盤のペースを見れば、ミラーよりも速い。ザルコの口ぶりはそういうことなのだろう。けれどレースには“たられば”はなく、ザルコ自身も「でも、(そう言って)優勝を逃してがっかりするのは、間違った考え方だろう」と語っていた。

 ちなみに、ザルコとクアルタラロのフランス人ライダーふたりがポディウムを獲得したのは、今季2度目。2度目は母国グランプリのフランスGPで、そろって表彰台に立った。
 
 最後に、会見でフラッグ・トゥ・フラッグを楽しんだか、と質問された3人の答えが興味深かったので紹介しよう。
 
 ミラーは「こういうのは全部緊張を強いられるものだと思うけど、僕たちのスポーツにいけてる要素を加えるものだとも思う。だから言うなれば、必要な“やっかいさ”だとも思うよ。でも、赤旗が出てピットに戻って、『ん~~』って少し待ってからもう一度スタートするよりはいい」と、彼らしい表現でコメント。
 
 ザルコは「1周早くピットに入っていたら、かなり違ったかもね。そうすれば、きっとそのライダーが勝っていたよ。だから、フラッグ・トゥ・フラッグは精神的に疲れる。でもまあ、僕としては、今日はレインタイヤでドライコンディションを走ってもすごくうまくいった」と、ピットインのタイミングの難しさを示唆した。
 
 そしてフラッグ・トゥ・フラッグ初体験となったクアルタラロは「僕としては、もしトップ10に入らなかったら、フラッグ・トゥ・フラッグを楽しめなかっただろう。でも、初めて(こういうコンディションで)いい結果を出せたので、すごくいい経験だった。楽しめるかどうかっていうのは、結果やフィーリングによると思うよ。だから、今日に関して言えば、楽しんだね」と語っていたが、別の質問に対しては「楽しかったけど、難しかった。でも、精神的に疲れたね。間違ったピットに止まって、ロングラップ・ペナルティを受けてしまった。最初の5周はすごく難しかった。まあでも、1回でいいかな」とも答えていた。
 
 フランスGPは、トップ3だけ見ても三者三様のドラマがあった。それだけ難しいレースだった、ということなのだろう。

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