2024年F1第3戦オーストラリアGP。レース序盤にマックス・フェルスタッペンとルイス・ハミルトンというチャンピオン経験者のふたりがトラブルでリタイアし、上位はフェラーリとマクラーレンの一騎討ちとなった。一方角田裕毅を含む中団勢のなかでは、熾烈な入賞争いが繰り広げられる展開に。オーストラリアGPを無線とともに振り返る。
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手術から16日のサインツが今季初優勝「人生はまるでジェットコースター」フェラーリが最大ポイントを稼ぐ/F1第3戦
アルピーヌの戦闘力不足は第3戦になっても改善の兆しはなく、エステバン・オコン15番グリッド、ピエール・ガスリーは17番グリッドからのレーススタートを余儀なくされた。それでもガスリーと担当エンジニアのカレル・ルースは、希望を失わない。
スタート前
ルース:レースは必ず荒れる展開になる。集中して、できることをやって行こう。
ガスリー:やってやろうぜ!
ポールポジションから首位をキープしたマックス・フェルスタッペン(レッドブル)だったが、2周目にカルロス・サインツ(フェラーリ)に簡単にかわされて行った。
2周目
フェルスタッペン:コントロールを失った。挙動がおかしい。
ジャンピエロ・ランビアーゼ:了解した。
3周目
フェルスタッペン:クルマがルースだ。
右リヤタイヤから、白煙が上がり始めた。
4周目
フェルスタッペン:煙だ。青い煙が上がってる。炎も出てる。ブレーキだ。
フェルスタッペンは緊急ピットイン、そのままリタイアを喫する。2022年のオーストラリアGP以来43レース連続完走、入賞の記録も、ついに途絶えてしまった。
中団勢は早くもミディアムタイヤの性能劣化に見舞われ始めたが、首位のサインツは絶好調だ。
8周目
角田裕毅:左フロントにグレイニングが出始めている。
9周目
サインツ:タイヤの感触はすごくいい。長く行こう。
11周目
リカルド・アダミ(→サインツ):素晴らしい仕事をしてるぞ。
たった1台のレッドブルとなったセルジオ・ペレスは、シャルル・ルクレール(フェラーリ)、オスカー・ピアストリ(マクラーレン)の早めのピットインのおかげで、6番グリッドから3番手まで順位を上げた。しかしすでにタイヤが限界だった。
13周目
ペレス:このタイヤ、もうダメだ。リヤのグリップが全然ない。
16周目、11番手走行中のルイス・ハミルトン(メルセデス)に、トラブルが発生する。
17周目
ハミルトン:エンジントラブルだ。
ハミルトンはコース脇にマシンを止め、これで世界チャンピオンふたりが早々にリタイアとなった。
一方、オコンもリヤタイヤに違和感を感じ、チームにチェックを要請する。
20周目
オコン:何か見つかった?
ジョシュ・ペケット:ああ、ブレーキダクトにバイザーがあった。
この時点でオコンは最下位17番手、スタート前に担当エンジニアと励まし合ったガスリーも15番手と、アルピーヌは苦しい展開だ。
対照的に8番グリッドを獲得した角田裕毅(RB)は、入賞圏内を快走していた。
24周目
マッティア・スピニ(→角田):ユウキ、いいタイヤの使い方をしているぞ。(すぐ前のランス・ストロールに)プレッシャーをかけ続けろ。
中盤以降は、フェラーリとマクラーレンの一騎打ちとなった。ハードタイヤでペースの上がらない3番手ピアストリに、チームから指示が飛ぶ。
29周目
トム・スタラード(→ピアストリ):(4番手のランド・ノリスと)順位交換だ。
ウィル・ジョゼフ(→ノリスに):ルクレールに追いつこう。
ノリスは2番手ルクレールとの距離を、じわじわと詰めて行った。
34周目
シャルル・ルクレール:タイヤがいっちゃってる。左フロントだ。これ以上待てない。
ルクレールはこの周にピットインし、4番手に後退。ノリスが2番手に上がった。しかし40周目のタイヤ交換から戻ったときには、ルクレールは4秒先。オーバーカットはならなかった。
最終58周目、7番手走行中のジョージ・ラッセル(メルセデス)が、ターン6~7で第クラッシュを喫した。横倒しになったコクピット内で、ラッセルは完全にパニック状態だった。
58周目
ラッセル:赤旗だ! 赤旗を出せ! コースの真ん中に止まってしまった!
マーカス・ダドリー:出ると思う。
ラッセル:赤だ、赤、赤!! なんですぐに出ないんだ!
ダドリー:VSCが出た。落ち着け。大丈夫か?
ラッセル:大丈夫だけど、コースの真ん中で半分横になってる。
一方、ラッセルに追われていたフェルナンド・アロンソ(アストンマーティン)は、担当エンジニアとこんなやりとりをしていた。
クリス・クローニン:後ろはクリアになったぞ。
アロンソ:スロットルに問題が出てる。全開にできない。(ペダルが)ひどく固い。
クローニン:ラッセルは大丈夫だ。
その後アロンソは、危険なドライビングだったとして20秒ペナルティを科された。はたしてアロンソは故意にスロットルを戻したのか。あるいは無線で行っていたように、トラブルが起きていたのか。
ルクレール:これ、最終周だよね?
マルコス・パドロス:そうだ。最速ラップを出したぞ。
ルクレール:そうじゃなくて、ラッセルは大丈夫と訊いたんだけど。
パドロス:大丈夫だ。
相変わらず担当エンジニアとの意思の疎通に困難を感じている風のルクレールだが、望外のワン・ツーフィニッシュとなった。
サインツ:シャルルにもっと近寄って、いっしょに勝利を祝おうと伝えてくれ。
チェッカー後
サインツ:やったよね?
アダミ:その通り。やったぞ!
サインツ:ハハハ。人生は、ローラーコースターだね。
虫垂炎で前戦サウジアラビアGPを欠場したサインツは、代役オリバー・ベアマンの大活躍もあって、今回のパフォーマンス次第では来季の生き残りに黄信号が灯りかねなかった。しかも手術直後で、体調は万全とは言いがたい。そんななかでの見事な勝利。「人生はローラーコースター」は、まさに実感だったことだろう。
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