いまや当たり前の装備となった「アイドリングストップ」。燃費向上でもランニングコストは大差なし?
信号待ちなどの停車時にエンジンを停止させ、燃料を節約するアイドリングストップは、環境志向の高まりから今や当たり前の装備となり、付いていない車を探す方が難しいほどだ。
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いっぽうで最近では、トヨタのヤリスなど最新のガソリン車では、あえてアイドリングストップを非装着とするクルマも出てきた。
実際、アイドリングストップのランニングコストはどれほどのものなのか? 今回は長い目で見たアイドリングストップの有無による「損得」を簡単なシミュレーションで検証してみたい。果たしてその結果とは?
文/永田恵一
アイキャッチ画像/tarou230-stock.adobe.com
写真/TOYOTA、SUZUKI、HONDA、池之平昌信
【画像ギャラリー】あえて非装着! アイドリングストップ「なし」の最新トヨタ車は?
アイドリングストップで燃費はどれだけ上がる?
現行国産車において、同じ車種・パワートレーンでアイドリングストップの有無を選べるモデルは、オプション、グレードまで含めてもほとんどないが、これに該当するのはアルファード/ヴェルファイアの2.5Lガソリン車(FF)、ロードスターのソフトトップ(6MT車)、そしてマーチとなる。
3台のアイドリングストップ装着による燃費と価格の違いは以下の通りだ。
【表】アイドリングストップ装着車と非装着車の燃費差
●アルファード&ヴェルファイア/オプション価格:5万7200円
(エアコンの構成部品であるエバポレーターに蓄冷材を入れ、夏場などのアイドリングストップ時間延長に貢献する蓄冷エバポレーターを含む)
●ロードスター/オプション価格:8万8000円
(減速エネルギーをキャパシタに貯め、貯めたぶんを電装品に使うことで燃費を向上させる「i-ELOOP」含む)
●マーチ S(無)/128万9200円、XVセレクション(有)/148万8500円
(装備品の違いも含めたアイドリングストップ有り無しのグレード)
アイドリングストップの装着による燃費の向上は、WLTCモードでも筆者の経験則でも市街地で10%、総合すると5%といったところだ。
また、アルファード&ヴェルファイアとロードスターは、メーカーオプションのため価格が高く、マーチは装備などの異なるグレードでの比較となるため正確な計算はできないが、ここでは標準装備の場合の価格を仮定してみたい。
蓄冷エバポレーターとは、アイドリングストップ中のエンジン停止状態でも、車内の温度の上昇を抑圧する機能のこと
アイドリングストップに必要なパーツは、アイドリングストップ対応の12Vバッテリー、使用頻度が何倍にもなることに対応した強化セルモーター、アイドリングストップ状態からエンジン始動時にオーディオやカーナビの作動をキープできるよう電圧を安定させるDC-DCコンバーターと意外に少なく、標準装備であれば蓄冷エバポレーターを含めても2万円程度だろう。
アイドリングストップの損得は?
さて、アルファード&ヴェルファイアの2.5Lガソリン車(2WD)を例に、前述の2万円+ガソリン代※で仮定すると、1万kmあたりのガソリン代は、アイドリングストップなしで14万円、アイドリングストップありは13万3000円となる。
(※燃費=アイドリングストップなし10.0km/L、アイドリングストップあり10.5km/L、レギュラーガソリン1L/140円で計算)
アルファード&ヴェルファイア(全長4945mm×全幅1850mm×全高1935mm(2WD))
そして、アイドリングストップの損得勘定において焦点となるのは、12Vバッテリーの交換代だ。
アイドリングストップなしであれば、12Vバッテリーは5年5万km程度持つと思われ、価格も通販サイトで大手のものを見ると、アルファード用で特上クラスが2万円、上クラス1万6000円といったところなので、後者を使うと仮定する。
いっぽう使い方によっても大きく左右されるが、アイドリングストップ付き車の12Vバッテリーの寿命は、3年3万kmが平均的だろう(休日の近距離利用というパターンが多い人だと2年持たないこともあるという)。
アイドリングストップが付くアルファード 2.5ガソリン車(2WD)だと、12Vバッテリーは、アイドリングストップに対応した特上クラスが必要となり価格は2万2000円程度なので、1回のバッテリー交換でアイドリングストップなしに対する差額は6000円となる。
この仮定で計算していくと、アイドリングストップの有無で以下のような試算ができる。
【3年3万kmで乗り替え】
■アイドリングストップ「なし」
ガソリン代/14万円×3=42万円
■アイドリングストップ「あり」
アイドリングストップ機構の価格/2万円
ガソリン代/13万3000円×3=39万9000円
1回目の12Vバッテリー交換代/2万2000円
=合計/44万1000円
【5年5万kmで乗り替え】
■アイドリングストップ「なし」
ガソリン代/14万円×5=70万円
1回目の12Vバッテリー交換代/1万6000円
=合計71万6000円
■アイドリングストップ「あり」
アイドリングストップ機構の価格/2万円
ガソリン代/13万3000円×5=66万5000円
1回目のバッテリー交換代/2万2000円
=合計70万7000円
【10年10万kmで乗り換え】
■アイドリングストップ「なし」
ガソリン代/14万円×10=140万円
1回目の12Vバッテリー交換代/1万6000円
=合計141万6000円
■アイドリングストップ「あり」
アイドリングストップ機構の価格/2万円
ガソリン代/13万3000円×10=133万円
3年目、6年目、9年目のバッテリー交換3回/6万6000円
=合計141万6000円
アイドリングストップがあってもランニングコストは大差なし!?
【図】アイドリングストップの起動メカニズム
あくまで机上の計算では、アイドリングストップ「あり」は、燃費が向上しガソリン代は安くなるが、アイドリングストップの装着費、燃費向上ぶんや12Vバッテリー交換代まで長い目で見て総合すると大差ない。
この程度ならアイドリングストップありだと12Vバッテリー交換が多くなる手間の方が煩わしいと思う。
さらに今回は入れなかったが、アイドリングストップ「あり」で12Vバッテリーを交換すると、ディーラーなどでのセットアップが必要な場合もあり、その費用が掛かるとアイドリングストップ「あり」の方が長い目で見た出費が高く付く可能性も充分ある。
また、環境負荷という観点でも、何度か書いているようにアイドリングストップでガソリンが節約できても、12Vバッテリーそのものの消費が増えるという点は深く考えるべきことだろう。
そのため、ヤリス/ヤリスクロス、RAV4とハリアーのガソリン車といった最近のトヨタ車が総合的判断もあり、アイドリングストップを装着していないことにトヨタの判断力の確かさを強く感じる。
◆ ◆ ◆
今後アイドリングストップの装着はCAFE(企業平均燃費基準)の導入により、是が非でもカタログ燃費を上げる必要のあるメーカーもあるため、付けるメーカーと付けないメーカーで対応が真っ二つに分かれるかもしれない。
アイドリングストップ装着車の12Vバッテリーを長持ちさせたいのであれば、筆者も愛車のGRヤリスでそうしているが、とりあえずアイドリングストップをオフにして12Vバッテリーの負担を減らすというのがいいだろう。
【画像ギャラリー】アイドリングストップの仕組みと非装着トヨタ車をみる
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みんなのコメント
他のメーカーも廃止すべきだね。
トヨタが廃止したのには本当に感動した。この件で、一気に好きになった。