2020年8月9日に行われたF1第5戦70周年記念GPで、ついにレッドブル・ホンダのマックス・フェルスタッペンがメルセデスAMGの牙城を打ち崩した。開幕戦から4連勝中のメルセデスAMGは、圧倒的な速さだけではなく戦術的なミスもなく、運も味方につけて安定感のある戦いぶりを見せてきた。そんな中で、フェルスタッペンが高速コースのシルバーストンでメルセデスAMGを完璧に破った意味は大きく、今後チャンピオンシップ争いがホットになる可能性もある。なぜレッドブル・ホンダはシルバーストンで勝てたのか、どのようにして勝機を見いだしたのかを振り返ってみよう。
レースペースでメルセデスAMGを上回ったレッドブル・ホンダ
前日の予選でハードタイヤでのQ3進出を決めたマックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)は、トップ10からスタートするマシン中で唯一ハードタイヤを履いた状態で決勝レースをスタート。4番グリッドから好発進を決めるとすぐに3番手にポジションを上げ、前を行くメルセデスの2台にプレッシャーをかける。ミディアムタイヤでフロントロウからスタートしたメルセデスAMGの2台はタイヤ摩耗の不安もあり、いつものようなハイペースでは逃げられない。
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案の定、ミディアムタイヤのデグラデーションが出始め、次第にフェルスタッペンがメルセデスAMG勢を追いつめていく。そして、ミディアムタイヤのメルセデスの2台が13周目、14周目にピットインすると、ハードタイヤのフェルスタッペンが暫定的なトップに立つ。
ところが、タイヤを交換したメルセデスAMG勢のペースが上がらない。交換したばかりのハードタイヤにブリスターが出て、すぐにフェルスタッペンよりも遅いペースになってしまったのだ。これで26周目にミディアムタイヤに履き替えたフェルスタッペンは、ボッタス(メルセデスAMG)のすぐ後ろでコースに戻ってすぐにオーバーテイクすることに成功。そしてそのミディアムタイヤで6周を走ると、ボッタスと同じタイミングでピットインして再びハードタイヤに履き替える大胆な作戦に出る。
ハミルトン(メルセデス)が2番目のスティントをハードタイヤでロングランする中、フェルスタッペンはペースを上げてハミルトンを追撃。ハミルトンが41周目に最後のピットストップをする間に楽々とトップに立つと、最終的には11秒以上のリードをつけて優勝を飾った。フェルスタッペンにとっては9回目、ホンダのパワーユニットでは4回目の勝利となった。
レッドブル・ホンダのアレクサンダー・アルボンも素晴らしい走りで、9番手スタートからポジションを上げ、5位でフィニッシュした。アルボンはミディアムタイヤでスタートすると、6周目で早々にハードタイヤに履き替える積極的な戦略でノリス(マクラーレン)をオーバーテイク。30周目に再びハードタイヤに履き替えると、最後の2周でストロール(レーシングポイント)をオーバーテイクし5位でフィニッシュした。
一方、アルファタウリの2台は、わずか0.9秒差でフィニッシュ。ハードタイヤで16番グリッドからスタートしたダニール・クビアトは19周目で初めてピットイン。35周目でミディアムタイヤに履き替えると10位に入り、ポイントを獲得した。
7番グリッドからスタートしたピエール・ガスリーは、7周目でピットインしハードタイヤに履き替えるが、そこでポジションを落とし、23周目で再度ハードタイヤに履き替えて追い上げるものの、11位に終わっている。
最終的にはホンダ勢4台の内、3台がポイントを獲得という結果でレースを終えた。
今回のレース結果について、ホンダの田辺豊治F1テクニカルディレクターは「今週は金曜日の走行開始時から、タイヤに厳しいレースになることが予想されました。その状況下で予選から勝つための戦略を立て、ドライバーのフェルスタッペン選手がそれに素晴らしいドライビングで応えるなかで、ホンダもパワーユニットを力強く機能させて、この勝利に貢献できたと感じています。素晴らしいチームワークの結果による勝利でした。チームメイトのアルボン選手も9番グリッドからトラフィックの中で難しい展開でしたが、粘りの走りを見せての5位入賞、後方スタートのクビアト選手も10位入賞と、ホンダとしていい結果になりました。フリー走行、予選で好調だったガスリー選手は、レースペースが上らず惜しくも11位に終わりましたが、この先のレースでも好調を維持して良結果を出してくれることを期待しています。シーズン初勝利をあげるまで少し時間がかかってしまいましたが、ようやくファンのみなさんに勝利を届けることができ、うれしく思っています」とコメント。ドライバーは次のように語っている。
マックス・フェルスタッペン
「チームとして最高の結果を出せ、素晴らしい一日になりました。レース結果から見えるように、ハードタイヤで予選Q2を走る戦略が奏功したと思います。ミディアムタイヤはあまり持たないので、ハードタイヤでの最初のスティントをどんなペースで何周走るかが鍵でした。僕たちのマシンはライバルに比べるとタイヤに優しいようで、特にレースでは柔らかいタイヤの方がマシンのフィーリングがよかったです。メルセデスのマシンをオーバーテイクし、引き離すことができたことに大きな満足感を感じました。今日のようなレースをまたシーズン残りのレースでもできればと思っていますし、そのためにプッシュを続けていきます。いいチームワークですし、リスクを恐れずに挑戦していきます。まずは今日の勝利をゆっくりと噛みしめ、バルセロナでの次のレースに気持ちを切り替えます」
アレクサンダー・アルボン
「マシンの調子もよく、今日の結果に満足しています。レース序盤のDRSを使用するマシンが続いていた状況下でのオーバーテイクは少し難しかったですが、そこからはいい走りができました。今日のレースペースは想像以上によかったので、その原因をこれから分析します。マシンにはポテンシャルがありますが、それを引き出すのが難しい時があります。ただ、このような状況ではいい走りができることも分かってきたので、きちんと要因を解析していきます。次のレースに向けて、今日の5位よりもさらにいいパフォーマンスができるようにしたいです」
ピエール・ガスリー
「スタートも決まりタイヤの感触もよかったので、予定よりも早くピットインするように無線が入った時には驚きました。アルボンに抜かれないように頑張りましたが、それはそれほど重要ではありませんでした。ピットストップから戻るとトラフィックに捕まり、ポジションを上げるために必要以上にプッシュすることになりました。何周か走るとタイヤのブリスターがひどくなり、そこからは散々でした。もっといい結果を出せると思っていたので残念です。他の戦略を取れなかったか、レースを振り返り、次のバルセロナではポイントを取りたいです」
ダニール・クビアト
「今日はとても満足しています。チームは素晴らしい仕事をして、マシンのすべてを引き出すことができました。先週とは違って、あらゆるチャンスをものにすることができました。通常、日曜日は調子がいいのですが、土曜日の予選でもしっかりと結果を出し、よりよいポジションからスタートができれば、もっと頻繁にポイント争いに食い込むことができるでしょう。それでも今日は、16番手スタートから10位でフィニッシュし、1ポイントを獲得できてよかったです」
一方、タイヤを供給するピレリは70周年記念GPを振り返って「気温は土曜日よりも暖かく、レース中の路面温度は摂氏40度を超えました。レッドブル・ホンダのマックス・フェルスタッペンが、ハードタイヤでスタートして最初のスティントを長く走り、アドバンテージを守る見事なタイヤ戦略で4番グリッドから70周年記念グランプリを制しています。シルバーストーンはタイヤに厳しいトラックのひとつであり、タイヤ管理が大きなポイントになりました。ハード→ミディアム→ハード戦略をとったドライバーは2人だけでした(もう1人はマクラーレンのカルロス・サインツ)。タイヤコンパウンドは先週よりも一歩柔らかくなり、これがレースをエキサイティングに盛り上げましたが、スペインではまた違ったレースになるでしょう。ちなみに2位、3位に入ったメルセデス勢はミディアム→ハード→ハード戦略でした」と語っている。
第6戦スペインGPは8月14日から16日、バルセロナのカタルニアサーキットで開催される。レッドブル・ホンダが波に乗って連勝するのか、メルセデスAMGが盛り返すのか、いよいよチャンピオン争いがおもしろくなってきた。
2020年 F1第5戦70周年記念GP 決勝結果
1位 33 M.フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)52周
2位 44 L.ハミルトン(メルセデスAMG) +11.326s
3位 77 V.ボッタス(メルセデスAMG) +19.231s
4位 16 C.ルクレール(フェラーリ) +29.289s
5位 23 A.アルボン (レッドブル・ホンダ) +39.146s
6位 18 L.ストロール (レーシングポイント・メルセデス)+42.538s
7位 27 N.ヒュルケンベルグ (レーシングポイント・メルセデス)+55.951s
8位 31 E.オコン(ルノー) +64.773s
9位 4 L.ノリス(マクラーレン・ルノー)+65.544s
10位 26 D.クビアト(アルファタウリ・ホンダ) +69.669s
11位 10 P.ガスリー (アルファタウリ・ホンダ) +70.642s
[ アルバム : 2020年 F1第5戦70周年記念GP 決勝 はオリジナルサイトでご覧ください ]
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