ウィル・スティーブンスは、ハーツ・チーム・JOTAの12号車ポルシェ963がル・マン24時間レースでクリーンな走りを見せ、トップ10フィニッシュを達成したことを喜んだ。彼は、レース前の木曜日の夜にチームがシャシーの交換作業を強いられたあとのレースで「それが可能だとは信じられなかった」と語った。
スティーブンスがカラム・アイロット、ノーマン・ナトとシェアしたポルシェ963のカスタマーカーは、6月15日から16日にかけて、フランスのサルト・サーキットを舞台に熾烈な戦いが繰り広げられた、WEC世界耐久選手権第4戦『第92回ル・マン24時間レース』をリードラップで終えた9台のうちのひとつだった。
最高速を欠いたポルシェ。表彰台を逃す結果に「BoPのせいじゃない」とLMDh責任者/ル・マン24時間
ナトは総合8位でチェッカーフラッグを受け、このレースで優勝した50号車フェラーリ499P(フェラーリAFコルセ)とは3分強の差があったが、ジェンソン・バトンとオリバー・ラスムッセン、フィル・ハンソンがドライブする姉妹車38号車ポルシェ963の順位をひとつ上回った。
英国チームによるトップ10フィニッシュは、12号車のクルーにとって多忙な一週間の後に達成されている。水曜夜のフリープラクティス2で、アイロットがクラッシュしてクルマを壊したあと、チームは大規模なリビルドを行うことを決定。通常3週間かけて行われる組み立て作業を24時間強で終わらせ、見事12号車ポルシェを復活させることに成功した。その後、新しく組み立てられたクルマはアイロットの手によって金曜の夕方にル・マン・アルナージュ空港でシェイクダウンが行われた。
この間、12号車ポルシェは木曜日のハイパーポールと2回のプラクティス・セッションをスキップすることとなり、トラックに戻ったのは土曜日。決勝レース前に走れたのはウォームアップ走行だけであった。
スティーブンスは、チームの妥協したスケジュールがパフォーマンス面で欠点になったことを指摘した。彼がいくつかのポジションを失い、スタート時の8番手からレース開始1時間後には15番手になったことで、それは明らかになった。
「僕たちはレース中ずっと、ストレートスピードに苦しんでいた」とスティーブンスはSportscar365に語った。
「全車が接近しているとき、ストレートライン・スピードで苦戦している状態で後続を引き離すのは難しい」
「また、レース中は複数の小さなトラブルに見舞われた。明らかに最初の1周を走ったときには、いくつかのグレムリンについて確信が持てなかった」
「だから、僕たちはそのような状況でも、できる限りのことをしてふたたび前進を始めたんだ」
スティーブンスは、チームが優勝争いに絡むスピードに欠いていたことを残念に思う一方で、この1週間の出来事を考えればトップ10フィニッシュは称賛に値する成果だと認めている。
彼は「レースにはふたつの見方がある」と述べた。「まず、レースを完走すること。信頼性の問題もなくリードラップをキープし、ミスを犯さずに走りきることだ。あのようなポジションにつけることができたのは、チームのおかげだ」
「正直なところ、(クラッシュを喫した)水曜日の時点ではそれが可能だとは思っていなかった」
「その一方で、僕たちのクルマには充分な速さがなかった。レースウイークから現在まで、我々は明らかに(周囲から見られるより)実力がなかったんだ」
「そういう状況に身を置くと、つねにリスクがつきまとう。いままで走ったことのないクルマを走らせる。それは決して理想どおりにはいかないものだが、これもそのうちのひとつだ」
「しかし、あのような状況ではそれを最大限に活用しなければならない。実際に僕たちはいくつかのポイントを獲得した。それがこの週末のためにできた最大限のことだったんだ」
■スパに続きル・マンでも。プロトンを苦しめたドアの問題
ハーツ・チーム・JOTAが2台のポルシェ963でトップ10入りを果たした一方で、同じプライベーターチームであるプロトン・コンペティションは、ハイパーカークラスでトップ集団から60周遅れのクラス最下位となった。
ハリー・ティンクネル、ジュリアン・アンドラウアー、ニール・ジャニの3名がドライブする99号車ポルシェ963は、レース序盤からトラブルに悩まされた。
このクルマはその後ドライブシャフトのトラブルにも遭遇したが、序盤に発生したドアロックのトラブルによって、最初の1時間で競争力のある走りを事実上封じられてしまった。
プロトンは、前戦のスパ・フランコルシャン6時間レースでもドアが閉まらなくなるトラブルに見舞われていた。その時のドライバーはジャニだったが、今回はティンクネルがこの問題に直面することとなった。
「WECスパでドアに問題があったが、それがここに来てまた出てしまった」とティンクネル。
「問題が発生したことで明らかにフラストレーションが溜まったし、早い段階で自分の運命を知ることになった」
「最終的には、ドアの問題がなかったとしてもドライブシャフトの故障で立ち往生していただろうけどね」
「スパを離れたあと、総合優勝を目指して戦っただけに屈辱的な週末だった。でも、サンパウロではもっと強くなって戻ってくるよ」
「ドアを直すのに4回のピットストップが必要で、最後にはドライブシャフトに不具合が出た。残り2時間半ほどで修理は完了したが、プライベーターズ・カップで3位を獲得するために走っただけだった。本当に忘れたいレースだね」
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