ついに実現した『AUTOBACS 45th Anniversary presents SUPER GT X DTM 特別交流戦』の“DREAM RACE”、富士スピードウェイでの決勝レース1が11月23日(土)に開催され、ポールポジションからスタートした2017年GT500クラスチャンピオン、KeePer TOM’S LC500のニック・キャシディが、55分+1ラップのDTMフォーマット戦でポール・トゥ・ウィンを飾った。DTM陣営最上位は6位に入ったブノワ・トレルイエ(Audi Sport Japan RS5 DTM)だった。
GT500クラスの3台によるDTMドイツ・ツーリングカー選手権の2019年最終戦ホッケンハイムへの遠征を経て、いよいよ日本に乗り込んできた7台のDTM勢。GT500のレギュラー15台と合わせて総勢22台のマシンは、21日(木)からコントロールタイヤのハンコック習熟を含めて多くのテスト走行、公式練習をこなしてきた。
豪雨の金曜プラクティスを経て、小雨舞う難しいコンディションのもと行われた23日午前の予選では、レース1に出場するドライバーたちによる20分間の争いが繰り広げられ、KeePer LC500のキャシディがポールポジションを獲得。2番手にBMC Airfilter Audi RS5 DTMのロイック・デュバルが並び、GT500とDTMがフロントロウを分け合うがっぷり四つの展開となった。
13時37分からはスーパーGTでおなじみのウォームアップ走行に代わり、8分間のレコノサンスラップが実施され、各車ともワイパーを作動させながらセミウエットのトラックとマシン状況を確認。するとここでまさかのアクシデントが発生する。
走行終了間際にダンロップコーナーへの進入でウィービングを繰り返していたデュバルのAudi RS5が、突然コントロールを失いアウト側のバリアにクラッシュ。左フロントを破損する事態となってしまったのだ。
さらにBMW M4 DTMをドライブしてゲスト参戦のアレックス・ザナルディも、トランスミッション系のトラブルでピットを離れることができず最後尾からのスタートに。この結果、グリッドには21台が顔を揃えることとなった。
なお、前日の公式練習では激しくクラッシュしていたMOTUL MUGEN NSX-GTはマシン修復が叶い、最後尾グリッドに並んでいる。
気温は15度、路面温度14度と午前からほぼ変動のないコンディションとなった14時26分開始の決勝レース1は、従来どおりのローリングスタートながら、DTMがリスタート時に採用する2×2フォーメーションのインディ式スタートが採られる。車間を詰めた21台はグリーンシグナルと同時に一斉に加速して1コーナーへ。
すると前方のデュバル不在で視界の開けたMOTUL AUTECH GT-Rのロニー・クインタレッリが、金曜までの苦戦から大復活し、3番グリッドにつけたRAYBRIG NSX-GT、山本尚貴を仕留めて2番手へ。しかしすぐさま反応した山本も最終コーナーから並びかけ、続く2周目の1コーナーからセクター1を並走して、自らのポジションを取り戻すなど、オープニングからバトルが繰り広げられた。
このオープニングラップを終えてピットロードには、ウエットタイヤスタートと思われる2台のマシンが飛び込み、20番手スタートのModulo Epson NSX-GT、19番手のDTMチャンピオン経験者マルコ・ウィットマンのBMW M4 DTMが早々にタイヤ交換義務を果たし、クリーンエアの中で上位進出を目指すDTMシーズンにも見せた戦略を採ってくる。
さらに6番手発進のKEIHIN NSX-GTも、こうしたダンプコンディションを得意とする塚越広大のドライブで3周目にはAkrapovic Audi RS5 DTMのマイク・ロッケンフェラー、MOTUL GT-Rを仕留めて、3番手に浮上する。
インディスタートとコントロールタイヤの効能か、後方でも密集したバトルが多発し、WedsSport ADVAN LC500の坪井翔はレクサス陣営同士でサイド・バイ・サイドの勝負を繰り広げ、WAKO’S 4CR LC500の山下健太、au TOM’S LC500の関口雄飛を次々とパスして、7周目には4番手にまで上がってくる。
そして金曜には水量の多い雨中で驚異のドライビングを披露したDTM王者レネ・ラストが、14番手に沈んだ予選から一転。8周目にはMOTUL GT-Rをかわし7番手へ。この時点でDTM勢の最上位につける堅実なレース運びを見せる。
しかしDRSを封じられ、トップスピードでGT500に対し劣勢さを感じさせたAudi RS5は、スリップストリームを活用しても前方のレクサス2台に追随することはできず、逆に12周目には後方から迫ってきたDENSO KOBELCO SARD LC500の中山雄一に、1コーナー進入で簡単に前に出られてしまう。
レースは20周を経過し、首位のKeePerキャシディと、7周目にNSX-GT対決を制し2番手に上がったKEIHIN塚越、3番手のRAYBRIG山本のトップ3が1分34秒台のペースで先を行くなか、WAKO’S山下が上位勢のなかで先陣を切ってタイヤ交換へと向かう。
続く15周目にはau関口に続き、Audiのラスト、00号車のBMW M4 DTMに乗る小林可夢偉、リアライズコーポレーション ADVAN GT-Rのヤン・マーデンボローらが続々とピットロードへ。ここで関口はダイブ形式で斜めに止まったマーデンボローに前を塞がれ、メカニックに押し戻されてのピットアウトとなりわずかにタイムロスする光景も見られた。
続く16周目にはニッサン勢がピットへ向かうと、クインタレッリはアウトラップ1コーナーをいつもの感覚で入ったか、大きくオーバーシュートしてコースを外れてしまっている。
その後、首位のKeePerキャシディが20周目にピットへと向かったのに前後して、上位勢が続々とルーティンを済ませると、最後までストップを引っ張ったDENSO中山、そしてAudi Sport Japan RS5 DTMでひさびさの日本凱旋となったブノワ・トレルイエも、翌周にタイヤ交換を終えポジションも一巡。トップ3の顔ぶれは不動も、3番手山本の背後にはWedsSportの坪井が迫ってくる。
また22周目にはアウトラップで一旦下がっていたZENT CERUMO LC500の立川祐路が、ダンロップコーナーでラストのインを差し、富士マイスターとしてDTM王者をオーバーテイクする意地のドライビングをみせた。
ドライ路面でのレースも残り15分を切ったところで、やはりタイヤライフに限界が訪れたか、オープニングラップのピットで上位浮上を狙っていたBMWのウィットマンが2度目のピットへ。さらに翌周にはこれが3度目のピットとなった牧野がそのままガレージイン。金曜までの輝きを見せられぬままレースを終えてしまう。
レースも終盤に向け残り10分を切り、最後のひと波乱を予感させる空気が漂い始め、後方ではAudiのトレルイエがカルソニック IMPUL GT-Rの佐々木大樹、BMW可夢偉を次々とパスし14番手に上がると、かわされたカルソニックのマシンは続くホームストレートでエンジン不調からスローダウンし、力なくピット出口付近のゼブラ帯でストップ。これによりスタートから30周時点でセーフティカー(SC)が導入される。
マシンの回収を終え、残り1分30秒の時点でSCが明けると、当然のようにインディ方式でのリスタート。再び車間を詰めたバトルは先頭の2台、KeePerとKEIHINが文字どおり“車体をこすり付け”ながら最後のスプリントへと突入したが、キャシディが老獪なリスタートでポジションをキープ。
すると後方ではさらなる混乱が起き、ダンロップコーナーへの進入で行き場を失ったAudiのロッケンフェラー、DENSO中山がスピンし、それぞれ11番手、7番手のポジションを失ってしまう。
さらに表彰台圏内を狙った4番手の坪井は、WAKO’S山下に先行されたのち+1ラップとなった最終周で、au関口、Audiとのブノワと三つどもえに持ち込まれると、1コーナーから高速コカ・コーラ・コーナーまでもつれ合うように並走。結果的に、バトルのあおりをうけた関口が失速し、隙を見逃さなかったブノワがDTM最上位となる6位フィニッシュを果たした。
最終的には、シーズンでも主役を張ったKeePer LC500のキャシディが特別交流戦の栄えある初代勝者に輝き、2位にKEIHIN塚越、3位にRAYBRIG山本と、これがミッドシップでのラストランとなるNSX-GT勢が入る、GT500クラスの実力派がそろうポディウムとなった。
明けた日曜は、一部チームを除いて、レギュラーシーズンで相棒だったドライバーにステアリングを引き継ぐ形でレースが行われる。24日(日)は9時から20分間の予選、そして14時26分に55分+1周の決勝レース2が行われる。
また、この間の11時35分にはGT300クラス車両を中心に争われるauto sport web Sprint Cupのレース2も行われる予定だ。
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