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【最新モデル試乗】世界最高のパーソナルクーペ、ロールス・ロイス初のBEV。その最終プロトの凄み

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【最新モデル試乗】世界最高のパーソナルクーペ、ロールス・ロイス初のBEV。その最終プロトの凄み

初のBEVは無音。すべてがロールス流の仕立て

 コラム式セレクターを押し下げてDレンジを選び、スロットルペダルをすっと踏み込むとスペクター・プロトタイプは音もなく走り始めた。

ロールスロイスにとってBEV化は、なんと130年を超すプロジェクトである!【CD取材ノート】

 スペクターはロールス・ロイス初のBEV。だから「音もなく走り出す」のは当然かもしれない。だが「音もなく」はBEVのスペクターに限らず、すべてのロールス・ロイス共通の特徴。動き出す瞬間に、駆動系から金属パーツに起因するいっさいのショックを感じさせることなく、「ヌルッ」と動き出す様子も、私が知っているロールス・ロイスとなんら変わらない。

 クルマがギリギリ1台通れるホテルの狭い取り付け道路を走っていても、なんの不安を感じさせないところも、いかにもロールス・ロイスである。スペクターの全幅が2080mmであることを考えると、驚異的といっていい。ドライバーの視点が高めでボディの見切りがいいうえ、意外にもステアリングが正確なことが、狭い道でも安心して走れる最大の理由である。

 スペクターに限らずロールス・ロイスのハンドリングはつねに正確だ。ステアリングホイールはやや大径でグリップは細いが、そのステアリングからは遊びのたぐいが一切感じられない。ドライバーの意図を常に正確に読み取ってくれる。長らくショーファードリブン用と思われてきたロールスロイスだが、少なくとも近年のモデルに限っていえば、オーナー自らがステアリングを握っても十分に楽しく、また安心してドライブできるラグジュアリーカーに仕上がっている。

 通りに出てから、少しだけスロットルペダルを強く踏み込んでみる。そんなときの、加速の様子も威厳と上品さを伝える。さすがロールス・ロイス。BEVだからといって刺激的な加速感を強調するメーカーとは、クルマに対する意識が根本的に異なるといっていいだろう。

 そう、ロールス・ロイス初のBEVであるスペクターは、何から何までロールスロイスそのものだった。タウンスピードで段差を乗り越えてもコツリという感触しか伝えず、車速を上げるとフラットに変化。大きなうねりを乗り越えてもボディの上下動は心地よく一発で収まる。「魔法のじゅうたん」と称されるその快適な乗り心地はこのスペクター・プロトタイプでもまったく変わりなかった。圧倒的に優れた静粛性はもちろん、普段は穏やかな反応しか示さなくても、その気になれば分厚いトルクを滑らかに生み出すパワートレーンの印象も、ロールス・ロイス独特の味わいである。

 BEVらしさを実感させるのは、追越加速でフルスロットルにしても、あのV12エンジン独特の低く、くぐもったサウンドがいっさい聞こえなかったこと。そしてシフトレバー上のBモード・スイッチを選ぶと、より強い減速感が得られるだけでなく、スロットルペダルから足を離すだけで完全停止できる“ワンペダル・ドライブ”が盛り込まれていた程度。それ以外は、まさに従来どおりのロールス・ロイスである。

顧客最優先。スペクターは綿密なマーケティングで個性を決定

 従来のロールス・ロイスとの違いがほとんど見当たらないのは、デザインについても同じ。直線的なファストバックデザインが印象的な2ドアクーペボディはレイスを想起させる。パンテオンと称されるフロントグリルも伝統のデザインをそのまま受け継いでいる。

 広々としたキャビンが贅沢なレザーとウッドに覆われ、フロアに分厚いカーペットが敷き詰められている点もロールス・ロイスの文法どおり。満天の星空を思わせる無数のLEDライトが天井に散りばめられているのも、オーナーにはお馴染みの光景だろう。

 なぜ、ロールス・ロイスは既存の製品の延長線上にあるBEVを開発したのか?

「顧客がそれを求めたから」というのが、最も適切な答えに違いない。ロールス・ロイスは、意外にも顧客との距離感が非常に近いメーカーのひとつ。それは、顧客の絶対数が決して多くないからこそ可能なことでもあるが、市場の統計的な平均値ではオーナーの顔が浮かび上がってこないからである。

 CEOのトルステン・ミュラー-エトヴェシュを始めとする同社首脳陣は、定期的に顧客と面談しているという。そうした手間のかかるマーケティング調査から浮かび上がってきたのが、「ロールス・ロイスの価値をすべて受け継いだ新しいBEV」だった。

 ちなみに、顧客の多くはテスラなりポルシェ・タイカンなりをすでに所有していて、自宅には充電ボックスを備え付けているケースが大半という。つまり、BEVの長所も短所もよく承知したうえで、ロールスロイスのBEVを所望しているのだ。

 BEVでよく話題になる航続距離も、そうした顧客たちには何の障害にもならない。ちなみにスペクターは約520kmの航続距離を実現しているが、もしも本格的に遠出するなら、もっと足の長い別のクルマで出かければいいだけ。彼らにとって、500kmは十分すぎるスペックなのである。

ロールス・ロイス・スペクター主要諸元

グレード =スペクター(プロトタイプ)
全長×全幅×全高=5453×2080×1559mm
ホイールベース=3210mm
車重=2975kg
モーター最高出力=430kW
モーター最大トルク Nm=900Nm
バッテリー電力=92.5(使用可能電力83)kWh
一充電航続距離(WLTPモード)=520km
電力消費率(WLTPモード)=21.5kWh/100km
CO2排出量=0g/km
乗車定員=4名
0→60mph加速=4.4秒
0→100km/h加速=4.5秒

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みんなのコメント

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  • 殆ど無音で低重心、高トルクのパワートレインをもつロールス・ロイス・スペクターは、ロールス・ロイスの本当のすごみを味わえることになるのかもしれませんね。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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