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悪夢再び……トップ走行のKeePer TOM’S GRスープラを襲った不幸な2つのアクシデント【第1戦岡山GT500決勝】

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悪夢再び……トップ走行のKeePer TOM’S GRスープラを襲った不幸な2つのアクシデント【第1戦岡山GT500決勝】

 33周目のピットインが37号車KeePer TOM’S GRスープラの運命を一転させるきっかけになってしまった。スーパーGT第1戦岡山の決勝、37号車は代役の阪口晴南が予選ポールポジションを獲得してスタートからトップを守り続けたが、33周目にGT300のマシンがクラッシュしてセーフティカーが予想されるなか、続々とピットインするピットロードの混乱でポジションダウン。後半担当の平川亮が4番手からひとつ順位を上げて3位表彰台を獲得するも、チーム内に笑顔はなかった。ピットでの混乱をきっかけに、2つの致命的なアクシデントが発生したのが要因だった。

 レースの3分の1を過ぎ、ドライバー交代が可能な状態でのコース上でのクラッシュだったことから、GT500クラスでは上位を走行していたブリヂストンタイヤのGRスープラ勢5台を加えた9台のマシンがピットイン。GT300もほとんどのマシンがピットインし、ピットロードは大混雑になった。

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 37号車KeePer TOM’S GRスープラは事前のミーティングではトップで走行している場合、通常どおりピットロードに平行にまっすぐにマシンを止めてピット作業を行うことを決めていた。だが、いざピットインとなった際、急きょスクランブル用のダイブ方式(斜め止め)に変えることになった。

「ピットロードで『なんでですか!?』と。びっくりしました」と話すのは、第1スティントを担当してトップを守っていた阪口晴南。

 驚いたのは阪口だけでなく、準備を整えていたメカニックたちもポジション変更することになり、いざクルマが止まってからの初動で遅れてしまった。そして、最初のアクシデントが訪れる。

 タイヤ交換、給油、そしてドライバー交代を終えてクルマを一度手押しでバックさせて走り出す際、ギヤがスタックしてしまっていたのだ。後半スティントの平川亮がそのときの状況を振り返る。

「クルマに乗ってピット作業を終えてスタートするときに、なぜかギヤが何速かに入ってしまっていてスタックして、それでギヤが入らずに5秒くらいずっと止まったままになってしまった」
 
 原因はまだ未確定ではあるが、どうやら前半担当の阪口がクルマを降りる際、パドルシフトに触れてしまっていたことが可能性として考えられているようだ。37号車KeePerの山田淳監督が「ステアリングの表示上は入っていたけど、実際にはしっかりとギヤが入っていたわけではなくて中途半端に入ってしまっていた状態のようです」と説明する。

 阪口にとっては混乱のなかでのピットインだったということもあり「降りるときにバトルに当たってしまった可能性があります。正直、僕には自覚はなかったんですけど、ダッシュボードの数字が1ではなかった。僕もその時の状況を鮮明に記憶しているわけではくて、何かしらで当たってしまったのかなと思いますが、自分の反省点です」と阪口。

 37号車がスタックしてる脇を、14号車(ENEOS X PRIME GRスープラ)、36号車(au TOM’S GRスープラ)、そして39号車(DENSO KOBELCO SARD GRスープラ)の3台が通り過ぎ、37号車は4番手にポジションダウンしてコースインすることになってしまう。

 まっすぐのピットインから、斜め止めのダイブ式に変えた理由について、山田淳監督が説明する。

「37号車が前を走っていれば、まっすぐにピットインできると思っていたんですけど、39号車、14号車、36号車も、もうあの状況ではピットインの準備をしないと間に合わない状況でしたからね。ですので、そもそも最初の計画に無理があったのではないかなと思います」と山田監督。

 GRスープラ陣営のなかでもっとも1コーナー寄りのピット割だった37号車KeePerにとっては、まっすぐのピットインを行うには手前の36号車、14号車や39号車のピット前を通らなければいけない。しかし、同時タイミングになれば36号車、14号車、39号車のピット前にはタイヤ、そしてエアガンが置かれて通ることができない。そこで急きょの斜め止めになってしまったのだ。

「岡山の狭いピットロードではクルマが入ってくるスペースがないので仕方がない面があると思います。それでメカニックたちも焦って、初動でエアジャッキを指すまでに時間が掛かってしまったというのはあります。そこは最初に考えていたオペレーション側の考え方が甘かったのかなと思います。最初からダイブで決め打ちにしておけば、また違った展開になったかもしれません」と山田監督。

 普段冷静な平川も、レース直後は感情を抑えきれず、悔しさを見せた。

「14号車のピット作業は速かったので仕方がない部分がありますが、少なくても2位でピットアウトはできたはず。ただ、10秒後ろにいた36号車、39号車に抜かれて、38号車にも危うく抜かれるところだった。前半で頑張ってくれた阪口選手のマージンが全部台無しになってしまって、彼には申し訳ないですよね。代役で参戦してもらって今回のレースで勝てたか勝てなかったかで、これからの人生が変わってしまうことにもなる。昨年の山下(健太)もそうですけど、代役に変な思いをさせてしまっている感じがある」と平川。

 一方の阪口も、チームと平川への責任を感じている。

「一番悔しいのは抜かれてしまったなかでセカンドスティントを走った平川選手だと思います。僕は代役で参戦させてもらって、もちろんチームを責めるつもりはないですし、僕も突き詰めてコミュニケーションを取ることができなかった部分がある。僕を気持ちよく走らせるためにチームが動いてくれて、その部分に時間を費やしてしまった可能性もある。レギュラーだったらそういった作業はなくイレギュラーな場面も緻密にコミュニケーションを取れたかもしれないので、そういう意味では僕にも責任があると思っています」と阪口。

 さらに後半スティントでは、37号車と平川に昨年最終戦を思い出させるような、ふたつ目のアクシデントが発生してしまう。

「満タンにしたはずの燃料がなぜか満タン入っていなくて、後半スティントはずっと燃費走行をすることになってしまいました。昨年の最終戦の件がなかったら今回、ガス欠で止まっていましたね。ちょっと、やるせない。もしかしたらガス欠で止まってリタイアした方が、次の富士でもっと大きなポイントを獲れたかもしれなかった。痛いですね」と平川。

 燃料の件の原因はまだわからない様子。今回は完走できたが昨年最終戦のインパクトが強かっただけに、これからのレースでも気になるところだ。

「GT500の初表彰台でこんなに悔しい気持ちになるとは思ってもいませんでした」と、レースを振り返る阪口。

「レースはトップでしたので自分のペースが作りやすかったですし、気持ちよく走れました。途中、14号車がずっと速くて危ないシーンもあったんですけど、なんとか抑えきることができた。前半スティントを走り切れて自分のレースにも自信が付きましたが、そのあとのピットがすべてだったと思います。その後のレースは楽しめませんでした」と、GT500初表彰台にも笑顔はない。

 一方の平川も「次の富士……今はあまり考えたくないです」と、今季のGT500のチャンピン最有力チームが開幕戦で後味の悪いままサーキットを去ることになってしまった。

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