現在位置: carview! > ニュース > ニューモデル > EVでもポルシェか?「タイカン 4S」雪上テスト! スポーツ走行からドリフトまで試す

ここから本文です

EVでもポルシェか?「タイカン 4S」雪上テスト! スポーツ走行からドリフトまで試す

掲載 更新
EVでもポルシェか?「タイカン 4S」雪上テスト! スポーツ走行からドリフトまで試す

Porsche Taycan 4S

ポルシェ タイカン 4S

EVでもポルシェか?「タイカン 4S」雪上テスト! スポーツ走行からドリフトまで試す

敢えてバッテリーに不利な過酷な寒冷地で試乗

2019年9月のワールドプレミアからわずか1ヵ月、ポルシェ初のBEV「タイカン」にエントリーグレードの「タイカン 4S」が追加された。「ターボ S」や「ターボ」に続く第3のモデルだが、もちろんBEVなので実際にターボチャージャーが付いているわけではないし、またタイカンは全モデル4WDだ。ポルシェを知るユーザーがポジショニングをイメージしやすいようにと、内燃エンジンモデルと同様の名称を使っているという。

タイカン 4Sの国際試乗会の舞台は、フィンランド北部の北極圏にあるレヴィという街だった。ウインタースポーツはもとより、オーロラ鑑賞ができるリゾート地としてヨーロッパ中から観光客が集う。ポルシェとしては、この時期平均気温がマイナス10度を下回る、バッテリーにとって過酷なこの地で実力をアピールする狙いがあったわけだ。

4Sとターボ系との違いは、エクステリアではフロントリップやサイドスカート、リヤディフュザー、サイドミラーカバーの下半分が黒いプラスチックになっているのだが、言われなければ気づかないかもしれない。ホイールも標準は19インチだが、オプションで20や21も選べる。

前後に1基ずつ計2基の永久磁石モーターを搭載

最大の違いは、バッテリーとモーターだ。まずバッテリーはターボ系が93.4kWhの2層構造パフォーマンスバッテリープラス(PBP)を搭載するのに対して、タイカン 4Sは、79.2kWhの1層構造パフォーマンスバッテリー(PB)を標準装備する。これだけで約76kgの軽量化になるという。ただし、4SもオプションでPBPを選択することも可能だ。

モーターに関しては、フロントとリヤのアクスル上にそれぞれ1基ずつ計2基の永久磁石同期モーターを搭載していることや、リヤアクスルに加速と最高速度への要求を満たすために2速のトランスミッションを搭載しているのはターボ系と同一だ。

フロントモーターはターボ系と同様だが、リヤには有効長を80mm短く小型化したものを搭載している。またフロントアクスルのパルス制御インバーターは、ターボSのみ600Aで、ターボと4Sは最大300A、リヤアクスルは全車600Aで作動する。

オプションのPBP仕様は最大571psを誇る

タイカン 4SのPB仕様車の定格出力は435ps(320kW=フロント:150kW+リヤ:270kW)、ローンチコントロールによるオーバーブースト時には最大530psを発揮。一方、PBP仕様車は490ps(360kW=フロント:175kW+リヤ:320kW)で、最大571psとなる。0-100km/h加速は4.0秒、最高速度250km/hは両車共通スペックだ。PB仕様車の航続可能距離はWLTPモードで407km、PBP仕様車は463kmとターボの450kmを超えて、タイカンとしては最長のモデルとなる。

試乗開始時間の午前9時になっても、あたりは真っ暗だ。12月の北極圏は極夜の期間となり、ほとんど太陽がでない。試乗車はフローズン ブルーメタリックのPBP仕様車だった。ガルフブルーに似た新色で、暗闇に薄水色がほのかに光って見える。当日は想定していたほど気温は下がらず、タイカン 4Sのメーター内の外気温度計はマイナス3度を表示していた。タイカンのバッテリーは冷寒地ではヒートポンプ式のサーマルマネジメントを使って充電時に適温である28度を維持する設定になっている。バッテリー残量は90%、走行可能距離は260kmと表示されていた。

最初は一般道を約150km走行するルートだ。オプションの20インチホイールに、タイヤはグッドイヤー製ウルトラグリップというスノータイヤを履いていた。ナビゲーションをセットして出発すると、早々に気づくのは車内がとにかく静かなこと。それだけにスノータイヤの雪をつかむロードノイズが耳につく。重量物であるバッテリーなどを床下に低く敷き詰めて、またターボ系と同じく採用する3チャンバー式エアサスペンションの恩恵もあって、ポルシェの中でも最上とも思える乗り心地を実現している。

ワンペダルモードは無し

地元のクルマの流れにのって、真っ直ぐな道を80~100km/hくらいで走行する。回生に関しては、タイカンにはいわゆる“ワンペダル”モードはない。サーキット走行までを見据えたポルシェの基本的な方針としては、制動はあくまでドライバーの意思によるものでなければならないとし、アクセルを戻すとコースティングし、ブレーキペダルを踏んで初めて回生を行う制御になっている。

とはいうものの、何がなんでもブレーキを踏め!というほど頑なでもなく、補助的な機能としてモニターもしくはステアリングのスイッチで回生の設定を「オン」「オフ」「オート」の3つから選択できる。オンにするとアクセルオフでわずかに回生によるGが発生する。オートはフロントカメラで前走車をモニタリングし、車間距離がつまると回生ブレーキがかかるアダプティブクルーズコントロールのような便利な走行モードだった。

ブレーキペダルを踏んで回生が始まれば265kWの高い回生出力によって、最大で0.39Gもの制動力が発生するセッティングになっている。実際のところ日常走行ではおよそ9割の制動は回生で賄われるためほとんどブレーキを使わないようで、タイカンはポルシェとしては初めてブレーキパッドの交換時期を6年毎と規定したという。

氷点下の中、約2時間走行してバッテリー残量は41%

ドライブモードはもっとも効率重視の「レンジ」モードをはじめ、「ノーマル」「スポーツ」「スポーツ プラス」がある。レンジモード選択時に直線で負荷の少ない状況だと、メーター内のトルク配分を示すインジケーターが100%前輪に移っている場面があった。後で開発担当者に確認したが、レンジモードでは前輪駆動になる場面もあり、そして「スポーツ」もしくは「スポーツプラス」ではより後輪へ多くのトルクを配分する制御になっているという。

氷点下の地で、ワイパーもヒーターも灯火類もすべて使いっぱなしでおよそ2時間、約150kmの走行を終えて、バッテリー残量は41%、走行可能距離は104kmと表示されていた。WLTPモードによる電費の概算はおおよそ3.8~4.5km/kWhなのに対して、この日の数字はおおよそ3.3km/kWh。満充電走行距離は約308kmという計算になった。カタログデータとのギャップは少々あるものの、北極圏でこれだけ走れば日常生活の使用に困ることはないだろう。

到着した場所は、ポルシェのスポーツドライビングの場として世界展開が始まっており、2021年には日本でも開業が予定されている「ポルシェ エクスペリエンス センター」の雪&氷上バージョンである「ポルシェ アイス エクスペリエンス」の会場だった。タイカンのために270kWの急速充電器が用意されており、約23分で80%の充電が可能。午前中に使った分の電力はランチブレイク中のチャージでカバーされた。

装着すべき、エレクトリック スポーツ サウンド

凍結した280ヘクタールもある沼地を中心に、全体で約31万平方メートルもある特設施設には、長いハンドリングトラックや定常円、スラロームなどいくつものコースが用意されている。しかし、まずポルシェがこのコースを自前で用意していることに驚く。

ドライビングプログラムは一般の人も参加可能で、トレーニングレベルに応じて、「アイスフォース」、「アイスフォース プロ」をはじめ、さらにレース参戦するドライバーがさらにスキルを磨くためにカップカーを使ったスペシャルプログラム「アイス カップ」を用意しているという。すでに2020年のプログラムはほぼ完売というのも頷ける。

氷上の特設コースでは「スポーツ プラス」モードで、PSM (横滑り防止装置)のオン/オフを試す。アクセル開度に応じてオプションの「ポルシェ エレクトリック スポーツサウンド」によるモーター音を増幅したような“ヒューン”というサウンドが高まる。

今回の試乗ではあまり意識していなかったけれど、スポーツ走行時には音のインフォメーションが大切なのだと今さらながら気づいた。停車時にもアイドリング音が聞こえ続けているのもなかなか洒落が効いている。

ドリフトをもこなすBEV

しかし、BEVならではのトラクションの立ち上がりのよさは、こういう場面でてきめんに効く。PSMの制御もきめ細やかで出しゃばりすぎることはない。所々、雪がなくなりアイスバーン状態に磨かれたハンドリングトラックでは、オンにしておいたほうが安心して走行できる。

しばらくして氷上に慣れてきた頃には、PSMをオフにして、定常円旋回路でドリフトにトライした。氷上の雪がどんどん磨かれていき、刻一刻と路面状況が変化するなかで、きれいにドリフト状態を維持し続けられるほどの腕前は持ち合わせていないものの、それでもタイミングがうまく合えば想定外のアングルでドリフトをキープしながら、ときに完全にスピンしたと諦めた状況から体制を戻すことも可能だった。

ポルシェのテストドライバーに運転席を譲って手本を見せてほしいとお願いすると、変化する路面に瞬時に対応しながら解説つきで、それはそれは見事な円を描いてくれた。昼の3時すぎだというのにあたり一面はもう真っ暗で、プログラムは終了の時間になった。まだバッテリー残量は半分近く残っている。もっと走り続けていたいと思った。やはりタイカンは紛うことなきポルシェなのだ。

REPORT/藤野太一(Taichi FUJINO)



【SPECIFICATIONS】

ポルシェ タイカン 4S

ボディサイズ:全長4963 全幅1966 全高1379mm

ホイールベース:2900mm

トレッド:前1710 後1694mm

車両重量:2220kg※

モーター:永久磁石同期モーター×2

トランスミッション:前シングルスピード 後2スピード

バッテリー容量:93.4kWh※

最高出力(オーバーブースト時):420kW(571ps)※

最大トルク(オーバーブースト時):650Nm※

駆動方式:4WD

サスペンション形式:前ダブルウィッシュボーン 後マルチリンク

ブレーキディスク(ディスク径):前後ベンチレーテッドディスク(前360mm 後358mm)

ブレーキキャリパー:前対向6ピストン 後対向4ピストン

タイヤサイズ(リム径):前225/55R19(8.0J)後275/45R19(10.0J)

車両本体価格:未定

※パフォーマンスバッテリープラス搭載時

【問い合わせ】

ポルシェカスタマーケアセンター

TEL 0120-846-911

こんな記事も読まれています

”日本とちょっと異なる動き” ホンダ「e:NP2」/「e:NS2」 北京モーターショー2024でEV発表
”日本とちょっと異なる動き” ホンダ「e:NP2」/「e:NS2」 北京モーターショー2024でEV発表
AUTOCAR JAPAN
邪道とされた4シーターモデルが人気爆発!! ロータスに異端児「エラン+2」って知っている?
邪道とされた4シーターモデルが人気爆発!! ロータスに異端児「エラン+2」って知っている?
ベストカーWeb
まわりを巻き込む可能性もあるからヤメてくれ! 元教習所教官が語る「よく見かける」危険運転3つ
まわりを巻き込む可能性もあるからヤメてくれ! 元教習所教官が語る「よく見かける」危険運転3つ
WEB CARTOP
日産、バイドゥと協業 生成AIを用いた新機能を共同開発
日産、バイドゥと協業 生成AIを用いた新機能を共同開発
日刊自動車新聞
MotoGP、来シーズンからロゴを刷新へ。11月に新バージョンをお披露目予定
MotoGP、来シーズンからロゴを刷新へ。11月に新バージョンをお披露目予定
motorsport.com 日本版
RAYS FAN MEETING2024は圧巻の800台エントリー! 新製品も続々と注目のホイールデザインを初展示
RAYS FAN MEETING2024は圧巻の800台エントリー! 新製品も続々と注目のホイールデザインを初展示
レスポンス
ランドローバー、レンジローバー2025モデルの概要を発表
ランドローバー、レンジローバー2025モデルの概要を発表
月刊自家用車WEB
F1コミッション、ポイントシステム変更についての決定を延期。今季スペインGPでの新リヤカメラ導入では合意
F1コミッション、ポイントシステム変更についての決定を延期。今季スペインGPでの新リヤカメラ導入では合意
AUTOSPORT web
ラリー仕様の初代アルピーヌA110を手懐けてみた 求められるは「勇敢さ」 歴史アーカイブ
ラリー仕様の初代アルピーヌA110を手懐けてみた 求められるは「勇敢さ」 歴史アーカイブ
AUTOCAR JAPAN
【MotoGP】ヤマハ、カル・クラッチローによる3回のワイルドカード参戦を発表。イタリア、イギリス、サンマリノを予定
【MotoGP】ヤマハ、カル・クラッチローによる3回のワイルドカード参戦を発表。イタリア、イギリス、サンマリノを予定
motorsport.com 日本版
ホンダ「新型ミニバン」! 斬新「対面シート」&窓なしテールの「次期型オデッセイ」!? “超開放空間”実現の「スペースハブ」実現性は?
ホンダ「新型ミニバン」! 斬新「対面シート」&窓なしテールの「次期型オデッセイ」!? “超開放空間”実現の「スペースハブ」実現性は?
くるまのニュース
ランボルギーニのSUV『ウルス』に800馬力のPHEV登場…北京モーターショー2024
ランボルギーニのSUV『ウルス』に800馬力のPHEV登場…北京モーターショー2024
レスポンス
タフでおしゃれなアウトドア派クロスオーバー スマート「#5」初公開 年内市販化予定
タフでおしゃれなアウトドア派クロスオーバー スマート「#5」初公開 年内市販化予定
AUTOCAR JAPAN
もしや新型CX-5か!?  パキパキボディがイイね!!  しかもディーゼル廃止で全車電動化か!?【北京ショー】
もしや新型CX-5か!?  パキパキボディがイイね!!  しかもディーゼル廃止で全車電動化か!?【北京ショー】
ベストカーWeb
日産R35「GT-R」にコスパに優れた本格派ブレーキローターが誕生! 12ミリと14ミリのハブボルトに対応したスグレモノでした
日産R35「GT-R」にコスパに優れた本格派ブレーキローターが誕生! 12ミリと14ミリのハブボルトに対応したスグレモノでした
Auto Messe Web
トヨタ、テンセントと提携 AI技術生かしたサービス提供
トヨタ、テンセントと提携 AI技術生かしたサービス提供
日刊自動車新聞
ホンダ『イエ GTコンセプト』が初公開、4ドアクーぺEVで中国トレンドに真っ向勝負…北京モーターショー2024
ホンダ『イエ GTコンセプト』が初公開、4ドアクーぺEVで中国トレンドに真っ向勝負…北京モーターショー2024
レスポンス
バイクニュース今週のダイジェスト(4/22~26)
バイクニュース今週のダイジェスト(4/22~26)
バイクブロス

みんなのコメント

この記事にはまだコメントがありません。
この記事に対するあなたの意見や感想を投稿しませんか?

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

1370.03132.0万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

799.02680.0万円

中古車を検索
タイカンの車買取相場を調べる

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

1370.03132.0万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

799.02680.0万円

中古車を検索

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離(km)

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村