競技としてのドリフトは面白い
レーシングドライバーであり自動車評論家でもある木下隆之が、いま気になる「key word」から徒然なるままに語る「Key’s note」。今回のキーワードは「競技としてのドリフト」についてです。多くの大会が開催されるほど人気となっているドリフト。今では専用開発されたマシンで激しいバトルを繰り広げています。今回、最新の競技用ドリフトマシンに試乗。迫力の走りを体感した印象を語ります。
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足まわりの大幅加工でスピンすることなくドリフトが決まる!
競技としてのドリフトをご覧になった方は少ないかもしれませんが、派手な白煙をもうもうと上げ、マシンを激しくスライドさせながら走るシーンを、写真や映像などで目にしたことはあるかもしれませんね。
ドリフトはかつてはドライビングテクニックのひとつでした。遠心力に負けたマシンは激しく横滑りすることがあります。その時に、ステアリングを進行方向とは逆の向きにあてる、いわばカウンターステアをあてながらスピンしようとするマシンを抑え込むためです。それは速く走るためには欠かせないテクニックであり、危険を回避するためのひとつの技とも言われていました。
ですが近年、その派手なスライド姿勢が興奮を誘うことから、ドリフトが競技として成熟していくことになりました。いかにそのスライド状態を高い速度で維持するかを競うようになり、いまにもスピンしそうな姿勢に持ち込むことで観客をハラハラさせ、その状態で駆け抜けることが、ドリフト大会で勝利するために欠かせない要素になったというわけです。
そのために、ドリフト専用車が開発されるようになりました。駆動輪であるリアタイヤを激しく空転させる必要があることから、エンジンパワーを高めます。ドリフト競技の上位マシンは、およそ1000馬力ほどを絞り出すと言われています。
そしてもっとも肝心なのは、フロントタイヤの切れ角を増やすことです。大きくマシンをスライドさせ、ほとんどスピン寸前な姿勢にまで追い込んでも、それでもスピンさせないためには、フロントタイヤのカウンターステアの量を増やす必要があります。
サスペンションアームのひとつであるナックルアームなどを改造し、ほとんどタイヤが外れてしまっているのではないかと錯覚するほどに切れ角を増やすのです。それによって、カウンターステアをあててさえいればスピンしにくいマシンになるのです。改造をしていない一般のクルマでは、あそこまで激しくスライドした状態を維持することは困難ですね。
国内には、コーナー入り口から「後ろ向き」で進入するテクニックを披露するドライバーもいます。もちろんバックギアを使って後進するのではありません。驚くほどの速度でコーナーに挑み、スピン寸前の状態を作り出し、その勢いを維持したままコーナーに侵入することから「ケツ侵入」なんて呼ばれてもいます。それはフロントタイヤを改造しているから可能なことなのですね。
じつは僕は先日、このドリフト専用車をドライブする機会を得ました。それはそれは興奮する体験だったのですが、さすがに競技マシンですのでパワーがあります。アクセルペダルを踏み込んだ瞬間にテールがスライドします。そして例のカウンターステアのおかげで派手なドリフトが可能になりました。一度もスピンしなかったのは、ナックルアームが改造されていたからですね。
公道でドリフトすることは褒められたものではありませんが、競技としてのドリフトは面白いものです。自らステアリングを握ってドリフトを楽しんでもらいたいとは思いますが、ハードルが高いことは認めなければなりません。ですが、観戦することはとても簡単です。一度ドリフトイベントを観戦してみてはいかがでしょうか。
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みんなのコメント
ドリキンが審査員、
のむけんがスカイラインに乗ってる時期が
一番面白かったような気もする