9月9日、2024年シーズンのロードレース世界選手権 MotoGPクラスのミサノ公式テストがミサノ・ワールド・サーキット・マルコ・シモンチェリで行われ、フランセスコ・バニャイア(ドゥカティ・レノボ・チーム)が総合トップタイムを記録した。
第13戦サンマリノGPの決勝レースから一夜明け、9月9日の月曜日に引き続き行われたミサノ公式テスト。現地時間9時から12時45分にセッション1、14時35分から18時までセッション2が行われ、長時間に及ぶテストが実施された。しかし、夜通し降った雨の影響でスタートが遅れた上に、路面状況からも開始1時間時点でもコース上にライダーの姿はなかった。
時間が進むにつれ、次第に天候と路面ともに回復へと向かい、徐々に走行を開始するライダーが増え始めた。長時間行われたテストでは、変わらずドゥカティ勢が好調を示し、セッション1ではホルヘ・マルティン(プリマ・プラマック・レーシング)が1分31秒124でトップに。セッション2ではバニャイアが0.505秒上回り、総合トップタイムをマークした。
そんなドゥカティ勢は、バニャイアが主にシャシーを含めた新しいパーツのテストを行っていたようだ。チームメイトのエネア・バスティアニーニ(ドゥカティ・レノボ・チーム)は、黒いカウルのドゥカティ・デスモセディチGPを走らせていた。しかし、今シーズン限りでチームを離れるため、彼の元には新しいパーツはなかったという。
そして、第13戦サンマリノGPで初の表彰台を獲得し、このテストでも総合2番手のフランコ・モルビデリ(プリマ・プラマック・レーシング)は、午後にかけて多くの周回をこなしていた。また、午前のセッションをトップで終えたマルティンも総合6番手となった。さらに、プルタミナ・エンデューロVR46レーシング・チームのマルコ・ベゼッチもトップに10入り。チームメイトのファビオ・ディ・ジャンアントニオは、左肩の痛みがあることから、今回のテストには参加していない。
そして、サンマリノGPで雨を味方に2連勝を飾ったマルク・マルケス(グレシーニ・レーシングMotoGP)は総合7番手、チームメイトのアレックス・マルケスは12番手で終えている。好調なドゥカティ勢は、ドゥカティ・レノボ・チーム以外の3チームには目新しいパーツは特に見受けられなかった。そのため、主にセッティング等に注力を注いでいたと思われる。
午前と午後ともに速さを見せたのは、総合4番手につけたペドロ・アコスタ(レッドブルGASGASテック3)だ。彼の元には異なる仕様のテールユニットや新しいトップエキゾーストなど多くの新パーツが見受けられた。さらに、来季チームメイトとなるブラッド・ビンダー(レッドブルKTMファクトリー・レーシング)とともにテストを遂行していたようで、アコスタがファクトリー仕様のマシンも走らせていたという。
また、ビンダーは第13戦サンマリノGPでワイルドカード参戦したポル・エスパルガロが、テストしていたマシンに乗り込む姿があったようだ。異なる仕様のエンジンとエアロ、エキゾーストなどが搭載されていたとのことだ。最終的に総合10番手につけ、KTMとしては2台がトップ10圏内に食い込んだ。
そして、同じくKTMからはダニ・ペドロサ(レッドブルKTMファクトリー・レーシング)がテストに参加していた。順位的には13番手だが、トップからは1秒以内につけている。また、2025年シーズンはすでにKTMから離脱が決まっているアウグスト・フェルナンデスとジャック・ミラーは、午前と午後に分けて1台のマシンをテストしていたようだ。
さらにトップ5に目を向けると、第13戦サンマリノGPでも初日からアグレッシブな走りを見せていたファビオ・クアルタラロ(モンスターエナジー・ヤマハMotoGPチーム)が名前を連ねている。今季からコンセッション(優遇措置)の対象となる日本メーカーのヤマハ勢は、今までの大会でもすでに多くの新パーツを導入しているが、今回もさらなるアップデートが確認された。
エンジンやシャシーなど新しいパーツが持ち込まれていたようで、ふたりでテストを遂行。クアルタラロは午後のセッションで終盤に自己ベストタイムを縮めて5番手でテストを終えている。チームメイトのアレックス・リンスは16番手となったが、新パーツの感触としては「満足」と口にしていたという。
ここ数戦でやや苦戦気味のアプリリア勢は、アプリリア・レーシングのマーベリック・ビニャーレスが9番手につけ、最多周回となる79周を完了させた。すでにテストライダーのロレンツォ・サバドーリが、ワイルドカード参戦時に2025年におけるパッケージの開発に取り組んでいるが、今回は全体的にセットアップに専念していたとのことだ。
そんなサバドーリは、第11戦オーストリアGPでのレースを終えた時点で、2025年に向けての課題やマシン開発の方向性はすでに見えている語っていた。しかし、ビニャーレスとアレイシ・エスパルガロは、今回のテストでも依然として「ブレーキングの向上が必要」と口にしていたようで、まだ改善を実感できていない様子だ。
さらに、サバドーリの元にはドルナ関係者の姿も多くあった。ヘルメットにマイクのようなものをつけているのが確認でき、走行中に無線配信のテストを行っていたのではないかと思われる。F1などでも採用されているレース中における無線の配信が、今後はMotoGPの生中継中にもライダーの生の声が聞けるようになるのかもしれない。
また、同じくアプリリア勢のトラックハウス・レーシングは、ラウル・フェルナンデスの元にはRS-GP23とRS-GP24の2台が持ち込まれていた。さらに新しいパーツもテストしていたとのことで、感触が良かったのか総合11番手につけた。チームメイトのミゲール・オリベイラは、現状あるパッケージの改善に務めながら66周をこなしていた。
そして、ヤマハと同じく2024年からコンセッション(優遇措置)の対象とされているものの、いまだ厳しい状況から抜け出せないホンダ勢の元にも、多くの新パーツが見受けられた。まずは、サンマリノGPで体調不良からふたり揃って欠場となったレプソル・ホンダ・チームは、ジョアン・ミルとルカ・マリーニが復帰し、テストに参加。
ミルの元にはサンマリノGPでワイルドカード参戦したステファン・ブラドルのものも思われるマシンが1台追加され、計3台のマシンがピットに置かれていたという。しかし、体調がまだ万全ではなかったようで、マリーニにテストを任せ、ミルは自分のマシンで周回を重ねていた様子。周回数はふたりとも53周と決して多くはないが、テストメニューを順調にこなしていた様子だ。
そして、ヨハン・ザルコ(カストロール・ホンダLCR)の元には新しいサイドフェアリングが用意されていた。こちらはミルがあまり良い印象を持っていなかったというが、ザルコは対照的に前向きなコメントを口にしていたという。また、日本勢の中上貴晶(ホンダ・イデミツLCR)は、カーボン調のホンダRC213Vをライドしていた。
順位を見ると、あまり変化がないという印象も持ってしまうが、テストということもあり、ホンダ勢の真の戦闘力は反映されていないと言って良いだろう。このミサノではプライベートテストも何度か行っており、今回の公式テストでもさらにテストメニューをこなした彼らの戦闘力は、次戦のエミリア・ロマーニャGPで明らかとなるだろう。どこまで改善できるか、気になるところだ。
そんな第14戦エミリア・ロマーニャGPは、1週間のインターバルを挟んで9月20~22日に同地のミサノで開催される。2戦続けて同じ舞台でのレースとなるが、今回のテストを経て各チーム、メーカーがどのような走りを披露するだろうか。
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常に 真の戦闘力を、出し切らなければ 成長は無い