■「ヴァンテージ」とは、強化されたパフォーマンスを示していた
2020年、アストンマーティンの「ヴァンテージ」ファミリーが70周年を迎えた。そこで、初期の「DB2ヴァンテージ」から、アストンマーティンのアイコンともいえるDBの名を冠するヴァンテージを5車種紹介しよう。
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●DB2ヴァンテージ仕様
アストンマーティン・ブランドにヴァンテージというモデル名が登場したのは1950年。この年、「ヴァンテージ仕様」のアストンマーティン「DB2」がデビューした。
当初、ヴァンテージというモデル名は、強化されたエンジンを搭載したバージョンという意味で使われていた。DB2の場合は、ラゴンダ製2.6リッター・エンジンに大径SU HV6キャブレターが組み合わせられ、8.16:1という高い圧縮比であった。
こうした強化策により、最高出力は、標準バージョンのDB2の約105psから、127ps/5000rpmへと大幅に引き上げられた。
クーペ(当時アストンマーティンではサルーンと呼んでいた)およびオープンクーペ・バージョンが設定されたDB2ヴァンテージ・バージョンは、ミドルセックス州フェルサムにあったアストンマーティン工場で製造、総生産台数は250台以下だが、今日でも数多くのDB2ヴァンテージ・バージョンが走行可能な状態で保存されている。
初期のヴァンテージ・プログラムには、アストンマーティンに在籍する数多くのエンジニアおよびデザイナーが参加している。アストンマーティン・ヘリテージトラストのアーカイブに保存されている、バルブタイミングの試験に関する技術論文によれば、その当時、有名なレーシングカー・デザイナーであったロバート・エベラン・フォン・エベホルストがプロジェクトを統括していることがわかる。
彼は、アストンマーティン「DB3」および「DB3S」の設計も担当し、それ以前には初期のアウトウニオン・チームの設計者としても優れた手腕を発揮した人物だ。
1951年に英国のアールズコートで開催されたモーターショーにおいて、アストンマーティンが作成したプレスリリースには、ヴァンテージの違いについて、次のように記されている。
「1951年のアールズコートには、2台のアストンマーティンDB2サルーンが展示されます。1台は通常のエンジンを搭載していますが、もう1台は昨年と今年のル・マンにおいて高い信頼性を実証した『ヴァンテージ』エンジンを搭載しています」
強化されたパフォーマンスを示す「ヴァンテージ」という名称は、当時のスポーツカー愛好家の間で次第に浸透していくことになる。しかし、さらに洗練された次世代のヴァンテージモデルが登場するまでには、さらに10年の歳月が必要であった。
●生産台数_248台(クーペ/オープン・クーペ)
●DB4ヴァンテージ
「DB4ヴァンテージ」は、1961年に発表された「DB4シリーズIV」の生産開始時にデビュー。このモデルが、ヴァンテージの先駆けとなったDB2ヴァンテージと異なる点は、技術面だけでなく、デザイン面においても「標準バージョン」とは異なっていた点である。
このモデルにおけるヴァンテージの違いとは、SU HD8キャブレターを2基から3基に増設し、大径バルブを採用したシリンダーヘッドと、より高い圧縮比を備えたスペシャルシリーズ・エンジンが搭載されていたことだ。
しかし、シリンダーブロックは標準バージョンのものを採用し、最高出力は270psを発生。このパワーは標準バージョンのDB4が搭載していたタデック・マレックの設計によるアルミニウム製直列6気筒エンジンが発生した243psから、約10%強化されていた。
デザインの観点から見ると、DB4ヴァンテージの違いは、小さいながらも明確に区別されている。「DB4 GT」に採用されたフェアリング付きのヘッドライトには、光沢アルミニウムのトリムが組み合わされていた。
1962年には、DB4ラインナップの最終シリーズとなる、車内スペースが拡大された「DB4シリーズVヴァンテージ」が投入された。これは、ヴァンテージバージョンがさらに強化されたというだけでなく、映画『007ゴールドフィンガー』に登場した点でも重要な意味を持つ1台だ。
DB4シリーズVヴァンテージは、スタイル面においては後継モデルとほとんど区別することはできないが、世界でもっとも有名なスパイが乗ったことで一躍有名になった。
事実上の「DB5」プロトタイプとなったDB4シリーズVヴァンテージは、映画で登場する「ボンドカー」のベース車両として使われている。バッキンガムシャーに建設された新しいニューポートパグネル工場で製造されたこのクルマの製造台数は、わずか135台前後だ。
さらに希少なモデルを求める人は、オプション設定されたDB4 GTエンジンを搭載した「DB4ヴァンテージ」に魅力を感じるかも知れない。なぜなら、その生産数はわずかに6台だけという、超希少モデルなのだ。
●生産台数_DB4ヴァンテージ:135台/DB4 GTヴァンテージ:6台
■時代とともに、意味を変えていった「ヴァンテージ」
DB4シリーズVヴァンテージが、ボンドカーとして採用されたアストンマーティンは、DB5、DB6へとヴァンテージをアップグレードしていく。高性能なエンジンを搭載したヴァンテージは、英国流アンダーステイトメントな装いをまとった、まさしく「羊の皮を被った狼」であったが、1970年代に入ると、オイルショックや新排ガス規制などにより、北米での販売がストップした不遇の時代に見舞われる。
この辛い時代をヴァンテージはどのように変遷していったのだろうか。
●DB5ヴァンテージ
1964年に「DB5」が発表されたとき、当然のことながら、高性能モデルのヴァンテージバージョンもすぐに登場すると思われた。しかし意外なことに、オプションのヴァンテージエンジンを搭載したDB5サルーンの生産台数は、887台のうちわずかに68台に留まった。
ヴァンテージバージョンは、ウェーバー製トリプルキャブレターを採用し、最高出力が標準バージョンよりも41ps高い330psを発生した、4.0リッター・エンジンを搭載していた。
ヴァンテージエンジンを搭載した「DB5コンバーチブル」はさらに希少なモデルとなっており、製造された123台のうち、わずか8台に過ぎない。その後、数多くの標準バージョンがヴァンテージバージョンに改造されたなかで、DB5ヴァンテージおよびDB5ヴァンテージ・コンバーチブルのオリジナル車はきわめて希少な存在となっている。
1965年のジュネーブモーターショーで世界のメディアに向けて発表されたプレスリリースでは、DB5ヴァンテージの魅力を簡潔かつ控えめに次のように表現している。
「さらなるパワーにより、強烈な加速とより高い平均巡航速度を実現しています」
DB5ヴァンテージは、当時としては高価なクルマで、パワーユニットのアップグレードには、車両代金とは別に158ポンド(消費税抜き)が必要で、1965年時点での価格は税込で4439ポンド15シリング5ペンスに引き上げられた。
●生産台数_DB5ヴァンテージ:68台(クーペ)
●DB6ヴァンテージ
DB5ヴァンテージの後継モデルとなる「DB6ヴァンテージ」は、Mk IとMk IIバージョンが用意され、パワフルな先行モデルと同様、高い信頼性を確立したアップグレード方式が採用された。
DB5ヴァンテージと同様、エンジンは4.0リッター直列6気筒で、出力も同じ330ps。DB5に初採用された、サイドストレーキのヴァンテージエンブレムも踏襲されている。このエンブレムは、小さいながらも重要な意味を持つものだった。
オリジナルのヴァンテージエンジンを搭載して送り出されたDB6の生産台数は何百台ではなく何十台の単位のため、その希少価値は極めて高く、現在世界中のオーナーによって大切に保管されている。
●生産台数_DB6ヴァンテージ:335台(クーペ)、29台(ヴォランテ)/DB6 MkII:70台(クーペ)、13台(ヴォランテ)
●DBSヴァンテージおよびAMヴァンテージ
DB4、DB5そしてDB6に至る一連の流れがアストンマーティンによるデザインの「進化」を物語るとすれば、1967年に登場した「DBS」は真の「革命」といえるモデルだった。
このクルマの角張ったモダンな形状を生み出したのは、当時アストンマーティンに若手のインテリア・デザイナーとして在籍していたウィリアム・タウンズである。このオリジナリティ溢れるボディに収まっていたのは、その当時の定番ユニット、タデック・マレックが手がけた6気筒3995ccエンジンで、DB6と同様に標準バージョンとヴァンテージバージョンが設定された。
当初の計画では、新開発のV8エンジンを搭載する予定だったが、開発が間に合わず6気筒エンジンが搭載された。
DBSの増加した重量に対応するため、ヴァンテージバージョンはカムシャフトの設計を見直し、パフォーマンスが向上している。
1972年4月、それまでの4灯式ではなく2灯式のヘッドライトを備えた新バージョンのDBSが登場。このモデルは、AMヴァンテージと名付けられ、70台が製造された。興味深いことに、このクルマは、過去のヴァンテージの血統に反し、そのラインナップにおいて最もパフォーマンスの低いバージョンとなった。
●生産台数_DBS:290台(クーペ)/AMヴァンテージ(6気筒):70台(クーペ)/372台(クーペ)、194台(ヴァンテージ・ヴォランテ)
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