■新型はディーゼルのみ!? ガソリンは旧型を継続販売
近年、三菱の販売主力モデルといえば、「アウトランダー」と「デリカD:5」です。「アウトランダー」は2012年にフルモデルチェンジを実施し、2015年にはフロントデザインを、2018年にはパワートレインも大幅改良を実施しています。しかし、現行型「デリカD:5」は、5代目モデルとして2007年にデビューし、現時点で発売開始から約12年を迎え、大きな改良は行っていませんでした。
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一般的な国産車のモデルライフは4年から6年ですので、三菱「デリカD:5」の12年はかなり長い部類に入ります。モデルライフが長いと、大きな変化がない限り販売台数は減少するのが一般的です。しかし「デリカD:5」は、現在でも月間に1000台ほどを販売する人気モデルなのです。そこで『売れ続ける理由』を三菱の「デリカD:5」開発主任 尾崎氏に尋ねてみました。
「まずデザインが古臭くならず、飽きが来ないことが理由だと思います。さらに国産ミニバン唯一のディーゼルエンジン搭載車という部分も大きいです。あとは、唯一無二のコンセプトでしょうか。ミニバンとSUVの良さを兼ね備えている『オールラウンダーミニバン』ということが、ほかのミニバンやSUVとの差別化を図っている部分として、売れ続けている要因だと思います」
そう話した尾崎氏ですが、売れ続ける理由にあげた三菱「デリカD:5」の飽きの来ないデザインにあえて12年ぶりにメスを入れました。ビッグチェンジを実施した三菱 新型「デリカD:5」はどのような進化を遂げたのでしょうか。
マイナーチェンジ後の新型「デリカD:5」は、標準車となる「デリカD:5」とプレミアム感漂う外観の派生車「デリカD:5 アーバンギア」という2つのタイプを用意します。パワートレインは、2.2リッターディーゼルエンジンに新開発8速ATを組合せた仕様のみの展開となり、従来設定されていたガソリンエンジンモデルは、旧型車(改良前モデル)のラインナップとして継続販売するとのことです。
外観上の変更点でとくに目を引くのが、フェイスデザインの大幅変更。フルモデルチェンジなどで、大きくデザインを変えることはありますが、“ビック”とはいえマイナーチェンジでの変更は稀と言えます。なぜ飽きの来ないデザインに手を入れたのでしょうか。
新型「デリカD:5」のデザインを担当した大石氏は、「独自のオールラウンドミニバンの特徴を継承し、上質感を高めることを目指しました。フロントデザインは、旧型の“唯一無二のSUVミニバン”という部分は継承しつつ、SUVの力強さを高めるため、三菱のデザインコンセプト『ダイナミックシールド』をもとに、特徴的な縦型LEDヘッドランプを採用するなど、ライトまわりの部分はかなり力を入れました」と話します。
■要望多いPHEVや新型モデル、そして日産アライアンスの行方は?
今回の改良で上質さやラグジュアリー性に力を入れた意図については、「現行ユーザーからの評価や要望として、『悪路走破性』『安定性』『運転のしやすさ』は好評を頂いていました。しかし『質感』の向上を求める声も多くありました。
また、デリカD:5は独自のポジションを築いていましたが、アウトドア色が強くユーザーを限定してしまっているという一面もあったため、商品力強化の一環として『外観リフレッシュ』と『個性の進化』、『内外装の質感向上』を目標として大幅改良しています」(商品企画担当の渡邉氏)
ビッグマイナーチェンジ後の改良モデルには、アウトドアイメージのみならず上質感を加えた派生車「アーバンギア」を新設定し、よりフォーマルで都会的な方向へ進化させ、“人生を楽しむことに積極的なアウトドア志向のオールラウンドミニバンを好む層”をターゲットとした新たなマーケットを開拓していくとしています。
三菱は「アウトランダーPHEV」という優れたプラグインハイブリッド車をラインナップしています。近年の災害時にも電力供給などで大きく活躍するなど、アウトドア好きが多い「デリカD:5」にもPHEV車の設定を要望する声は多いといいます。
しかし、今回の大幅改良ではPHEVに関する話は出ませんでした。「デリカD:5」の電動化について、前出の尾崎氏は「PHEVの要望があるのは理解しています。しかし、基本設計やバッテリースペースの関係で現行型では難しい部分があります。また、いまの『アウトランダー』に搭載しているようなシステムを『デリカD:5』に組み込むと価格面や重量面で合わないこともあり、今回は踏み込めませんでした。それでも、世の中の流れが電動化に向いているので、継続検討はしていきたいです」
ルノー・日産とアライアンスを組んだことから、次期型は日産「エルグランド」と共通化されるのではないかとの噂も出ています。この件についてズバリ踏み込んで聞いてみると、「新型モデルについては、“やりたいな”“やらないといけないな”という感じです。アライアンスに関しては、具体的な話は出ていません。仮に「エルグランド」と共通化するとすれば、コンセプトが違うので『デリカ』の味や良さが作り出せないと思います」(尾崎氏)と説明してくれました。
※ ※ ※
ビッグマイナーチェンジを遂げた新型「デリカD:5」。従来の唯一無二なコンセプトやポジションを維持しつつ、新たなユーザーを確保していくにはさまざま意見が出ることが予想されます。しかし、ブランド復権や将来的な技術革新のために「デリカD:5」は三菱の大切な1台というのは間違いないようです。 【了】
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