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フェラーリ新型「12チリンドリ」に乗った!「これほどシルキーなV12は初めて!」エンジンフィールもコクピットもすべてがラグジュアリーの極み

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フェラーリ新型「12チリンドリ」に乗った!「これほどシルキーなV12は初めて!」エンジンフィールもコクピットもすべてがラグジュアリーの極み

ルクセンブルクでフェラーリ新型「12チリンドリ」に試乗

V12自然吸気エンジンをフロントミドに搭載したフェラーリ新型「12Cilindri(ドーディチ チリンドリ)」に自動車ライターの西川 淳氏がルクセンブルクで試乗しました。見た目のイメージと走りの質感との辻褄が合った、ラグジュアリー感に満ちたフェラーリの新型フラッグシップGTの走りをお伝えします。

フェラーリ新型「12チリンドリ」を発表前にマラネッロで見た印象とは? 価格は6650万円から「デイトナ」オマージュに見えてもいいじゃない

“選ばれし者たち”のコクピット

フェラーリの新型フラッグシップGT、「ドーディチ チリンドリ」の国際試乗会がルクセンブルクで開催された。ルクセンブルクというと小さいけれど“お金持ちの国”なイメージ。なるほど欧州のど真ん中にあって跳ね馬が似合いそうな国のひとつかもしれない。けれども試乗会の場所として選ばれた理由はそれだけじゃなかった。じつはルクセンブルク北部にはグッドイヤータイヤのプルービングコースがある。ドーディチ チリンドリではミシュランに加えて久々にグッドイヤー イーグルF1も装備されるのだった。

屋外で初めてドーディチ チリンドリを見る。812系とはまるで違って、その雰囲気はラグジュアリー感に満ちている。乗り手を全く煽ってこない。性能剥き出しのパフォーマンスカーとは一線を画している。

それにしても前から見た姿にはやっぱり往年の名車デイトナのモダン版という香りがふんぷんだ。一方でリアからの眺めは相当に新鮮。このクルマを追いかけるドライバーはしばらく呆気にとられてしまうに違いない。

試乗会の日は朝からあいにくの雨。9月の中旬だというのに冬のように寒い。最高気温は12度だった。幸運にもスタートするころには雨も止んでいた。寒さから逃げるようにして乗り込めば、そこには豪華な空間が広がっていた。

「ローマ」「プロサングエ」と続くデュアルコクピットスタイルが完成形に達している。ほぼシンメトリーにコクーンタイプのシートが左右に並んで、エクステリアとイメージを関連づけたデルタウイング形状のフローティング風ブリッジがその間を繋ぐ。これぞ“選ばれし者たち”(for the Few)のコクピットだ。

エンジンフィールまでもがラグジュアリー

ルクセンブルクのとある田舎町を走り出した。街中を流しての第一印象はプロサングエよりはるかに乗り心地が良いということだった。それはとりもなおさずマラネッロ史上で最もコンフォートなクルマに認定していいということ。要するに街中でのドライブフィールは内外装のラグジュアリーな雰囲気と見事に連動しているのだ。そんな印象はカントリーロードやちょっとしたワインディングロードに入っても変わらない。

ドライバーをむやみやたらとは煽らない、とでも言おうか。そんな跳ね馬もまた初めて。見た目のイメージと走りの質感との辻褄をきっちり合わせてきたあたり、マラネッロのエンジニアはやはり超マジメというべきだろう。

その間、かのV12エンジンはノーズの先で静かにいななくばかりだ。型式名F140HD、「エンツォ・フェラーリ」から続くV12NAの系譜に連なる新設計エンジンである。完全フロントミドに搭載され、総排気量は6.5Lで最高出力830ps/9250rpm、最大許容回転数9500rpmといったスペックはベースとなった「812コンペティツィオーネ」用F140HBエンジンと全く同じ。ただし最大トルクは678Nmと若干下げられた。その代わり発生回転を7250rpmと250rpmあげてHBと同じ馬力を稼いだわけだ。ユーロ6をはじめとする排ガスや音の規制対応のため、主に排気系を再設計したことが影響している。

そんなF140HDエンジンのフィールはというと、これがもうウルトラ・シルキーだった。回転フィールが最高にラグジュアリーなエンジンなのだ。とにかく9000回転までよどみなく回っていく。サウンドは当然のことながら勇ましく官能的ではあったけれども、爆音ではない。回転を増すごとに存在感を醸すエンジンサウンドは、それでも程よいBGMレベルを保つ。もちろん、ドライバーの気分を大いに盛り上げつつ……。

バイブレーションを感じさせない乗り心地

最も驚いたことといえば、9000回転以上まで回っているというのに、乗り手はパワートレインから全くもってバイブレーションを感じなかったことだ。まるでロータリーエンジンか電気モーターのよう。ドライブモードによるが、変速ショックも見事に抑えられていた。変速タイミングそのものは呆れるほど早く、シームレスなのだ。

エンジンとトランスミッションの存在感が、こと振動という点で見事に抑えこまれていた。本当に12気筒なのか? いや、12気筒だからこそだ。そんなふうに思考が堂々巡りする。かつてこれほどまでに優雅で、官能的で力強く、そしてなめらかに回る12気筒エンジンがほかにあったであろうか。

サーキットもよくこなす。特上のスポーツカーである。けれども本質的には街中と高速道路を得意とするGTだろう。それゆえとにかく刺激的な走りを求めたい向きには、オススメできない。否、そんなモデルならもうすでにガレージにあるんだ、という方にこそ勧めたい。ひょっとするとそんな実用的な跳ね馬という意味では、プロサングエがライバルになるかもしれない。ドア数と後部座席、高い視線、そして最低地上高という大きな実用上のメリットにさえ目をつぶっていただければ、ドーディチ チリンドリにも十分に勝機があると思った。

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