スーパーフォーミュラの2024年シーズン最終戦である第9戦鈴鹿。タイトル争いは予選3番手に入った坪井翔(VANTELIN TEAM TOM’S)が圧倒的優位な状態となっており、その苛烈さはやや落ち着いたように見える。しかし、その坪井が出席した予選トップ3会見では、彼の傍らにいるふたりのドライバーが静かに火花を散らしていた。
そのふたりとは、野尻智紀(TEAM MUGEN)と太田格之進(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)。彼らの因縁は、前日の第8戦予選で生まれた。
■予選Q1の動きで野尻をいつになく憤慨させた太田格之進。本人は“駆け引き”の範疇との認識「予選なら常に起こり得ること」
第8戦予選の時点で逆転タイトルの可能性を残していた野尻は、Q1のラストアタックに向けたアウトラップで隊列の先頭に立ち、タイヤを温めようとしていた。しかしその後ろにいた太田が逆バンクで野尻を追い抜いた後、速度を落としてペースをコントロールしにかかった。
この煽りも食ってタイヤを温められずQ1敗退に終わり、結果的にタイトル争いからも脱落した野尻は、決勝レース直後も怒りが収まらない様子を見せており、あからさまにペースを落とした太田が「気に入らない」とコメント。一方の太田は、野尻が激烈に怒っていることを知って驚きつつ、予選の駆け引きの範疇だと釈明した。
そんなふたりが一夜明け、会見場で相見えることになった。会見開始直前、野尻は太田の肩に手を置き、比較的和やかな表情で声をかけたように見えたが、太田は「あんなに言われるとは思わなかった」と返答。そこから両者の笑顔が消えた。
会見は、いつにないほど殺伐としており、猛烈な緊張感を漂わせた。
「最終戦でポールポジションは非常に嬉しいのですが、チャンピオンの目がなくなってしまったことがずっと心の中にあります」と語るのは野尻。しかしながら、そんな状況でもファンから励ましの声をもらったことに感謝していると述べた。
そして決勝への意気込みを問われた予選2番手の太田は、「個人的には……そうですね……」と少し言葉に詰まるようになった。そして表情が再び険しくなっていき、言葉を選びながらこう続けた。
「チームタイトルのこともありますが、個人的にはすごく勝って終わりたいです」
「まあ……。なんか、色々言われているんで、クリーンに勝負します」
会見終了後にも、目を合わせることもなかった両者。太田は野尻を避けるかのように歩き、憮然とした表情で会見場を後にした。一触即発の空気を漂わせたふたりが、決勝レースではフロントロウからスタートする。
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