直6&四輪駆動以外でもBMW Mらしい走りを提供する
BMW Mが誕生して50周年を迎える2022年。特別な市販モデルやモータースポーツの新カテゴリー参戦マシンの発表など、世界中から注目を集めています。記念すべき年に、BMW Mの現在と未来について、フランシスクス・ファン・メール代表取締役社長に、気になる電動化の未来や、今後さらに特別なモデルが登場するのかなどお話を伺いました。
BMW「M」は電動化でも刺激的な走りになる! 日本市場の重要性と「M」の現在と未来を語る【BMW M社長独占インタビュー】
電動化が進むなかBMW Mは現時点では内燃機関も継続
──EV化へまっしぐらの今のご時世ですが、BMWグループ代表のツィプセ氏が、今後の内燃機関の開発・製造・販売継続を表明しておられます。支持する声が多く上がっていますが、M GmbHの社長のお立場としてのご意見はいかがでしょうか?
ファン・メール社長:私たちBMWグループの経営方針は正しい方向へと向いていると思います。BMWを販売している世界の国々において、自動車に関する法律や規制はバラバラです。従って、いつ内燃機関が完全に世界中で禁止されるかどうかは、現時点ではまったくの未知です。
従って、もしもEUやドイツの法律、規制で完全EV化になったとしても、他国では内燃機関が継続されている可能性もありますから、BMWやMはこの先も内燃機関の開発・製造・販売は継続していく予定です。BMWのお客さまはドイツだけではありませんからね。世界の顧客のみなさまのことを考えながら、今後の方向性を世界情勢とともに読んでいく必要があるでしょう。
BMWグループが販売する車両も内燃機関からハイブリッド、EVまで幅広く展開しており、顧客のみなさまが望まれるものをご提供させて頂くという信念でおります。決して、BMWがモデルを展開して顧客を導くという形ではあってはいけないと思っています。
BMWのモータースポーツの活動においても、M2 CSレーシングカップ、M4 GT4、M4 GT3、そしてLMDhまでと、レース初心者からワークスプログラムまで幅広いのですが、カスタマーレーシング活動を担うM GmbHではモータースポーツも量販車も幅広い選択肢を顧客のみなさまへ提供させていただけるように体制を整えています。
──北米でMモデルは数多く販売されているそうですね。BMWでは北米でのモータースポーツ活動も非常に盛んですが、レースファンも多いのでしょうか?
ファン・メール社長:Mモデルの世界販売数の半分は北米と言っても過言ではありません。グローバル的に見ても、北米の伸び率は非常に高く、その市場規模は拡大する一方です。
北米といえば、BMWのモータースポーツ活動のかなり多くの部分も占めています。数多くの顧客のみなさんがBMWのレース活動を応援し、その活動をご覧になってMモデルをご購入頂いているのも事実です。ですから、アメリカのIMSAシリーズの参戦はBMWやMにとっても非常に大切であり、力を注ぐべき活動なのです。
社長就任後に印象的なモデルはF1と並走したX5 M
──ところでファン・メール社長はあらとあらゆるMモデルを今までドライブなさったと思いますが、一番印象に残ったモデルはどれでしょうか?
ファン・メール社長:どれも大好きなだけに難しい質問ですね。私がM GmbHの代表となって初めてローンチしたモデルという意味では、2015年初めにアメリカのサーキット・オブ・ジ・アメリカズで発表したX5 Mです。そのローンチでドライブしたドライバーの中のひとりは、元F1ドライバーでBMWワークスドライバーのティモ・グロックでした。
そのプレゼンテーションではF1マシンと私のドライブするX5 Mが並走したのです。X5 MはF1のようなエアロパーツはないものの、F1マシンに劣らずのハイパフォーマンス、そして四輪駆動ということもあり、グリップ力も高くトラクションも抜群です。鋭角なコーナリングも素早く立ち上がり、アメリカのMファンの目の前で魅了できたことは大きな誇りであり、強く印象に残っているモデルですね。
しかし、車高の高いX5 Mが非常に車高の低いF1マシンと並走すると、死角となって全く見えないので、乗り上げて押し潰してしまわないかとヒヤヒヤしましたけどね(笑)。
──BMWといえば、直6&FRというイメージが強く、いまもそれに憧れるファンは多いですが、ここ最近のBMWやMでは四輪駆動のX Drive/M X Driveのモデルが増えてきましたね。
ファン・メール社長:Mモデルに搭載されているのは、M X Driveと言い、これはMで独自に開発されている四輪駆動システムです。ハイパフォーマンススポーツカーのFRは確かに運転していてとても楽しいです。しかし、ウエット路面では、うっかりアクアプレーニングにのってスピンをしてしまう場合があります。FRのヒヤヒヤ感を軽減し、危険な場面でもハイトルクをしっかりと受け止めるのは、単なる四輪駆動ではないM X Driveの特別なところでしょう。
MのFRのフィーリングを大きく損なわず、四輪駆動になることで安定・安全性がさらに高まり、雨や雪の日にも安定感が増します。今後もMモデルでM X Driveを搭載するモデルは増えるでしょう。
Mモデルの歴史を象徴するM3には、根強い人気のマニュアル&FRというBMWの王道的モデルは継続していますが、さらなるトラクション性能を望む方向けにM X Dirveモデルもご用意しています。FR、M X Driveともに、ドライブフィーリングは間違いなしにM3を実感していただけるものです。
今後も特別なMモデルが登場する可能性もある?
──今年はM4 CSLが特別モデルとして販売され、注目を浴びていますが、納車を心待ちにされているファンも多いのでしょうね。
ファン・メール社長:ありがたいことに、予約開始直後に即完売となりました。予約前からもかなり多くのお問合せを頂戴しておりましたが、世界限定1001台とさせていただきました。BMWとしての一番最初のCSLとなった3.0 CSLも当時1001台の限定販売でしたので、歴史を継承する意味で当時をオマージュし、今回も1001台限定となりました。
──2022年はM2 CSやM4 CSLといった特別モデルが登場しましたが、今後の展開として、例えば噂になっているM5ツーリングは期待できますか?
ファン・メール社長:M4 GTSを2016年に発表した際、特別モデルの戦略を立て、M GmbHとしてのトップモデルはCSL、CS、そしてコンペティションと称することに決定しましたので、将来的にも特別モデルを出す際には「CSL」や「CS」の名が与えられることとなります。特別モデルは毎年出すものではありませんが、今年の50周年のように、機会があるごとに発売されるのは間違いないでしょう。
M5 ツーリングですか? あははは、なかなか良い質問ですね。どうでしょうね、出るのか出ないのか、楽しみにしておいてください。
──それでは、最後にBMW M GmbHの代表であるファン・メール社長の愛車はどのモデルなのでしょうか? きっとMファンの方は、社長の愛車がとても気になっているかと思います。
ファン・メール社長:私の愛車はM3コンペティションです! 毎日の通勤がとても楽しめるクルマですよ。じつは、私は6人の子どもを持つ父親でもあり、下のふたりはまだチャイルドシートが必要な年齢です。後部座席には2席のチャイルドシートを装着して子どもを乗せていますが、しっかりと安定していて安心できます。子どもたちもM3でのドライブをいつも楽しみにしてくれていて、ファミリーカーとしてもお勧めです。
※ ※ ※
ファン・メール社長自身が熱狂的なモータースポーツファンというだけあり、サーキットで会う彼は、まるで少年のように瞳を輝かせてレースを食い入るように見守っています。世界中の全BMWカスタマーチームを統括するという立場でありながら、いつも非常に気さくでフランク。つねに顧客目線でドライバーやチーム関係者ひとりひとりに穏やかな笑顔で対応する姿は、過酷な耐久レースを戦う彼らの力になっているに違いないでしょう。
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みんなのコメント
そもそも、全ての国でなんて無理だし車メーカーは車を買ってもらって初めて商売になるわけだから100%なんか無理だし。