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【なぜR360クーペがモチーフに?】きっかけは社会人2年目の社員 マツダ100周年記念車

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【なぜR360クーペがモチーフに?】きっかけは社会人2年目の社員 マツダ100周年記念車

100周年記念車 6月末から納車

text:Kenji Momota(桃田健史)

【画像】マツダ100周年記念車【ディテール】 全183枚

マツダが今年(2020年)4月3日に開始した、マツダ創立100周年の「特別記念車」について、その詳細が明らかになった。

新型コロナウイルス感染拡大の影響を鑑み、6月16日にマツダがテレビ会議システム「ズーム」を使って実施した、オンライン取材会のなかで、マツダ関係者が説明した。

すでにホームページ上で明らかになっているように、受注締め切りは2021年3月31日。

商品本部・本部長の猿渡健一郎氏は「各モデルの計画販売台数はあえて設定していない。今回はお客様へ感謝の気持ちを表すことが第一。お客様がクルマを購入する時期は様々であり、実車をじっくりご覧いただき、購入を検討していただけるように1年間としました」という。

販売価格の設定については「基本的に、各モデルのLパッケージに対して、プラス約11万円。Lパッケージがないモデルでは、改めてLパッケージを設定した上で、100周年記念車を設定しました」とのことだ。

デリバリー時期については、マツダ2、マツダ3、CX-3が6月末からデリバリーを開始する予定だ。マツダ6については、現時点では注文を受け付けていない。

今回の100周年記念車のモチーフとして、1960年発売のR360クーペを使っている点については、デザイン本部・副部長の中山雅氏が、採用の社内プロセスを説明した。

R360クーペ 若手デザイナーの発案

100周年記念車企画をどのように進めるのか。

デザイン本部の中で、若手を中心にタスクチームを設け、様々な企画を募集した。

様々な種類の歴代マツダ車をオマージュした案があったが、「マツダとしての文化の香りを感じる、R360クーペの題材案に決めました」という。

同案の立案者は、入社2年目の若手。実は、R360クーペの主力となった社員デザイナーも当時、入社2年目という不思議なつながりがある。

企画を具現化する上で、最も重要だったのが色の設定だ。デザインセンター内の倉庫から、当時の資料を探し出したところ、そこには手書きで詳細な記載があった。

ルーフ部分やインテリアに使用した赤っぽい色は、「マーロンルージュ」と表記されていた。また、ボディ色は「アルペンホワイト」

これらの色のイメージを、現在使用している色味を踏まえて検討した結果、ボディ色はスノーフレイクホワイトパールマイカ、そして赤っぽい色はマツダ3から内装色として採用しているバーガンディを用いた。

その他、フロアマットやセンターホイールに、旧東洋工業と現マツダのロゴを融合させた100周年記念社章デザインを描いたほか、同じデザインをヘッドレストに丁寧に刻印している。

マツダのクーペへのこだわり

今回、若手デザイナー案を採用して、R360クーペをモチーフとした100周年記念車となったが、そもそもマツダはクーペへのこだわりが強いメーカーだ。

常務役員でデザイン・ブランドスタイル担当の前田育男氏は「戦後、クーペという呼称で量産したメーカーは、マツダが最初」と、R360クーペの自動車史における重要性を強調する。

その後、ルーチェロータークーペやコスモスポーツなど、洗練されたクーペモデルをマツダは世に送り出している。

また近年でも、魂動デザインの基礎を作ったコンセプトモデル「SHINARI(シナリ)」や、2020年代のマツダデザインの方向性を示す「ビジョン・クーペ」など、クーペはマツダデザインの真骨頂であることが、改めて分かる。

そうしたマツダデザインの資産を、別の形でユーザーに届けるビジネスも始まる。

マツダコレクションの新設である。

これまでも、マツダの関連企業であるマツダエースが、量産車モデルカーなどを製造販売してきたが、マツダコレクションでは本社デザイナーが直接デザインに加わり、マツダミュージアムの実車を計測するなど、マツダとして拘り抜いたかたちで、量産モデルカーなどを企画した。

マツダオフィシャルサイトの中で、6月後半から販売を始める。マツダエース製品も併売していく。

マツダ社員ひとりひとりの思い

マツダコレクションでの量産モデルカーの価格は1万円前後。細部までの徹底して再現している逸品だという。

今回は、100周年記念車のモチーフとなった、R360クーペのモデルカーをオンラインで公開した。その他、Tシャツやマグカップなど6アイテム20種類を取り揃えた。

2020年1月30日、創立100周年を迎えるにあたり、マツダ社員全員が2019年からマツダの歴史を今一度振り返り、いま自分自身が行っていること、そして次のマツダの100年に対してどのように考えていくかを、社員ひとりひとりが考える時間を設けてきたという。

マツダは第二次世界大戦で広島が被災した後、社会貢献のために三輪トラックの製造を進め、さらに人々の生活を豊かにするため、1960年に同社初となる乗用四輪車R360クーペを世に送り出した。

その後、排気ガス規制やオイルショックによるロータリー車の販売不振、フォードの資本参加による人員の大幅削減、さらに販売チャネル多角化の失敗など、紆余曲折を乗り越えて、「飽くなき挑戦」を心の支えとして、マツダらしいクルマ作りを続けてきた。

マツダに携わるひとりひとりの感謝の思いがカタチになった。

それが今回の100周年記念車なのだと、オンライン会見に参加したマツダ関係者の声を聞きながら、そう感じた。

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