新車試乗レポート [2023.03.11 UP]
【フェラーリ プロサングエ】驚きの連続だったイタリアでの試乗体験
文●九島辰也 写真●フェラーリ
フェラーリ ミッドシップベルリネッタの歴史を辿る 注目の中古車も紹介
およそ1ヶ月前、北イタリアへ行ってきました。トレントの北西にあるピンツォーロという街です。フェラーリの本拠地マラネッロから真北にクルマで3時間走ったところにあります。この時期はヨーロッパの至る所からスキーヤーが訪れるエリアですね。周りには標高2000mを超える山もありますから、かなり楽しめそうです。
目的はフェラーリ・プロサングエのテストドライブ。一般道、高速道路、ワインディング、そして雪道をステージとしたメディア向け国際試乗会が行われました。
プロサングエと自動車ジャーナリストの九島辰也氏
実車との対面はジャパンプレミア以来となります。夕刻、京都の仁和寺で行われたそれはとても幻想的でした。日本の古い建造物とイタリアの最新デザインのコラボレーションがマッチするのには驚きです。
ということもあり、今回のイタリアでのコンタクトもすんなり受け入れることができました。背の高さに違和感を得ることはなく、キーを預かり試乗開始です。が、その前に計器類の操作やドライブモードの説明を入念にレクチャー。フェラーリの試乗会では珍しい光景かと思います。普段なら「さぁ、行ってらっしゃい!」と見送るだけのフェラーリスタッフが、横に座って細かく説明します。
フェラーリ プロサングエ
理由はそれだけ複雑な装備が備わったからです。メータークラスターは全面液晶で、あらゆる表示が現れます。向かって右がインフォテーメント、左が車両セッティング関係です。オプションですが、試乗車にはラウンドビューモニターまで付いていました。真上から撮ったような映像が映ります。「まさかフェラーリにこんな装備がつくなんて」、って感じですよね。
ドライブモードを切り替えるマネッティーノの切り替えが細かくなりました。これまで同様大きくは5つですが、その中に段階が存在します。“ICE”と“WET”、“コンフォート”にはミディアムとソフト、“スポーツ”と“ESCオフ”にはハードとミディアムとソフト、というように。デフォルトはコンフォートのミディアムだそうです。
モニターは助手席前のダッシュボードにも組み込まれます。そこではエアコンやオーディオコントロールもそうですが、なんとシートに内蔵されるマッサージ機能の調整が行えます。ついにフェラーリにマッサージが付いたんですね。ある意味衝撃的です。
また話題のウェルカムドアの説明もありました。いわゆる観音開き。アメリカではコーチドアなんて呼ばれるアレです。目的はフルサイズのシートをリアにも入れるため。そうなんです、プロサングエのリアには一般的なリアシートではなく、しっかりしたバケットタイプが装着されます。もちろん2名分。
ではパワーソースですが、フロントには6.5リッターV12自然吸気ガソリンユニットが搭載されます。812シリーズと同じ世代ですがエキゾーストに手を入れました。目的は効率アップと燃費の向上。812シリーズはサーキットでの走りをメインにしていますが、プロサングエはもう少し日常的に使いやすくすることを目指したそうです。確かに4シーターですからね、そうなります。
フェラーリ プロサングエ
といった文脈で開発されたプロサングエの走りは思いのほかマイルドに感じました。出だしからスーッと大人しく動き出します。それには716Nmという太いトルクが関係します。アクセルをそれほど踏み込まずに駆動力が発生するからです。そしてそのままピンツォーロの街を走る。目線が高い分、これまでとは違い特別なクルマを動かしている気分は薄いかもしれません。
ですが、ワインディングに入りそれなりにアクセルを踏み込んでいくといつのフェラーリサウンドが響き出し、本領を発揮します。鼻先の軽さとアシストの強いステアリングがドライバーに軽快さを伝えます。リアタイヤが操舵することもそれを助けているでしょう。5m近い全長ですが、大きなクルマを動かしている感じはありません。
こうしたコーナーでの軽快さはフェラーリがこだわった前後重量配分も関係していることでしょう。フロントに12気筒ユニットを積みながら比率は41:59を実現しました。いったいどうしたらそんなパッケージングになるのか不思議です。
この他にもサスペンション構造やブレーキシステムにトピックスはありますが、それらひとつひとつをキャッチアップしていたらキリがないので、今回はこれくらいにします。いずれにせよ、プロサングエの話題は尽きません。なんたってフェラーリ初の背の高いクルマですからね。世界中が驚き、注目しています。戦前のスクーデリアフェラーリのスタッフが見たら、きっと腰を抜かすに違いありませんね。
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