どんなクルマ?
text:Shigeo Kawashima(川島茂夫)
photo:Keisuke Maeda(前田恵介)
高性能と快適性の両立はセダンの基本コンセプトの1つであり、新型となったアコードでも欠かせない要件である。
もっとも、高性能を「ゆとり」に活かすか「ファントゥドライブ」に向けるかで走りのキャラクターも変われば、快適性の重み付けも異なってくる。
セダンがスポーティに傾倒する中で、アコードもまたスポーティなキャラクターや味わいをセールスポイントにしていくが、10代目となる新型車では快適性の向上が特徴の1つとなっている。
スポーティとコンフォートの両立はスタイリングが雄弁だ。ルーフラインは深く前傾したリアピラーに連なりファストバックを形成する。
ただし、キャビン後半の頭上を潰したようなクーペルックではなく、クォーターウインドウとともに大きく開口したサイドウインドウ・グラフィックと合わせてセダンらしい居心地を確保した上での「ファストバック」。ダイナミズムとエレガンスの両立で、流行りのフォルムでもある。
10代目も2モーター・ハイブリッド
パワートレインにはe:HEVを採用。シリーズ式ハイブリッドをベースに高速巡航専用のエンジン直動機構を備えているのが特徴である。様式は従来のi-MMDと共通しているが、パワーコントロール・ユニットやバッテリーも含めて、小型化などの改良が加えられている。
このシステムは、シリーズ式では効率が低下する高速域で、エンジンからの直接駆動を併用することで巡航時の燃費改善を図っているのが特徴だ。
ココが見所 静粛性・足まわり
新開発のプラットフォームは、一般論として基本となる軽量・高剛性は当然として、塗布総計43mにもなる構造用接着剤の採用や低振動フロア構造など、車体まわりの減衰特性の改善や遮音・防振対策にも力を入れている。
逆位相音をスピーカーから発してノイズを低減するアクティブ・ノイズ・コントロールの3マイク化、レゾネーターを内蔵し気柱共鳴音の減少を図るノイズ・リデューシング・アルミホイールの採用などを見ても、新型アコードが静粛性向上に対していかに力を入れて開発されたか容易に理解できる。
サスペンションまわりの見所は、アダプティブ・ダンパー・システムだ。
電子制御式の可変減衰力ダンパーだが、ピストン速度の検出によりサスペンションに掛かる負荷や挙動の状況に応じて最適な減衰力を選択することが可能となった。
また、前輪ブレーキによるトルクベクタリングを用いてライントレース性と方向安定性を高めるアジャイル・ハンドリング・アシストなど、ホンダの最新シャシー技術が導入されている。
プレミアムだ! 省燃費だ! スポーティだ! コンフォートだ! と何とも欲張りなモデルである。
どんな感じ?
セダンの優位性はウェルバランスで最も活きる。
八方美人という言い方もできるが、実用性でも走行性能でも、相反する要件を高次元で両立してこそ「ザ・セダン」というわけである。
新型アコードで最も分かりやすいのがパワートレインだ。WLTC総合モードは22.8km/L。フィットの1.3L車が20km/L前後なのを考えれば、どれほど省燃費性に優れているか分かるはずだ。
もちろん、燃費スペシャル的な動力性能であれば興醒めでしかないが、上級大型セダンに相応しい性能をしてこの燃費性能なのだ。
e:HEVの加速性能は電動モーターに依存し、内燃機では得難い加速反応が売り物。ペダルに直結するようなコントロール感覚、とくに浅いアクセル開度での応答性がいい。
ただし、電動モーターの特性を生のままに引き出してはプレミアム・セダンらしくはならない。
乗り心地・ハンドリングの話
加減速で神経質あるいは粗野と感じさせないためには、過渡特性の面取りが重要になるが、多少ラフなコントロールをしても反応は滑らかである。
様々な特性をプログラムで生み出せる電動駆動の有利さを、余力と綺麗なドライブフィールに振り向けていた。
もっとも、急激な駆動力の立ち上がりなど、暴れん坊的なドライブフィールにスポーツ性を感じるドライバーもいると思われ、スポーツ・モードくらいはもう少し粗野でもいいかもしれない。
フットワークというか乗り味は、アコードらしさと快適性向上の両立にこだわったのが伝わってくる。
路面からの衝撃を抑えながら、挙動変化を少なく、ライントレース性を磨きながら切れ味や据わりをよく……、背反要素の両立点をいかに高めるか苦心したのが分かる。同時に走り全体の志向が纏まっていないような印象も受ける。
中立からの操舵初期応答は素早く、過剰なヨーの動きを抑えて旋回力を立ち上げる。タイトターンで大柄な車体を感じさせない回頭性を示しながら、高速コーナリングで据わりのいいハンドリングを示すのはアジャイル・ハンドリング・アシストの効果だろう。
定常円旋回中はそれなりのロールを示すものの、追い舵などでの極短時間の負荷増ではストロークを抑えて即応性を高める。これには、ストローク速度を制御するアダプティブ・ダンパー・システムが相当利いていると思われる。
操縦性と安定性の両面とも、かなり高い水準で纏められたハンドリングである。
“最新のホンダ感”には欠けるか
ただし、路面入力の少ない中立付近での滑らかさや、路面うねりでのしなやかさは今ひとつ。
比較的舗装状況のいい路面でも車軸まわりの細かな振動が気になる。高速での大きなうねり通過では大きなストロークを用いるが、それ以外ではコンフォート・モードでも比較的ストロークを抑えた設定。
硬いというほどではないが、体感するピッチやロールを少なく、車重を意識させない乗り味である。
快適性を向上させたことで先代アコードからの乗り換えユーザーに宗旨替えしたと誤解を受けないための乗り味なのだろう。
しかし、それが軸脚の所在を曖昧に感じさせ、CR-Vやフィットに感じたような新世代感に繋がっていない。
スポーツ/ノーマル/コンフォートの選択が可能なのだから、スポーツとコンフォートの乗り味で劇的な変化があれば、もっと違った印象になったと思われるのだが……。
価格帯は同等、カムリと異なる長所
タイからの輸入車ということもあり、「EX」の単一グレード設定で、先進運転支援機能やパワーシートなどの最上級クラス相応の装備は標準装着される。
ラインOPも用意されないが実質フルOP仕様である。価格は465万円だ。
車格や主市場からアコードのライバル最有力はカムリ。最上級仕様が445万円であり、サンルーフや電子制御サスの有無などを考えれば、同等値付けである。
両車の走りでは寛いだ乗り味を求めるならカムリ、手応えあるファントゥドライブを求めるならアコードというのが基本線。従来車でも同様の傾向であり、新型となっても変わらない。
静粛性の高さはアコードの長所だが、ウェルバランス仕立てのカムリのほうが大型セダンを実感しやすい快適性であり、一般受けしやすい。
アコードは、スポーティキャラを重視するドライバー向けの快適性とも言える。
ユーザーと進む10世代目
また、志向と嗜好面で被りやすいホンダ車をみれば、CR-Vのハイブリッド4WD車の最上級仕様が約456万円。
インサイトなら約100万円安で、クラリティPHEVは100万円強高い。
多様な使い勝手ならCR-V、コスパで図る先進感ならインサイト、先進性ならクラリティに分がある。
走りの側面でも、これらのモデルに比べるとアコードは一世代前のホンダ味が感じられる。半世代進化ではなく新旧世代が混じり合ったような感じだ。リピーターも少なくないモデル故に、先代の走りの味わいの継承も必要だったのだろう。
考えるほどに落とし所が分からなくなってしまうのだが、アコード好きのためのアコードなのは間違いない。
ホンダがアコードユーザーを大切にしているのがよく分かる。そして新型の進化と継承を最も理解できるのもアコードユーザーなのである。
新型ホンダ・アコード スペック
価格:465万円
全長:4900mm
全幅:1860mm
全高:1450mm
最高速度:-
0-100km/h加速:-
燃費:22.8km/L(WLTCモード)
CO2排出量:101.8g/km
車両重量:1560kg
パワートレイン:直列4気筒1993cc
使用燃料:レギュラーガソリン
最高出力(エンジン):145ps/6200rpm
最大トルク(エンジン):17.8kg-m/3500rpm
最高出力(モーター):184ps/5000-6000rpm
最大トルク(モーター):32.1kg-m/0-2000rpm
ギアボックス:電気式無段変速機
乗車定員:5名
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みんなのコメント
が、これをぜひ買って所有したいと思わせる何かに欠けるんですよ。
個人的には、ホンダお得意の「6気筒と間違えるほどの4気筒」のエンジン車をラインナップして欲しかった。
マーケティング的には「日本市場はハイブリッド一択」ってことになってるんでしょうけど、自らターゲットを狭めてますね。。
パクったという感じのデザイン。レジェンドなんかもそう。