もくじ
ー ユサフ・アシュラフ君とジュリア
ー 醜い外観 だが愛おしい
ー イタリアで見つけた極乗車(?)
ー 数々の問題 ならばレストア…
アルファ・ロメオ クラシックカー向けサービスを開始 レストア/証明書
ユサフ・アシュラフ君とジュリア
「18歳にふさわしいクルマ、求む」
こう聞いたら、普通は地元のヴォグゾールディーラーや、大きな中古車ディーラーを勧められることだろう。しかしわたしにとって、探す先はイギリス国内にとどまらず、フランスやイタリアにまで広がっていた。なぜなら、わたしが欲しくてやまなかったのはアルファ・ロメオ・ジュリア、発売から46年にもなるファミリーサルーンだったから。
現代の自動車は当然よくできている。しかし、わたしが欲しいのはクラシックカーだ。ステアリングはノンパワーだし、運転支援の機能もない。タイヤだって細くてグリップも弱い。それを味わってみたかったのだ。
このような、比較的安くて、しなやかで運動性能の高いシャシーを持ったクルマを探しはじめると、多くの候補が見つかった。そのうちに、わたしはアルファ・ロメオ105シリーズに心惹かれてしまう。1962年から1970年代後半にかけて多くのバリエーションが発売され、どれもイタリア人にしか作れないようなスタイルやキャラクターを持っていたからだ。
醜い外観 だが愛おしい
快活なツインカムエンジン、5速マニュアル・トランスミッション、後輪駆動と全てが揃っている。しかし詳しく調べるうちに、105系のスパイダーやクーペは価格が高騰しすぎて手が届かないことがわかった。それでも、セダンのジュリアならなんとかなりそうだ。
ただしセダンは、少々普通ならざる外観をしている。あまりにも3ボックスの形状に忠実になりすぎて、いくぶん不格好。
柔らかくロングトラベルなサスペンションなどは共有しているとはいえ、ベルトーネのデザインしたクーペや、ピニンファリーナのスパイダーの美しさとは比べるべくもない。
しかし、突然わたしはこのクルマに恋に落ちた。
両サイドの深くえぐれた造形や、リアのアーチを斜めに横切るライン、トランク上を走るふくらみ(現代のクルマの中で、わたしが気に入っているポルシェ911 GT3 RSと共通する唯一の部分だ)。この実用的なセダンをロードレーサーへと改造していくのは、極めて魅力的に思えた。
イタリアで見つけた極乗車(?)
早速わたしはサビのない、機関良好なジュリアを探し始めたが、オールド・アルファでこのような個体は稀だ。雨の多い英国ではどうしてもサビて腐ってしまう。
やはりオールド・アルファを探すなら、暖かく乾燥したジュリアの母国、イタリア以上に適した国はあるまい。
イタリアの個体を探すと、わずか数台だけ候補が見つかった。わたしはイタリア語の話せる妹にリストを渡して、電話で問い合わせてもらい、何台かを候補から外した。これらは、価格の高低はあっても、結局サビだらけの個体だったからだ。
そうやって選んだのが、1972年式のジュリア・スーパー1.3。デロルトのキャブレターを装備した、珍しいインディゴグレーの外装に、赤褐色の内装をした個体である。
ボディにサビは見当たらず、インテリアや機関のコンディションも良好。セールスマンは昔気質のメカニックで、寛大なことに1万1000ユーロ(140万円)までまけてくれた。イギリスまで乗って帰りたい気持ちは山々だったが、1600kmの道のりを思うと、故障なしで帰れるとは到底思えなかった。
数々の問題 ならばレストア…
ジュリアが到着したので、とりあえずわたしの家の前に停めてみたが、とても異質に感じられた。
小さいが、自己主張は激しい。わたしは辛抱ならずドライブへと出かけたが、その行程で多くの問題が発覚してしまった。
木製のステアリングは可愛らしく繊細だが、7cm以上の遊びがあり、アイドリングは3000回転ほどと高い。凹凸を越えればサスペンションはきしみ、突然傾いたりする。朗報なのは、全てを支えるシャシーだけは頑健なままだったことだろうか。
わたしはレストアを始めることにした。(つづく)
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