■連載/金子浩久のEクルマ、Aクルマ
BMWのSUV群に新種が現れた。「X7」である。文字通り「X5」よりも大きい。現行のBMWのSUVの中で最も大柄になる。ボディ寸法は、5151(全長)x2000(全幅)x1805(全高)ミリ、ホイールベースは3105mm。BMW初の3列シートを標準装備している。その「X7」にアメリカで乗った。メキシコとの国境の町であるテキサス州エルパソから西へ向かい、ニューメキシコ州を抜けて、アリゾナ州スコッツデイルまでの約700kmを半日で走った。
エンジン、AI、運転支援機能、乗ってわかったBMW新型「3シリーズ」の○と×
機械として優れているか ★★★★★5.0(★5つが満点)
運転したのは、340馬力を発する6気筒ガソリンターボエンジンを搭載する「X7 xDrive40i」。アメリカで見ても、X7は大きい。キャデラックの「エスカレード」やメルセデス・ベンツの「GLS」と変わらない存在感がある。
大きさだけでなく、上下にハミ出るほど存在を主張しているフロントグリルや各部分のクロムメッキなどが目立っている。大型だからスペースに余裕があり、車内も至れり尽くせりだ。これまでの「X5」や「X6」などの機能的なインテリアの造形にプラスして豪華さも付け加えられている。例えば、シフトレバーのグリップはクリスタルガラス製だ。ウッドや革の配し方などもゴージャス志向。
メーターパネルとセンターコンソール上のモニターは、ともに12.3インチの大型液晶。メーターのロジックも新型「3シリーズ」と共通する、バーチャルのスピードメーターとタコメーターの針がそれぞれ左右の端から回るという新しいものだ。
エルパソの街中から高速道路に乗り、一路、西を目指した。最初に感じられたのは、ソフトで大らかな乗り心地だ。どちらかというとフラットで硬めの乗り心地を指向してきたはずのBMWのSUVとしては、異例にソフトな感覚だ。
ただ、そのソフトさも不快ではまったくなく、むしろ余裕や心地良さを伴った抑制の効いたもので、大型SUVという「X7」のキャラクターにとても良く合っている。進化したエアサスペンションの効能が大きいのだろう。
プロジェクトマネージャーのヨルグ・ブンダー博士は、「X7」の開発で最も注力したのは「乗り心地と静粛性だ」と語っていた。その狙いは十分に達成されていると思う。700kmの移動がまったく苦にならずに行えたからだ。
走行モードがコンフォート、アダプティブ、スポーツ、スポーツプラスと4つ用意されている。コンフォートでも、アダプティブでも快適さは変わらなかった。コンフォートはスピードが50マイル前後に達するとダンピングが引き締まってくる様子が体感できる。スポーツとスポーツプラスは常時、引き締まっているので走る場所と状況を選ぶだろう。
「X7」はボディが大きな分、重量も2500kgもある。しかし、エンジンがパワフルなだけでなく、8速ATが賢いこともあって、加速にも不満は感じなかった。日本仕様はディーゼルエンジン版も設定されるので、違いが気になるところだ。
商品として魅力的か ★★★★★ 5.0(★5つが満点)
「X7」の運転支援機能も大幅にアップデイトされていた。アメリカの高速道路なので、直線路主体の空いた道を淡々と走り続けることになる。その際に強い味方となってくれるのがACC(アダプティブクルーズコントロール)とLKAS(レーンキープアシスト)などの運転支援システムだ。
ACCは設定した車間距離と最高速度を維持しながら前車に追従しながら走ることができる。筆者は、自分のクルマでも試乗車でもACCを必ずONにして走るようにしているが、アメリカで高速道路を長距離を走るような場合にこそ絶対に必要なものと考えている。実際に「X7」でも可能な限り、ACCを用いた。車間距離や速度を調整することをある程度クルマに任せることができるので、その分の自分の脳のキャパシティが空くので、確実に疲労が少なかった。
同じように、LKASも長距離走行を安全かつ快適になるようサポートしてくれた。BMWのLKASは新世代に更新されたようで、新型3シリーズからもそれは感じられた。白線を越えようとすると、かなり強い力で戻される。右コーナーと左コーナーとでもアシストの強弱や作動時間も異なっている。実にキメ細かい制御となった。
繰り返すようだが、ACCもLKASも運転をサポートしてくれ、疲労を軽減し、事故を未然に防いでくれる。今回のような長距離ドライブでこそ、その効能が最大限に生かされる。フロントガラス越しに広がるアメリカ南西部の広大な絶景を堪能しながら走ることができた。
ただ、ひとつ心残りだったのは、オフロードを走れなかったことだ。「X7」はほぼ同時期にモデルチェンジした「X5」とともに、車高を5段階に変えられる初めてのBMWのSUVとなったので、4輪駆動システム「xDrive」と併せたその実力のほどを試してみたかった。
ブンダー博士にそれを伝えると、「それは残念だった。きっと満足してくれたと思う」と自信のほどを伺わさせていた。
いずれにしても、大型ボディと3列シートに注目が集まるであろう「X7」だったが、このクルマの本質は「X4」や先代「X5」、そして「X6」のようなオンロード志向の強いSUVではなく、オンオフを問わないオールラウンダーであることがわかった。
最新の運転支援デバイスを備え、乗り心地と静粛性に秀でた快適性の高い高級SUVである。Xシリーズの幅を大きく広げるものに仕上がっていた。
■関連情報
https://www.bmw.co.jp/ja/all-models/x-series/x7/2018/bmw-x7-landingpage.html
文/金子浩久(モータージャーナリスト)
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