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【奥深きミニカーの世界】手に入れるべきは好きなモデル 値上がり、期待は禁物

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【奥深きミニカーの世界】手に入れるべきは好きなモデル 値上がり、期待は禁物

子供時代の思い出

サイモンは間違いない。グレッグもそうだが、まだ若いカメラマンのマックスはどうだろう?

【画像】奥深きミニカーの世界 全8枚

いま話題にしているのは、コーギーやディンキー、マッチボックスといったメーカーが作り出したダイキャスト製ミニカーが引き起こすノスタルジーについてだ。

今年54歳になるサイモン・ハーレーがハリファックスで経営するコレクターズ・オールド・トイショップでこうしたミニカーに囲まれていると、この店に27年間通い続けているという62歳の常連でありコレクターのグレッグ・ブルックもやって来た。

「これも持っていたし、あれも、そしてこれも持っていました」と、何段にも積み重ねられた精巧なミニカーで一杯の棚やショーケースを見て、今年59歳のわたしは思わず大声になってしまう。

もっとも価値のあるミニカーの多くが、箱入りの状態で保存されている。ある一定の年齢であれば、わたしと同じように叫ばずにはいられないだろう。

この店でこうしたミニカーを目にするだけで、カーペットのうえで夢中になって遊んでいた子供時代にタイムスリップしてしまうひともいるに違いない。

だが、ある日を境に子供たちはミニやゼファー/ゾディアック、消防車には目もくれなくなり、こうしたミニカーはそのまま屋根裏に仕舞い込まれるか、あるいはバザーで売りに出され、2度と彼らを夢中にさせることはなかったのだ。

No.267 バットモービル

ハーレーが数百台もストックしているのは、こうして見向きもされなくなった子供時代の思い出であり、店の裏に置かれたカゴに溢れかえる1ポンド(141円)から購入可能なこうしたミニカーたちは、子供たちだけでなくスペアパーツを探し求めるベテランのコレクターたちにも人気となっている。

一方、そうしたモデルとは対照的に、ハーレーの店にあるなかでもっとも高価な商品がコーギー社製No.267 バットモービルだ。

まるで新品同様のコンディションを保ったまま、オリジナルの箱に入ったこのモデルの価格は500ポンド(7万1000円)にも達する。

世にバットモービルのミニカーは溢れているが、ハーレーが所有するのは1966年に売り出されたブラック・ファースト・イシューというモデルだ。

人気のコレクターズアイテムの価格情報を掲載しているCollect-a-Toyというサイトで検索すると、箱入りでA+のコンディションを維持している同じモデルの価格は538ポンド(7万6000円)とされているのだから、彼の500ポンドという価格設定は魅力的と言えるだろう。

同じサイトで6台のバットモービルを見つけることが出来たが、そのうちもっとも高価だったのは「初期の箱に入った赤いホイール付き」という説明が付いた1973年製モデルの948ポンド(13万4000円)であり、もっとも安価だったのは1974年製のバットモービル・ブラックの245ポンド(3万4600円)だった。

ジェームス・ボンドのDB5

ちなみに、最初に登場したバットモービルはブラック・ファースト・イシューではなく、サタン・ブラック・ファースト・イシューというモデルだ。

だが、このモデルはコーギー社があまりにも仕上がりが酷いと判断したために、もっと美しい仕上げを与えられたモデルに交換すべく、販売直後に市場から回収されている。

もし見つけ出すことが出来ればだが、ハーレーによると状態の良いサタン・ブラック・ファースト・イシューの価格は1000ポンド(14万1300円)にも達すると言う。

Collect-a-Toyのプライスガイドでは、最近のバットモービルの価格動向も確認することができる。

ブラック・エディション・イシューの場合、A+のコンディションを維持した個体の価格は2008年の450ポンドを底値に、一旦2013年には1000ポンドまで上昇したあと、2019年の現時点では538ポンド(7万6000円)にまで下落している。

ハーレーの店にあるもっとも安いモデルともっとも高価なモデルの間に位置するのが、子供時代の憧れだったコーギーNo.261のジェームス・ボンド・アストン マーティンDB5だ。

ボンドシリーズ3作目となるゴールドフィンガーの公開に合わせ1965年に発売され、マシンガンと防弾シールド、そしてなによりも重要な、パッセンジャーを助手席ごと空高く打ち上げることの出来るポップアップ式ルーフを備え、子供たちのあいだで大人気となったモデルであり、いまではコンディション良好でオリジナルの箱が残っている個体が高く評価されている。

お気に入りはコーギー

ハーレーの店では、箱と取扱い説明書、ふたり分のフィギュアと、重要なポップアップ式ルーフが未使用のこのモデルを250ポンド(3万5300円)で販売しているが、Collect-a-Toyのプライスガイドでは502ポンド(7万1000円)と表示されているのだから、お買い得と言えるだろう。

このアストン マーティンDB5の最高値は575ポンドというものであり、バットモービルほどの高騰を見せることはなかったが、それは販売当時大ヒットしたことで、いまでも市場に多数のコンディション良好な個体が供給されているということが理由だろう。

「1960年代というのはミニカーの黄金時代でした」とハーレーは言う。「モデルとなった実際の車両はさらに魅力的で、映画やテレビとのタイアップによって市場が拡大するとともに、ひとびとの懐にも余裕がありました」

マッチボックスとディンキー、そしてコーギーの間での競争が激しかった時代だ。いまもそれぞれのブランドには熱心なファンが存在しているが、個人的には素晴らしい仕上がりとディテールが魅力だったコーギーがお気に入りであり、コレクターのブルックも同じ意見だ。

「コーギーがお気に入りブランドです」と彼は言う。「見事なプロポーションで、カラーもより鮮やかでした。それに、ミニカーにウインドウをと導入したのも彼らが初めてだったのです。実際、コーギーのスローガンは『ウインドウ付きミニカー!』というものでした」

理由はノスタルジー 投資には反対

ブルックは1000台以上のミニカーをコレクションしており、その多くの価格が上昇しているものの、決してお金のために収集しているわけではないと話す。

「すべては子供時代と、実際に所有したことのクルマに対するノスタルジーです」と彼は言う。「最初に手に入れたミニカーはマッチボックスのNo.5レッドバスで、蚤の市で10ペンスでした。もっとも希少なモデルは1959年につくられたディンキーのロールス・ロイス・シルバーレイスです」

その多くが箱に入ったままのこうした希少なモデルというのはどこから供給されているのか、なによりも、どんな子供がこんなにキレイにミニカーを保管していたというのだろう?

「マーケットやオークション、さらには店を訪れたひとびとからミニカーを仕入れています」とハーレーは教えてくれた。

「箱入りの古いモデルや新品のようなコンディションを保ったままのミニカーを持ち込む個人というのは、たいていが引退した専門家であり、彼らは最初から非常に丁寧に自分の持ち物を取り扱うのです」

さらに、時おり埃を被ったままで売れ残った大量のミニカーが発見されることもあり、それは世界中どこでも起こり得る可能性があると言う。

いま、将来的に最高のコンディションを維持したままのミニカーが見つかるのではないかとハーレーが目を付けているのがイランだ。

それでも、こうして大量にコンディション良好なモデルが発見された場合、それまでの価格帯が破壊されてしまうという問題があり、だからこそハーレーはミニカーを投資の対象としてみることには反対なのだ。

ポップアップ式ルーフの秘密

「本当に好きなモデルを収集すべきであり、将来の値上がりなど考える必要はありません」と彼は言う。「箱入りの状態であれば高値が期待できますが、車両自体の状態も最高でなければいけません」

その他にコレクターの高齢化もミニカー相場に影響を及ぼしているという。

ミニカーのオークションを定期的に開催しているWarwick & Warwickで査定を担当するリチャード・ビールは、1950年代以前に子供時代を過ごし当時のモデルを収集しているコレクターの数が減っているため、こうしたモデルの価格帯も弱含んでいると話す。

「一方、1960年代のモデルは依然として価格が上昇しています」とも彼は付け加える。

ハーレーの店にあるDB5のスタイルが気に入ったが、これはわたしが5歳の時に発売され、手に入れたものの、もはや使い物にならなくなるほどボロボロにしてしまったモデルだ。

ハーレーはポップアップ式ルーフが本来どう収まっているべきかを教えてくれた。

「ほとんどが助手席をふたたび取り付けようとしてルーフを押さえつけられたためにダメージを負っています」と彼は話す。「ダメージを避けるには、まずシートを取り付けた後でルーフを固定するのです。コレクターはこの点に注意すべきです」

おそらくは彼の言うことは正しいのだろうが、個人的にはどれくらいパッセンジャーシートの住人を空高く打ち上げることが出来るかのほうに興味があった。

だが、残念ながらまさに疾走するDB5の進路に投げ出されるだけだったのだ。

実際に映画でこんなシーンが登場したかは記憶にない。

番外編:それぞれのお宝モデル トップ5

サイモン・ハーレー(ショップオーナー)

■コーギー・バットモービル:500ポンド(7万1000円)
■コーギー・ジェームス・ボンドDB5:250ポンド(3万6000円)
■コーギー・ジャガーEタイプ:100ポンド(1万4000円)
■ディンキー・フォード・マスタング・ファストバック2+2 :70ポンド(1万円)
■ピレン・フォルクスワーゲン・初代シロッコ:38ポンド(5400万円)

グレッグ・ブルック(コレクター)

■コーギー・バットモービル:500ポンド(7万1000円)
■コーギー・ジェームス・ボンドDB5:250ポンド(3万6000円)
■コーギー・モンテカルロ・ローバー2000(1966):150ポンド(2万1200円)
■コーギー・モンテカルロ・ミニ(1966):120ポンド(1万7000円)
■コーギー・シボレー・コルベット(1969):50ポンド(7000円)

ジョン・エバンス(英国版AUTOCARスタッフ)

■コーギー・ジェームス・ボンドDB5:250ポンド(3万6000円)
■コーギー・エキュリー・エコス・トランスポーター(1962):180ポンド(2万5000円)
■ディンキー・フォードソン・トラクター(1934):85ポンド(1万2000円)
■コーギー・ランボルギーニ・ミウラ(ダイアモンドヘッドライト仕様):6ポンド(850円)
■コーギー・クーパー・マセラティ:4ポンド(570円)

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