11月2日、中東バーレーンで行われた2024年WEC世界耐久選手権第8戦は、トヨタ・ガズー・レーシングの8号車トヨタGR010ハイブリッド(セバスチャン・ブエミ/ブレンドン・ハートレー/平川亮)が総合優勝を飾った。LMGT3は、ビスタAFコルセの55号車フェラーリ296 LMGT3(フランソワ・エリオ/サイモン・マン/アレッシオ・ロベラ)がクラス優勝を飾っている。
そして、今大会で決着となったハイパーカークラスのドライバーズ選手権は、11位チェッカーとなったポルシェ・ペンスキー・モータースポーツの6号車ポルシェ963(ケビン・エストーレ/アンドレ・ロッテラー/ローレンス・ファントール)がタイトルを獲得。マニュファクチャラー選手権は、総合優勝を飾った8号車トヨタのトヨタ・ガズー・レーシングが逆転で王座に輝いた。
当初2位の51号車フェラーリが4分55秒のタイムペナルティで降格。プジョーが今季初表彰台獲得/WEC第8戦
ついに迎えた最終戦は、現地時間14時に8時間レースがスタート。ポールの8号車トヨタが最序盤をリードし、タイトルを争う50号車フェラーリ499P(フェラーリAFコルセ)と6号車ポルシェ963(ポルシェ・ペンスキー・モータースポーツ)はスタート直後に若干接触、ともにポジションを下げる開幕となる。
しかし、20分ごろに8号車トヨタはLMGT3クラスと接触してスピンし、51号車フェラーリが首位に浮上。だが、迎えたピットインでタイヤ交換にミスが生じ、12号車ポルシェ963(ハーツ・チーム・JOTA)が代わってトップに立った。第2スティントの後半には12号車ポルシェがペースを落とし、51号車がふたたび首位へ。さらに5号車ポルシェもスパートをかけて2番手に続く。
スタートでポジションを下げた7号車トヨタは、途中加速が鈍るトラブルが発生しながらもコクピット内の対応でスピードを取り戻し、5番手から表彰台圏内を伺う。小林可夢偉が乗り込んで迎えた第3スティントでは、2台のポルシェをオーバーテイクして首位51号車フェラーリを追走。王座がかかる6号車ポルシェは、序盤の失速から徐々に順位を上げ、10番手を走行中だ。
※前半3時間レポートはこちら(/sports-car/1147020)
■首位を追った7号車にトラブル再発
中盤には陽も落ち、気温29.4度/路面温度32.8度に変化。追い上げる7号車は首位51号車フェラーリの1秒後方へ近づき、追われるジェームス・カラドもペースを上げて反応。2台は20分間以上均衡状態となり、そのまま4度目のピットタイミングを迎えた。
ここでは7号車がオーバーカットに成功。ニック・デ・フリースが乗るトヨタは首位に立つ。しかし、ここでふたたびペースが乱れ始め、51号車フェラーリのアレッサンドロ・ピエール・グイディが追い付いて難なくパス。逆転を許してしまった。
その後はLMGT3クラス同志の接触でコースにデブリが撒かれ、最初のフルコース・イエロー(FCY)が導入。すぐに解除されたが、7号車トヨタはさらにリズムが乱れ、ライバルとは約4~5秒ほど遅いペースでの走行が精一杯に。この間、5号車ポルシェと12号車ポルシェ、さらに15号車BMW MハイブリッドV8(BMW MチームWRT)にも抜かれて5番手にダウンする。
対する51号車フェラーリは約10秒リードで首位を快走し、その背中を12号車と5号車のポルシェ2台が追う。孤軍奮闘の8号車トヨタは、5番手から15号車BMWを追う。
■トヨタ7号車無念のガレージイン。2度のSC導入で荒れた終盤へ
5時間26分が経過したころには、LMGT3の88号車フォード・マスタングLMGT3(プロトン・コンペティション)がエキゾーストパイプ出口から火の手を上げて停止。すぐに火は消火されたが、最初のバーチャル・セーフティカー(VSC)が導入となり、ここでほぼ全車がピットインを行った。
ここで2番手の12号車ポルシェはピットタイミングを1周遅らせ、隊列の先頭へ。その背後に51号車フェラーリと5号車ポルシェが続いたところでVSCはセーフティカー(SC)ランへ切り替わり、5時間48分が経過したタイミングでレースが再開となった。
リスタート時には12号車ポルシェのカラム・アイロットが首位を守ったものの、次の周に51号車フェラーリのアントニオ・ジョビナッツィがターン1で仕掛けてトップを奪い返した。
一方、4番手からリスタートした8号車トヨタの平川はタイヤコンディションの差からか、防戦一方で徐々にポジションダウン。さらに僚機7号車は緊急でピットへと向かい、ガレージにマシンを収めてしまった。マシンを降りたデ・フリースは、「燃料ポンプの問題が起き、それがだんだん悪くなってしまった。問題が起きるとセーフティモードに入ってしまうので、そのプロセスをキャンセルしようとしていたけれど、うまくいかなかった」と公式インタビューにコメントしている。
その間、ひと際良いペースを発揮した15号車BMWのドリス・ファントールが5号車ポルシェ963をパスし2番手に浮上。3番手には、陣営内で順位を入れ替えた6号車ポルシェがつける。
しかし、ここで94号車プジョー9X8(プジョー・トタルエナジーズ)が突如失速してコースサイドに停止。2度目のVSCが導入となり、ハイパーカークラスのトップ51号車フェラーリと、3番手の6号車ポルシェ以外のほぼ全車がピットインを選択する。
■最終盤にトヨタVSポルシェ勃発
2度目のリスタートでは、まずは51号車フェラーリと6号車ポルシェがクリーンに隊列をリード。後ろには15号車BMWが続くも、5番手からスパートをかけてきた5号車ポルシェがすぐに追い付いて3番手を奪取する。
ここで、LMGT3クラスの87号車レクサスRC F LMGT3(アコーディスASPチーム)と77号車フォード・マスタングLMGT3(プロトン・コンペティション)が相次いでマシントラブルに見舞われ、コースサイドに停止。2度目のFCYが導入となった。
4分後に解除となったものの荒れ模様はまだ止まず、5番手の50号車フェラーリが36号車アルピーヌA424(アルピーヌ・エンデュランス・チーム)と接触して左リヤタイヤがパンク、上位争いの戦列を離れた。
50号車が落としたタイヤトレッドを回収するために3度目のFCYが導入となり、これを機に首位の51号車フェラーリがピットへ。次の周以降には続々と上位勢が最後のルーティンピットへ向かう。
こうして、突如スプリントバトルとなった最終スティント。ピットアウト後にはマット・キャンベルの5号車ポルシェが事実上の首位となり、FCY解除とともに8号車トヨタのブエミが猛烈な追い上げを開始した。そして、残り40分のタイミングで8号車トヨタが5号車ポルシェのインに飛び込む。しかしこの時に軽く接触が起き、抜かれた5号車ポルシェはコース外へ。
8号車はここで一度ポジションを譲り返し、ふたたびオーバーテイクし直すかたちでトップに浮上した。その後も8号車トヨタのブエミはペースを緩めることなく力走し、27.539秒差をつけてトップでチェッカー。ポール・トゥ・ウインを決めたトヨタは、マニュファクチャラー選手権で逆転王座に輝いた。
そして、2番手に下がった5号車ポルシェ963に対し、最終盤にスパートをかけた51号車フェラーリが追い上げ、約10秒の差を埋めきって最終ラップで逆転。51号車フェラーリが意地の2位表彰台を手にし、3位表彰台に5号車ポルシェ963が入った。
《追記》レース後、タイヤ使用制限に違反していたとして51号車フェラーリ499Pはペナルティを受け、その後発表された正式結果では14位へと降格した。
そして、逆転王座には優勝が必然となっていたドライバーズ選手権は、7号車トヨタがリタイアとなり、50号車フェラーリも12位に終わったことで、11位完走(追記:正式結果では51号車ペナルティにより10位へ昇格)となった6号車ポルシェ963のケビン・エストーレ/アンドレ・ロッテラー/ローレンス・ファントール組が獲得。ポルシェにとってはハイパーカークラス初のドライバーズ選手権制覇となった。
■82号車シボレーの小泉が初表彰台
すでに両タイトルが確定しているLMGT3クラスは、前半でレースの主導権を握った81号車シボレー・コルベットZ06 LMGT3.R(TFスポーツ)がリードを広げていく。
一方、27号車アストンマーティン・バンテージAMR LMGT3(ハート・オブ・レーシングチーム)と85号車ランボルギーニ・ウラカンLMGT3エボ2(アイアン・デイムス)がピットタイミングをずらす戦略を採り、レースは中盤へ。
1度目のVSC導入時には、27号車アストンマーティンと85号車ランボルギーニがすかさずピットへと向かい、ピットシークエンスのずれを帳消しにして表彰台圏内へ揃ってポジションアップしてきた。さらにSC終了時のリスタートでは、81号車シボレーがペースを上げられず、27号車アストンマーティン、85号車ランボルギーニ、59号車マクラーレンというトップ3に入れ替わる。
しかし、すぐに導入された2度目のVSCおよびSCで隊列の差がなくなり、上位陣はピットインしない作戦に出る。対して一度沈んだ81号車シボレーや、前戦富士を制したビスタAFコルセの2台のフェラーリ296 LMGT3はピットへ向かってタイヤをリフレッシュ。
リスタート時では接触寸前のバトルが繰り広げられ、いち早く抜け出した55号車フェラーリのアレッシオ・ロベラが首位、54号車フェラーリのダビデ・リゴンが続くワン・ツー体制となった。3番手には息を吹き返した81号車シボレーのチャーリー・イーストウッドが続き、その後ろには小泉洋史もラインアップに名を連ねる82号車シボレーがつける。
終盤には、追い上げる81号車シボレーはフェラーリ勢に肉薄。最終スティントで一進一退の戦いを繰り広げたが、トップに出るには至らず。最後までリードを守り切った55号車フェラーリがクラス優勝を飾った。
しかし、2番手につけていた僚機54号車はFCY中の手順違反でドライブスルーペナルティを課され後退。その後方で1秒以内に接近していた81号車シボレー、82号車シボレー、60号車ランボルギーニ・ウラカンLMGT3エボ2(アイアン・リンクス)が表彰台争いを繰り広げ、2台のシボレーがツー・スリーで表彰台フィニッシュを飾った。
これで82号車シボレーに乗り込んだ小泉洋史が自身初のWEC3位。フルシーズン参戦初年度で見事表彰台を手にした。そして、前戦富士で確定していた両タイトルは9位完走となった92号車ポルシェ(マンタイ・ピュアレクシング)が獲得している。
そのほか、佐藤万璃音が乗る95号車マクラーレン720S LMGT3エボ(ユナイテッド・オートスポーツ)はクラス8位完走となり、木村武史の乗る87号車レクサスRC F LMGT3(アコーディスASPチーム)はマシンを停めてリタイアとなった。日本籍チームの777号車アストンマーティン・バンテージAMR LMGT3(Dステーション・レーシング)はクラス12位完走でシーズンを終えている。
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