はじめに
今回のテスト車は、おそらくホットハッチやサーキット走行、はたまたわれわれのようなエンスージアストが長らく話題にしてきた偉大なパフォーマンスカーの居並ぶ殿堂、そういったものに興味を持たないユーザーには売りにくいだろう。むろん、オートカー読者にそういうひとびとはあまりいないだろうが。
このメガーヌRSトロフィーRは、厳密にいうなら、ルノーが誇るホットハッチの上級バージョンだが、ボディカラーもトランスミッションも選択肢は1つ。しかも、リアシートもフォグライトも、四輪操舵システムも備えない。
エンジンは専用品ではなく、アウトプットが天文学的な数字というわけでもない。それでいて、テスト車の仕様は7万ポンド(約945万円)を超える。なんてことだ。
ルノーの立場を慮って付け加えるなら、この価格はニュルブルクリンクのレコードホルダーと同じ仕様で、英国で売れたのはたった1台、そしてもう1台がこのメディア向けに貸し出す広報車だ。
このメガ・メガーヌの本体価格は5万1140ポンド(約690万円)で、英国に32台上陸するが、その大半がその程度の金額で販売されるはずだ。そうは言っても、ルノー・スポールが本気で、メガーヌRSをサーキットマシンに仕立てようとしたのは間違いないと思える金額であることに変わりはないのだが。
そのために講じた策は、大きく3つに分けられる。まず、重量を削ること。次に、空力面を大幅に改善すること。そして、アクスルとサスペンションの設計を大胆に変えることだ。詳細はこの後で触れるが、主なものとしては、カーボンホイールやカーボンセラミックブレーキ、フルサイズのカーボンディフューザー、10段階調整式のオーリンズ製コイルオーバーなどが挙げられる。
そうはいっても、ベースはリアサスペンションがトーションビームのフランス製ハッチバックだ。そこに、ポルシェ・ケイマンGT4と変わらぬ金額を支払うことが正当化できるだけの内容なのだろうか。
意匠と技術 ★★★★★★★★★☆
先代がそうだったように、この3代目トロフィーRは、ベースとなるトロフィーに対してパワーもトルクも上積みされていない。メガーヌのヒエラルキーで言えば、頂点と、その直下にある2台に、エンジンスペックの差はないのだ。
ルノー・スポールの1.8L直4ターボは、アルピーヌA110にも搭載されるが、このトロフィーとトロフィーRに積まれるのは最高出力300ps、最大トルク40.8kg-mをマークする仕様だ。6速MTとトルセンLSDを介して前輪を駆動するフォーマットが変わらない以上、このトルクはもはや扱える限界に達している。DCT仕様があれば、42.9kg-m版ユニットが使えるのだが。
しかし、3ペダルは重量軽減に貢献する。それこそ、トロフィーRをスペシャルモデルたらしめるためのキーとなる要素だ。このほか、後席を取り払って25.3kg、アクラポヴィッチのチタンエキゾーストで7kg、カーボン複合材のボンネットで8kg、カーボンのリアディフューザーで2.3kg、薄肉ガラスのリアウインドーで1kg、リアワイパーの排除で3kgと、軽量化メニューは多岐に渡る。
それらをリストアップしていくと、ひときわ大きな数字に行き当たる。4コントロールこと、ベースモデルで賛否両論あった四輪操舵システムのオミットで、32kgを削っているのだ。こうした積み重ねで実に130kgを削ぎ落とし、空車重量は最軽量仕様で1306kgというのがルノーの発表だ。ところが、テスト車の実測値は満タンで1280kgと、なぜか公称値よりも軽かった。
ディエップのエンジニアたちはまた、シャシーとサスペンションにも力を注いだ。フロントがダブルウィッシュボーン、リアがトーションビームという基本的な形式は変わらない。だが、オーリンズのデュアルフローバルブこと調整式ダンパーと、軽量なスプリングを装備する。
前輪のネガティブキャンバーは1.05°増し、コーナリング時の接地面拡大を図った。タイヤは、スペシャルなコンパウンドを用いたブリヂストン・ポテンザS007が標準装備される。また、新デザインのカーボンディフューザーと全面にパネルが張られたアンダーボディはダウンフォースを生み、355mmディスクと42mmピストンのキャリパーを備えるブレンボ製ブレーキシステムが制動力を高める。
テスト車はニュルブルクリンク・レコードエディションと銘打たれた仕様で、さらに装備が充実。19インチホイールは、後席を取り外したスペースに積み込める標準仕様の鍛造アルミ版に加え、カーボン版もセット。ブレーキはフロントにゴールドのキャリパーとカーボンセラミックディスクを装着。ディスク径は390mmに拡大されるが、それでも1枚あたり1kgの軽量化を達成している。
内装 ★★★★★★★☆☆☆
リアの薄くなったガラス越しにのぞき込めば、2列目スペースから人間が座るベンチが取り払われているとすぐに気づくだろう。歴代モデルと同じく、トロフィーRは2シーターだ。
後席に代わり、そこはオプションのカーボンホイールの置き場となっている。そこにはサベルトのセーフティネットがラチェット式ベルトで、鮮やかな赤のストラットブレースに取り付けられ、キャビンと荷室を区切っている。
フロントは毎度のことだが、もっとビジネスライクな空間。構造はおおむね、スタンダードなメガーヌRSと変わりなく、表面の大部分は硬軟あるが見た目のダルいプラスティックで覆われている。赤いステッチやシルバーのトリムに加え、カーボン調のパーツはパフォーマンスカー的な雰囲気を醸している。しかし、ホンダ・シビック・タイプRが絶対的に見せるそれには及ばない。
軽量なサベルトのフルバケットシートをはじめ、センターコンソールのリッドやステアリングホイールにはアルカンターラが張られる。オプションでは6点ハーネスも用意されるが、テスト車には一般的な巻き取り式3点シートベルトしか付いていなかった。
サーキット志向のマシンとはいえ、荷室容量は355Lと十分なサイズが確保され、大きなスーツケース2つは呑み込む。このクルマの性格からすれば、走行会などの際に、トロリージャッキ2台、タイヤウォーマー、パドックで使うテントとホットウォーターディスペンサーあたりを積むことになるかもしれない。
走り ★★★★★★★☆☆☆
直線加速だけを見れば、トロフィーRの価格には頷けるものではない。たしかに、前輪駆動の市販車としては最速レベルの1台に数えられるが、この価格に期待するような、ライバルを蹴散らすほどの速さとはいえない。
また、失望するほどではないが、1つ2つの性質的な問題により、そのエンジンの働きぶりには、性能以上に驚かされることはない。
ドライコンディションのテストコースでマークした0-97km/h加速の最速タイムは、5.5秒をわずかに切る。往復テストの平均値は5.6秒だ。2017年に計測したホンダ・シビック・タイプRより0.1秒速く、さらにその前年のフォルクスワーゲン・ゴルフGTIクラブスポーツSさえ凌ぐ。しかし、決定的な差ではない。
このエンジンのレヴリミッターは静止状態から、どれほどのトルクをクラッチへ送り込むか制御するが、テスト車のローンチコントロールはきわめて散発的にしか機能しなかった。しかも、機能しても目覚ましい結果は生まなかった。
けれども、タイヤが温まり、1人乗りで、ドライバーがスロットルやクラッチを完全に支配できると確信できるならば、5秒の壁を破る前輪駆動車になれると思えるのだが。
だが、もろもろの数字を精査すれば、この1.8L直4ターボは、ちょっとばかりトロフィーRの名にふさわしくないことが見えてくるだろう。
変速ありの48-113km/h加速では、シビックRを上回れない。0-161km/hのダッシュでは、先述したシビックにもゴルフにもわずかばかり及ばない。209km/hに達してもそれが逆転できなかったことは、メガーヌが図った空力の改修が、狙ったほど賢明なものでなかったことを示唆している。
運転中は、このパワートレインのパフォーマンスに関して、身体に伝わる過渡的な部分で、細部への注意をおざなりにした感じがはっきりとわかるはずだ。シフトはやや引っ掛かりのあるグニャグニャした感触で、パワーデリバリーの性格は大きなスロットル入力への反応がやや鈍く、ドッカンターボ気味で、たとえ中回転域でもリニアでなく、回転を上げるといささか息切れ感がある。
大幅な軽量化は、このクルマの速さを生んでいるが、チタンエキゾーストは激しい特性の原因でもあり、音にも身がすくむようだ。それでもわれわれは、このエンジンは力強いが現行メガーヌRSのどのモデルでもセールスポイントたり得ず、このクルマではいよいよ信用の限界近くに達しようとしている、と結論づける。
使い勝手 ★★★★★★☆☆☆☆
インフォテインメント
ルノー・スポールが採った速さ重視の軽量化策は、インフォテインメントシステムにも及ぶ。ルノーの最上級システムである、8.7インチ縦型ディスプレイを備えるRリンクではなく、7インチ仕様を選んだのだ。信じられないかもしれないが、たった250gを削るために。
ディスプレイは読みやすく、OSはパーフェクトに直観的。しかし、ソフトウェアの洗練度とグラフィックのクオリティは、やや期待に及ばない。地図情報はベーシックなレベルで、ときとして操作に対する明らかな遅れもみられる。
それでも、タッチ式画面の下端に表示されるショートカットボタンにより、メニュー切り替えは早くてイージー。しかし、無造作に扱うと邪魔になることもある。走行中に操作しようとして、思いがけず指先がかすってしまうと、ちょうど手をついてしまうところにそれがあったというテスターが、1人2人ではなかったのだ。
燈火類
自動フルLEDヘッドライトは標準装備。夜間走行はなかったので、その性能を試すことはできなかった。
ステアリングとペダル
何人かのテスターは、ペダルがやや高く、気持ちよく操作する妨げになったという。間隔はヒールアンドトウしやすいものだが、シビックRのレベルには及ばない。
操舵/安定性 ★★★★★★★★★☆
今回、オーリンズの10段階調整式サスペンションを備えるトロフィーRをテストできた。サーキットでのハンドリングテストでは、低い車高とルノーのリコメンドするセッティングで走ったが、公道テストでは公道向けの規定値で行った。
公道向け設定では、メガーヌRSトロフィーに対し、しなやかさやバンプのある道での高速安定性の面で、遅々たるものだが価値ある進歩を遂げている。もっとも、このクルマでは真っ先に求められる要件ではないだろうが。このクルマはたしかにハードコアだ。だが、ルノーがこのサスペンションに注ぎ込んだ費用は、すばらしく多才な運動性能というかたちでみごとに実を結んだ。
前輪のネガティブキャンバーは2°を超えるが、バンプステアにはよく抗い、タイヤを取られにくくもあり、不整路面での高速走行時にも安定性が損なわれていない。ダンピングは硬く、サスペンションのトラベルは明らかにショートだが、通常のメガーヌRSより巧みな動きをみせる。
サーキットで、これまた最適な設定で走らせると、やはりほかのメガーヌRSとは異なる。コーナリングはよりフラットなフィールで、クイックにターンするとじつに歯切れよくも腰が座っている。ステアリングフィールは自信満々に操れるもので、四輪操舵が元凶のあいまいさや意外性はここには存在しない。
横方向のグリップは余裕たっぷりで、コーナリング中のスタビリティの高さも同様。それにより、アペックスをこの上ないほど速く駆け抜ける。ハンドリングのアジャスト性は、高速域での根を張ったような安定性と引き換えに多少は犠牲となっているが、ホットハッチにありがちなインスタントで得やすい楽しさや、とくに限界域でのおもしろみを求めるなら、このトロフィーRにはフラストレーションを感じる時があるかもしれない。
とはいえそれ以外の状況では、これはドライバーに息もつかせず、前輪駆動のハッチバックをこれほどハードに走らせられるのかという大きな驚きをもたらすクルマだ。その驚きは、ラップを重ねるたびに感じさせられる。
快適性/静粛性 ★★★★★★☆☆☆☆
遮音材を取り去ったことで、このクルマの室内はまるで反響室のようになってしまっているが、覚悟していたほどひどいものでもない。もちろん、音のインパクトはかなり増幅されているように感じられるのはたしかだ。それだけに耳が、腰に受けるのと変わらぬ衝撃に襲われるようにさえ感じられるときがある。
しかし、その点でいえば、ライバルより悪いというわけでもない。48km/hで計測した騒音レベルは66dBで、2017年に計測したシビックRと変わらない。113km/hでは73dBだったトロフィーRが上回るものの、その差は1dBに過ぎない。
ドライビングポジションは、抜群というほどではないが良好だ。だがやはり、すばらしくしっくりくるシビックには遠く及ばない。シフトレバーを楽に操作できる位置に座ると、やや脚を曲げてペダルを踏むことになる。
そのペダルはやや高く、横方向の間隔も理想的とはいえない。ヒールアンドトウができないほどではないが、シビックのそれはもっとずっとナチュラルだ。また、サベルト製フルバケットが横方向のサポートに優れるのはテスター陣も認めるところだが、固定式のシートバックが理想的なドライビングポジションよりやや寝ているという意見があったのもたしかだ。
購入と維持 ★★★★★☆☆☆☆☆
車両価格は5万1140ポンド(約690万円)だが、カーボンホイールとブレンボのカーボンセラミックブレーキを装着すると、7万2140ポンド(約974万円)へと跳ね上がる。いかにシャシーを大幅改良したからといって、大きな括りでみれば前輪駆動のホットハッチにすぎない。ニュルブルクリンクの市販車レコードホルダーではあっても、あまりに法外な値段だ。
とはいえ、少数生産の限定モデルなりの価格と考えることもできる。トロフィーRの生産台数は500台で、英国で販売されるのはこのうち32台に過ぎない。なお、生産は11月末から12月の早い時期に終了する見込みだ。
そして、すでに全車とも納車先は決定している。そのうち、9000ポンド(約122万円)のカーボンセラミックブレーキ装着車は30台で、英国には2台が上陸するという。
スペック
レイアウト
トロフィーRも、エンジンはベースとなるメガーヌRSトロフィー300と同じ、300psの1.8L直4ターボを流用。これを鼻先に横置きし、6速MTとトルセンLSDを介して前輪を駆動する。
サスペンションは大幅に改修。車両全般にわたる軽量化により、トロフィーより130kgの削減を達成したと謳う。テスト車の実測値は1280kgで、前後重量配分は66:34だった。
エンジン
駆動方式:フロント横置き前輪駆動
形式:直列4気筒1798ccターボ、ガソリン
ブロック/ヘッド:アルミニウム
ボア×ストローク:φ79.7×90.1mm
圧縮比:9.0:1
バルブ配置:4バルブDOHC
最高出力:300ps/6000rpm
最大トルク:40.8kg-m/3200-4500rpm
許容回転数:6500rpm
馬力荷重比:230ps/t
トルク荷重比:31.2kg-m/t
エンジン比出力:167ps/L
ボディ/シャシー
全長:4372mm
ホイールベース:2669mm
オーバーハング(前):916mm
オーバーハング(後):786mm
全幅(ミラー含む):2070mm
全幅(両ドア開き):3570mm
全高:1445mm
全高:(リアゲート開き):2000mm
足元長さ(前):最大1100mm
足元長さ(後):最大1060mm
座面~天井(前):最大-mm
座面~天井(後):最大-mm
積載容量:355L
構造:スティールモノコック
車両重量:1306kg(公称値)/1280kg(実測値)
抗力係数:-
ホイール前/後:8.5Jx19
タイヤ前/後:245/35R19 93Y
ブリヂストン・ポテンザS007 RS
スペアタイヤ:4本(カーボンホイール装着時)
変速機
形式:6速MT
ギア比/1000rpm時車速〈km/h〉
1速:3.08/8.5
2速:1.95/15.3
3速:1.39/24.0
4速:1.03/31.5
5速:0.82/38.0
6速:0.67/44.4
最終減速比:4.188:1
燃料消費率
AUTOCAR実測値:消費率
総平均:9.2km/L
ツーリング:13.5km/L
動力性能計測時:3.5km/L
メーカー公表値:消費率
低速(市街地):-km/L
中速(郊外):-km/L
高速(高速道路):-km/L
超高速:-km/L
混合:12.7km/L
燃料タンク容量:50L
現実的な航続距離:460km
CO2排出量:183g/km
サスペンション
前:マクファーソンストラット/コイルスプリング
後:トーションビーム/コイルスプリング
ステアリング
形式:電動、ラック&ピニオン
ロック・トゥ・ロック:2.25回転
最小回転直径:10.3m
ブレーキ
前:390mm通気冷却式カーボンセラミックディスク
後:290mm通気冷却式ディスク
静粛性
アイドリング:57dB
全開時:85dB(3速)
48km/h走行時:66dB
80km/h走行時:69dB
113km/h走行時:73dB
安全装備
ABS/EBD/TCS/HSA/AEB
Euro N CAP:5つ星
乗員保護性能:成人88%/子供87%
歩行者保護性能:71%
安全補助装置性能:71%
発進加速
テスト条件:乾燥路面/気温19℃
0-30マイル/時(48km/h):2.6秒
0-40(64):3.6秒
0-50(80):4.5秒
0-60(97):5.6秒
0-70(113):7.2秒
0-80(129):8.6秒
0-90(145):10.7秒
0-100(161):12.8秒
0-110(177):15.3秒
0-120(193):18.8秒
0-130(209):22.6秒
0-402m発進加速:14.1秒(到達速度:170.4km/h)
0-1000m発進加速:-秒(到達速度:-km/h)
ライバルの発進加速ライバルの発進加速
ホンダ・シビック・タイプR GT
テスト条件:乾燥路面/気温30℃
0-30マイル/時(48km/h):2.6秒
0-40(64):3.5秒
0-50(80):4.4秒
0-60(97):5.6秒
0-70(113):7.0秒
0-80(129):8.4秒
0-90(145):10.5秒
0-100(161):12.5秒
0-110(177):14.8秒
0-120(193):18.4秒
0-130(209):22.5秒
0-402m発進加速:14.1秒(到達速度:172.2km/h)
0-1000m発進加速:25.0秒(到達速度:217.3km/h)
中間加速
20-40mph(32-64km/h):2.1秒(2速)/3.4秒(3速)/5.7秒(4速)
30-50(48-80):1.9秒(2速)/2.5秒(3速)/4.1秒(4速)/6.3秒(5速)/9.7秒(6速)
40-60(64-97):2.0秒(2速)/2.5秒(3速)/3.5秒(4速)/5.1秒(5速)/7.5秒(6速)
50-70(80-113):2.6秒(3速)/3.3秒(4速)/4.8秒(5速)/6.8秒(6速)
60-80(97-129):2.7秒(3速)/3.3秒(4速)/4.6秒(5速)/6.7秒(6速)
70-90(113-145):3.2秒(3速)/3.5秒(4速)/4.6秒(5速)/6.4秒(6速)
80-100(129-161):3.9秒(4速)/5.0秒(5速)/6.4秒(6速)
90-110(145-177):4.5秒(4速)/5.5秒(5速)/6.9秒(6速)
100-120(161-193):5.7秒(4速)/6.1秒(5速)/7.9秒(6速)
120-140(193-225):7.3秒(5速)/9.0秒(6速)
各ギアの最高速
1速:68km/h(7000rpm)
2速:106km/h(7000rpm)
3速:148km/h(70000rpm)
4速:201km/h(7000rpm)
5速:253km/h(7000rpm)
6速(公称値):262km/h(6007rpm)
6速・70/80マイル/時(113km/h/129km/h):2580rpm/2948rpm
制動距離
テスト条件:乾燥路面/気温19℃
30-0マイル/時(48km/h):8.8m
50-0マイル/時(64km/h):23.4m
70-0マイル/時(80km/h):45.0m
60-0マイル/時(97km/h)制動時間:2.67秒
ライバルの制動距離ホンダ・シビック・タイプR GT
テスト条件:乾燥路面/気温30℃
30-0マイル/時(48km/h):8.7m
50-0マイル/時(64km/h):23.6m
70-0マイル/時(80km/h):46.7m
結論 ★★★★★★★★☆☆
3世代目のルノー・メガーヌRSは、早くも頂点に位置するトロフィーRを投入してきた。じつのところ、それが本当に最上のメガーヌRSなのだとすれば、だが。
結局のところ、思い出すべきなのは、かつてR26Rが当時のメガーヌがフルモデルチェンジする1年前に登場し、最初のトロフィーRはその世代の有終の美を飾るモデルだったということだ。
そして、2016年に登場した現行の4代目メガーヌは、世代交代までまだ間があるはず。となれば、ルノー・スポールにはこのサーキット志向の超辛口FFハッチのパフォーマンスを、さらに磨き上げる時間的猶予があるだろう。馬鹿げた話だと思うかもしれないが、ぜひとも先へ進んでほしい。
そうであるなら、手を入れるべき最大の問題はパワートレインにこそある。エンジンもギアボックスもトロフィーRの走りにおいてはこれで十分だというのなら、それはこの名を持つクルマをあまりに軽視していることになる。そして、本体だけで700万円近い金額を払わされるオーナーたちには、真にスペシャルな一台を求める権利がある。
シャシーやサスペンションに関しては、限界域でも悪ふざけできないほど仕上がっており、これ以上は望めないかもしれない。公道でもサーキットでも、ハンドリングのアジリティと運動性の安定感は秀逸だ。走行会に持ち込むクルマとしては、パフォーマンスも信頼性も申し分ない。
担当テスターのアドバイス
マット・ソーンダースライバルモデルたちの多くと異なり、サーキットテストが好天に恵まれたとはいえ、トロフィーRのパフォーマンス面における優位性はリスペクトすべきものだ。ドライビングは心から楽しめた。もっとも、エンジンがよければなお楽しかっただろうが。
サイモン・デイヴィス個人的にトロフィーRは、現行メガーヌのホットモデルの中ではダントツのお気に入りだ。それでも、自腹で買うならシビックRを選ぶだろう。最後の磨きが足りない印象で、これに比べるとシビックこそ完璧なホットハッチだという思いがますます強くなる。
オプション追加のアドバイス
1万2000ポンド(約162万円)のカーボンホイールはとんでもなく高価なオプションだが、5万ポンド(約675万円)以上をサーキット志向のホットハッチに支払おうというなら、いっそ毒を食らわば皿まで、という気にもなるだろう。ついでに、サベルトのスペアタイヤネットもオーダーしてしまおう。
改善してほしいポイント
・もっとパワーを。そして、もっと有効範囲の広い出力特性を。
・サスペンションのアジャストをもっと簡単にしてほしい。フォードGTのような、油圧車高調整機構が、ホットハッチにも付いていたらいいのだが。
・適切な、フルアジャスト可能な電子制御式ローンチコントロールがあれば、0-97km/h加速で5秒の壁を破れるだろう。
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