■4輪ゲレンデヴァーゲンの最高峰
新型コロナウイルスの影響によりオンライン限定とされた「OPEN ROAD FEBRUALY」オークションは、同社の北米本社および欧州本社の双方から出品がおこなわれ、そのアイテム数は自動車だけでも108台に及んだ。
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そのなかで今回VAGUEが注目したのは、日本を含む全世界で大人気のクロスカントリーカー、メルセデス・ベンツの「ゲレンデヴァーゲン」こと「Gクラス」のなかでも、とくにエクストリームな「G500 4×4スクエアード」である。
「4×4 2(2乗の意)」と書いて「フォー・バイ・フォー・スクエアード」と読むこのモデル、RMサザビーズの公式WEBカタログ上においても「メルセデス・ベンツのスタンダードGヴァーゲンでは充分に目立つことできないとお考えの方にも、このG500スクエアードならば確実に群衆から目立つことができると保証します」と麗々しく謳われた、まさに特別なゲレンデヴァーゲンなのだ。
●2017 メルセデス・ベンツ「G500 4×4スクエアード」
2015年2月にデビューしたメルセデス・ベンツ「G500 4×4スクエアード」は、その前年にあたる2014年に発表された6輪モデル「G63 AMG 6×6」に続くスーパーオフロードヴィークルである。
同じメルセデスでも「UNIMOG(ウニモグ)」に匹敵するほどの威容を誇る「AMG 6×6」では、さすがにオーバースペック。そこでもう少しだけ、実用に振ったモデルを求めるリクエストに応じて開発されたといわれている。
その実体は、G63 AMG 6×6の4輪バージョンというべきモデルだった。
フロント/センター/リアにロックも可能な3つの機械式ディファレンシャルを持つ「ポータルアクスル(ハブリダクション機構)」をG63 AMG 6×6から継承したことによって、フロア下の突起物をおおむね取り除いたことと、325/55-22という巨大なタイヤを採用したことによって、最低地上高を450mm(スタンダードG500は210mm)まで大幅アップ。
オフロードで障害物を乗り越えられる性能を大幅に高めている。また渡河性能は1000mmと、スタンダード版G500に比べて400mmアップした。
エクステリアは「モンスター」そのものともいうべきG63 AMG 6×6と比べれば若干穏当なものとなったとはいえ、そのサイズは「メルセデスAMG」ではなく「メルセデス・ベンツ」の初代ゲレンデヴァーゲンとしては史上最大。
スタンダード版G500より全高で270mm、全幅も240mm拡大され、周囲を威圧するかのような威容を誇る。
パワーユニットに選ばれたのは、このモデルのデビュー時にはAMG専用だったツインターボチャージャー付きアルミニウム合金製ブロックのV型8気筒エンジンを搭載。
クロスカントリー用にトルク重視のディチューンが施されてはいたものの、422psのパワーをマークし、7速オートマチックのトランスミッションが組み合わされた。
日本国内では2015年2月から同年5月末までの受注のみが限定で受け付けられ、新車価格は3510万円という「メルセデス・ベンツ」ブランドのGクラスでは例を見ない、史上最高額モデルとなったのである。
■新車当時3510万円だった「Gクラス」の売り出し価格は?
RMサザビーズ「OPEN ROAD FEBRUALY」オークションに、同社の欧州本社から出品されたメルセデス・ベンツG500 4×4スクエアードは、中東の産油国クウェートにおいて、現在に至る唯一のオーナーに新車としてデリバリーされた個体である。
●2017 メルセデス・ベンツ「G500 4×4スクエアード」
少々話題は脱線するが、筆者は2010年2月にクウェートでおこなわれたクラシックカーの祭典「第1回クウェート・コンクール・デレガンス」に招かれ、かの地で約一週間を過ごしたことがある。
この滞在期間中、海外からの招待客にはクウェートの文化に触れるアトラクションの数々も設けられたのだが、なかでも目玉となったのは、首都クウェートシティ近隣の砂漠地帯に特設された豪華テントでおこなわれる昼食会+アウトドア体験だった。
この時に現地の人から聞いたところによると、中東の王族をはじめとする富裕層は、もともと砂漠の遊牧民「ベドウィン」の血脈を受け継いでいることに誇りを持っており、週末には近隣の砂漠で巨大なテントを設営して過ごすことも多いとのことだった。
この砂漠ヴァカンスに向かうためのアシとなるのが、高級なSUVないしはクロスカントリーカーたち。ショーファー任せではなく、オーナー自ら運転することが美徳とされていると聞いたが、当時からトヨタ「ランドクルーザー200」やレクサス「LX」、あるいはレンジローバーなどが絶大な人気を誇る傍らで、スタンダード/AMG版を問わずメルセデスGヴァーゲンは少々小さすぎると評されていたようだ。
かつては砂漠で行動をともにするラクダの血統や見栄えにこだわったという彼らは、クロスカントリーカーにもエクスクルーシブな特性を求め、レンジローバーやランドクルーザー以上に目立つことのできるクルマを熱望していた。
それゆえベントレー「ベンテイガ」やロールスロイス「カリナン」、あるいはランボルギーニ「ウルス」などの登場前夜だった時代において、特別に仕立てられたGヴァーゲン「G500 4×4スクエアード」がクウェートの贅沢な顧客に対する訴求力を備えていたことは間違いないと思われる。
そろそろ本題に戻ろう。今回の出品車両はオニキスブラック・メタリックのボディカラーに、メルセデスのビスポークブランド「デジーノ(Designo)」仕立てのブラック本革レザー製インテリアを組み合わせる。
そして、砂漠の王者となるべくクウェートにデリバリーされたにもかかわらず、現在に至るまでの走行距離は1800km足らずという。
つまり、ほとんど乗られることがなかったことから、製作から4年を経た今なお、エクステリア/インテリアともども新車そのままのコンディションを維持している。
加えて、サンルーフや「ハーマン・カードン」社製サウンドシステムを含むエキストラオプションが組み込まれているが、おそらくもっとも重要な装備はこのモンスターの駐車を支援するためのリアビューカメラといえるだろう。
このエクストリームな1台に対して、RMサザビーズ欧州本社は15万-20万ユーロのエスティメート(推定落札価格)を設定した。そしてオンライン限定の競売では、締め切り前2時間半となっても最高額は10万ユーロにとどまった。
締め切り時までにもビッド(入札)は12件のみで、最高額は12万5000ユーロ、つまり日本円にして約1600万円に終わったことから、残念ながら落札には至らなかった。
現在ではRMサザビーズ欧州本社の営業部門によって、個別の顧客を対象とした「Still For Sale(継続販売)」の真っ最中。価格は15万5000ユーロ(邦貨換算約2000万円)となっている。
5年前の新車時には3000万円以上で販売されていたこと、そして現状でも新車同様のコンディションを維持していることを思えば、予想される販売価格はリーズナブルといえなくもないが、やはりこの種の「顧客を選ぶ」クルマのビジネスが一筋縄ではいかないことを、如実に示しているかにも思われるオークション結果であった。
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みんなのコメント
なるかっ!
3台くらい頂こうかしら。