街のニュースになるほどハンサム
text:John Evans(ジョン・エバンス)
translation:KENJI Nakajima(中嶋健治)
ピーター・スティーブンスがボディデザインを手掛けたエスプリ・ターボが発表されたのは1987年。どんな印象を抱いたか、覚えている読者はいるだろうか。
ジョルジェット・ジウジアーロがデザインしたロータス・エスプリも、素晴らしく格好良かった。だが、スティーブンスのデザインも存在感が強く、空力重視の未来的なフォルムだ。30年以上たった今でも、その新鮮さや魅力は、衰えることがないように思う。
だいぶ昔、筆者の隣人がまっさらなエスプリ・ターボを購入した。カリプソ・レッドのボディに、クリーム色のレザー内装が記憶深い。筆者が住んでいた静かな街へやって来たエスプリは、一大ニュース的な存在感があった。
今でも、自宅前のガレージに1台のエスプリを停めれば、似たような反応が得られるだろう。隣近所の話題になること請け合いだ。
エンジンが、2.2Lの4気筒ターボだということに引け目を感じることはない。ポルシェ718ケイマンにだって、2.0Lの4気筒ターボユニットが載っているのだから。
1987年登場のロータス・エスプリ・ターボは、メカニズム的には先代と大きな違いはない。ホイール側に取り付けられたリアブレーキと、ルノー製5速トランスアクスル程度の差といえる。
FRP製のボディの仕上がりは、新しい樹脂抽出技術によって改善。インテリアやハンドリング、動力性能も、当時の最新の内容へアップデートされている。
タイプ910と呼ばれるエンジンは、ギャレット製T3ターボによって過給。ボッシュ製のKジェトロニック・フューエルインジェクションを採用し、最高出力は218psを発揮した。
適切なメンテナンスで得られる信頼性
現代の2.0Lターボエンジンが生み出すパワーと比べれば控えめながら、0-100km/h加速は5.3秒でこなす。車重が1270kgと軽量なおかげだ。
1989年になると、さらにアップデートされたターボSEが登場する。インタークーラーとマルチポイント・フューエルインジェクションを採用し、267psを発生。0-100km/h加速を4.9秒へと縮めた。大きなリアウイングが、見た目の違いでもある。
さらに1993年になるとスポーツ300が、S4をベースとするスポーツ300に続いて登場。306psのエンジンに、強調されたスポイラーとホイールアーチをまとう。50台ほど製造され、近年では最も需要が高い。
1993年に登場したエスプリS4は、ジャガーのデザインを率いていたジュリアン・トムソンの手によって、新鮮で進化性を感じさせるデザインを得た。パワーステアリングを標準装備した初めてのエスプリでもあり、ボクソールからインテリア部品の一部を提供してもらっている。
エンジンはSEターボと同じもので、267psを発揮。1994年には、304psのS4 Sが後継モデルとして登場している。
エスプリ・ターボとして最後のモデルとなるのが、1996年に登場したGT3。軽量化が図られているが、最高出力は243psに留まる。しかしハンドリングは、エスプリ・ターボの中でベストの評判となっている。
専門ショップによれば、適切なメンテナンスさえしていえば、ロータス・エスプリ・ターボは信頼性のあるスーパーカーだという。深刻な不具合も生じないそうだ。
まだ価格は法外には上がっていない。良好なエスプリ・ターボを妥当な価格で手に入れ、ハンサムな姿に酔いしれるのも悪くない。
不具合を起こしやすいポイント
エンジン
9600km毎のメンテナンスが行われてきたか、主要ディーラーや専門ショップによるものかどうかを確かめたい。締め付けトルクの設定を含め、専門知識が求められるクルマだ。
エンジンをかけ、油圧と3つの冷却ファンが動くことを確かめる。エンジンオイルにフルードが混ざり、乳化していないかも確認する。ガスケットの劣化を示している。
すべてのホースやパイプ類の状態も観察したい。エグゾースト・マニフォールドからの排気漏れにも注意。
ターボ
しばらく走らないでいると、ターボのウェイストゲートが詰まる可能性がある。試乗する際は、ブースト圧が高まりすぎないように、アクセル操作は穏やかにしたい。
アクセルを踏み込んだ際、排気ガスに白煙が混ざらないかも見ておく。
トランスミッション
オリジナルの油圧クラッチ・ホースは赤色。強化された代替品に交換されていることもある。シンクロの摩耗状態を確かめる。やや引っかかりがあるのは、ルノー製トランスミッションの性格だ。
サスペンション
最近交換されていない限り、ブッシュ類とダンパーは交換前提でいたい。試乗すれば、劣化具合もわかるはず。
ボディとシャシー
サスペンション・マウント周りの腐食を確かめる。通常なら、亜鉛メッキされたシャシーは錆びにくい。リトラクタブル・ヘッドライトの動作も確認する。
インテリア
車内の見た目が美しいだけで、ほかの欠点が気にならなくなる場合がある。電動ミラーやパワーウインドウの修理は、安く済まない。
専門家の意見を聞いてみる
ポール・クラグストン UKスポーツカーズ代表
「これまで数え切れないほどのロータス・エスプリに乗り、販売してきました。素晴らしいクルマです。しっかりメンテナンスしてあれば信頼性は高く、16万km以上でも問題なく走れます」
「ただ、流石にそこまで走れば、サスペンションやブレーキのオーバーホールが必要です。リビルトされたエンジンは、オリジナルほどスムーズではない場合も。オイルの消費量にも注意したいですね」
「ステアリングに違和感がないことも、確認したいポイント。パワーステアリングは1994年から標準装備となりました。私のお気に入りは、S4とS4 S、GT3です」
知っておくべきこと
英国のロータス・エスプリ・ワールドというサイトでは、エスプリの売買や所有に関する、有用な情報が得られる。モデルによる入手のし安さや信頼性、試乗する際の注意点なども詳しく載っている。
健全なエスプリと修理が必要なクルマとの、試乗時の感じ方の違いなどは、購入前に目を通しておきたい。
いくら払うべき?
8000ポンド(106万円)~1万7999ポンド(239万円)
初期の状態の良いエスプリ・ターボが英国では見つかる。オークションでなら、お得に買える場合も。
1万8000ポンド(240万円)~2万2999ポンド(304万円)
英国では、12万8000km以下の走行距離で、状態の良いクルマが見つかる。
2万3000ポンド(305万円)~2万9999ポンド(399万円)
1989年以降のターボSEで、走行距離は9万6000km前後。S4とS4 Sは、この価格帯の終わりの方から出てくる。
3万ポンド(400万円)~3万4999ポンド(464万円)
かなり状態の良い、S4とS4 S、GT3。
3万5000ポンド(465万円)以上
レアで低走行距離のクルマ。コンクール・コンディションのエスプリ・ターボも。
英国で掘り出し物を発見
ロータス・エスプリ・ターボ 登録:1988年 走行:9万100km 価格:2万2995ポンド(305万円)
フルレーザーのインテリアに、タルガトップ・ルーフの付いた、ロータス専門店が売る車両。フロントガラスは新しく、ブレーキホースやサーボ、サスペンション・ブッシュ、ターボチャージャーと補機パイプ類も交換済み。エンジンはテストされ、スムーズでオイル漏れなどもないようだ。
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