■トヨタの新型「和製スーパーカー」まもなく登場へ?
「モータースポーツ現場からの市販車作り」。市販車と同じ構造を持つレーシングカーやラリーカーは一般的に、まず市販モデルを作ってそれをベースにモータースポーツ用車両を開発します。
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しかし、そんな常識とはちょっと違うのがトヨタのモータースポーツブランドである「GR」の一部の超高性能モデルの考え方です。
まずモータースポーツでの戦闘力を高めることを前提に、モータースポーツの現場で知見を高め、それを織り込んで市販の量産モデルを設計し、モータースポーツ用車両と量産車の両方に活かすというのです。
たとえば「GRヤリス」。ラリーで戦うことを大前提とし、車体構造から運転環境まで競技での使用を前提とした設計が施されています。
また、インタークーラーを飛び石から守るために、その前にあるネットを破損しやすい樹脂製から丈夫な金属製に変更するといった、モータースポーツ現場からフィードバックを受けた細かい改良を施して進化していることをご存じの人も多いでしょう。
さて、そんなGRブランドですが、2022年春の「東京オートサロン」で発表された「GR GT3 コンセプト」というクルマを覚えている人もいるに違いありません。
これも、「市販化する」として披露されたコンセプトモデルです。
まずはレースカテゴリーの「GT3」の基準を満たしてレースに参戦することを前提として開発し、その「公道バージョンも市販する」という通常の流れとは逆パターンが公言されています。
東京オートサロン2022に展示した際のGR GT3 コンセプトのスペックは全長4590mm×全幅2040mmで全高は1140mm。ホイールベースは2725mmとされています。
そんなGR GT3のようなモデルが先日、偽装をまとった姿で「TOYOTA GT Concept」として大勢の人たちの前に現れました。
2025年7月10日、イギリスでおこなわれたモータースポーツの祭典「グッドウッド・フェスティバル・オブ・スピード」でデモランをおこなったのです。興味深いのは「仕様の異なる2台」があったこと。
1台はレーシングバージョン、そしてもう1台はロードカー(公道走行)バージョンと思われ、両者は巨大なリヤウイングの有無だけでなくフロントバンパーの形状なども異なるデザイン。
いずれにせよ、ワイドかつ背が低いことから、まるで海を泳ぐ“エイ”のように低く構えた平べったいプロポーションが独特です。
公式発表はありませんが、キャビンの位置からして、かつてレクサス「LFA」がそうだったようにフロント(フロントミッドシップ)にエンジンを置き、後輪を駆動するドライブトレインであることは明らかでしょう。
高性能スポーツカーといえば「ランボルギーニ」や「フェラーリ」のようにエンジンを後方に置くミッドシップをイメージする人も多いかもしれませんが、「アストンマーチン」の各モデルやメルセデスAMG「GT」のように世界にはフロントにエンジンを積むモデルも多く存在。
フェラーリにだってフロントエンジンのモデルはあるし、日産「GT-R」だってフロントエンジンです。
いっぽうで現在のところ情報がなく、見た目からも判断できないのがエンジンルームに収まるエンジンです。
一部では「V型8気筒ツインターボエンジン」という報道もあり、さらに「ロードバージョンにはハイブリッドも備わる」という噂レベルの情報もあります。果たしてどうなるか楽しみなところです。
今回、グッドウッドでデモ走行をおこなったことから「近づいている」と推測できるのは発売時期。
走行シーンを観客に見せ、世界中に存在をアピールし始めたということは、正式発表もそう遠くないということが理解できます。
1年以内には正式に公開し、遅くとも2年以内にロードバージョンのデリバリー開始といった流れではないでしょうか。もしかすると来年年明けの「東京オートサロン2026」で正式モデルを公開……なんてことも考えられなくはありません。
生産に関してはこのモデルもGRヤリスや「GRカローラ」と同様に、元町工場にあるGR専用ラインで作ることとなるでしょう。
車両組み立て工場で一般的となっているコンベアラインではなく、台車に乗せて車体を移動させながらくみ上げていくこのラインは、1台当たりの作業にかかる時間の自由度が高いのが特徴。
特別に手のかかる車両の生産に適した特別なラインで、かつてはLFAもここで作られました。
現在はGRヤリスやGRカローラ、そしてレクサス「LBX」の高性能仕様「MORIZO RR」はすべてこの特別なラインで作られていますが、どれも人気を博しており、生産キャパシティには全く余裕がない状況。
ここへきて「GRカローラの生産を一部イギリスへ移す」という報道がでてきましたが(トヨタの公式発表ではない)、それも「生産ラインにGR GT3を流せる余裕を作るため」と考えれば繋がります。
欧州のスーパースポーツたちとガチで戦える和製マシンの登場を、期待しつつ待ちましょう。(工藤貴宏)
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