走行性能に圧倒的な信頼を置かれている我らがマツダ。各カテゴリーにトップクラスの実力を持ち、ユーザーに愛される大きな魅力のひとつとなっているが、その売上のほとんどは8割以上海外市場が持っている。ではなぜ国内シェアがこんなにも低いのか? 理由を探っていこう。
※本稿は2024年2月のものです
文/渡辺陽一郎、写真/MAZDA
初出:『ベストカー』2024年3月26日号
決算の数字は良好に見えるんだけど……お家芸のディーゼルも電動化には抗えなかった! 販売台数が伸び悩むマツダの苦悩
■決算の数字は良好だが販売台数は……?
多くの魅力的なクルマをラインナップするマツダだが、その魅力が販売台数に結びついているとはいい難い
車名ベースでいうと、2024年2月現在マツダの国内ラインナップは10モデル(軽のOEM除く)。そのうち他社の競合車と販売台数で張り合えているのはCX-5くらいというのが現実である。
決算の数字はいいのだが、そのへんが心配になるところ。Q&A形式で渡辺陽一郎氏に検証をお願いした。
■CX-5が今なお一番売れている理由は?
コスパの高いCX-5は、年次改良で商品性を落とさない施策も光る
現行CX-5は発売から約7年を経過するが販売は好調だ。2023年に国内で最も多く売られたマツダ車となった。人気の理由は、実用性が優れ、質感も相応に高く、価格が割安になるからだ。
ボディサイズは全幅が1845mmと少しワイドだが、全長は4575mmで、最小回転半径も5.5mに収まる。車内は相応に広く、身長170cmの大人4名が乗車して、後席に座る乗員の膝先には握りコブシが2つ収まる。荷室容量にも余裕があり、ファミリーカーとして使いやすい。
しかも価格が割安で、CX-5に2Lガソリンエンジンを搭載する20Sブラックトーンエディション2WDは323万9500円だ。コンパクトなCX-30・20Sブラックトーンエディション2WDの場合、運転席の電動調節機能などを加えて装備をCX-5と同等にすると、合計価格は305万6900円になる。
CX-30にはマイルドハイブリッドが備わるものの、価格差は約18万円と小さい。つまりマツダのSUV同士で比べてもCX-5は買い得だ。
しかもCX-5では、約32万円を加えるとクリーンディーゼルターボを購入できる。最大トルクは4.5Lのガソリンエンジンに相当する45.9kgmだから、底力のある加速感が魅力で、走りの楽しいマツダのブランドイメージにも合っている。しかも燃料代はハイブリッド並みに安い。
■MX-30ロータリーEVのいいところと残念なところ
発電専用とはいえ、ロータリーの復活は最高のプレゼントだ
従来のMX-30の登録台数は、1カ月当たり100台以下だった。それが2023年11月には、約10倍の711台に急増した。ロータリーEVを加えた効果だ。12月は300台以下に減ったが、一時的でも人気を高めた。
その理由は、発電用ではあるがロータリーエンジンを搭載するからだ。ロータリーエンジンの熱烈なファンとしては、三角形のローターが回転しているだけで購入に値する。そこがMX-30ロータリーEVの最もいいところ、一番の魅力でもある。
しかしロータリーエンジンに興味はあっても、熱烈なファンではないユーザーは評価も違ってくる。ロータリーエンジンは発電を行い、駆動するのはモーターだから、RX-8などで感じたロータリーエンジンの直線的な吹き上がりは味わえない。ロータリーとは思えない濁ったノイズも聞こえる。
以前のホイールを駆動したロータリーエンジンは、2ローターか3ローターだったが、MX-30ロータリーEVは1ローターだ。いわば単気筒エンジンで、振動を打ち消し合うことができない。
また、充電した電気を使い果たして、ロータリーエンジンで駆動するハイブリッド車として走る時は、WLTCモード燃費が15.4km/Lだ。MX-30マイルドハイブリッドの15.6km/Lを下まわり燃費効率の悪さも欠点になる。
■マツダ3の存在感が薄いのはどうしてなのか?
SUVブームの今、Cセグハッチバックは売り方が難しい。街で見かけるとハッとするほどかっこいいのだが……
マツダ3の主力は5ドアのファストバックだ。このカテゴリーにはインプレッサやカローラスポーツもあるが、プリウス以外は販売が低調だ。
インプレッサも登録台数の約70%を共通のボディを使うクロストレックが占める。日本では5ナンバーサイズのコンパクトカーが人気で、3ナンバー車のハッチバックは売りにくい。特にマツダ3は、運転感覚は優れているが後席が狭く、価格は割高で低迷する。
■CX-60が期待ほど売れていないのはなぜ?
サイズのわりに後席がCX-5と同等なのは厳しいところだ……
CX-60は後輪駆動の新しいプラットフォームを使ったSUVで2022年に登場した。それなのに2023年の登録台数は2017年に発売されたCX-5を下まわる。新型車なのにCX-60が売れない背景には複数の理由がある。
その筆頭はCX-5と比較されること。CX-60の全長はCX-5よりも165mm長いが、後席の足元空間など車内の広さに大差はない。CX-60は直6エンジンを縦置きにするため、ボンネットが長いからだ。
外観のカッコよさや後輪駆動の優れた走行性能を重視するならCX-60の魅力も際立つが、そうでない場合はCX-5が合理的な選択になる。またCX-60の全幅は1890mmとワイドだ。CX-5も1845mmに達するが、駐車場に入れた時の乗降性などは45mmの違いが使い勝手に影響を与える。
価格帯も高い。CX-5なら2.2Lクリーンディーゼルターボを搭載する355万8500円のXDブラックトーンエディション2WDでも充分に満足できるが、CX-60は異なる。Sパッケージ以下のグレードは、インパネ周辺の上質感が乏しい。
そうなると選択の対象は中級グレード以上で、CX-60に3.3Lクリーンディーゼルターボを搭載したXD・Lパッケージ2WDは422万4000円だ。CX-60の実用性はCX-5に近いが、価格帯は70万円ほど高く、売れゆきも低迷している。
■なぜマツダはコンパクトカーで稼がないのか?
登場から10年目。さすがに現行型を売り続けるのは厳しいのでは?
各メーカーともコンパクトカーの販売は好調だが、マツダ2は伸び悩む。2023年の登録台数は、CX-5とCX-30を下まわり、国内で販売されたマツダ車の3位だった。2023年の1カ月平均登録台数は約1700台だから、ヤリス(ヤリスクロスやGRヤリスを除く)の約22%に留まった。
マツダがコンパクトカーで稼げない理由は、車種がマツダ2に限られるからだ。コンパクトカーには運転のしやすさ、広い車内や使いやすい荷室、燃料代や価格の安さなどが求められる。
ところがマツダ2はほとんど該当しない。全長は約4mで小回りの利きもいいが、サイドウィンドウの下端を後ろへ大きく持ち上げたから斜め後方の視界は悪い。外観がスポーティに見えて、ユーザーによっては運転しにくく感じる。
後席は狭く、身長170cmの大人4名が乗車して、後席に座る乗員の頭上空間は握りコブシの半分程度で膝先空間は握りコブシ1つ分だ。フィットの膝先は握りコブシ2つ半だから大幅に狭い。
価格もベーシックな15BDに運転支援機能などを装着してライバル車と条件を合わせると180万7300円だ。センターディスプレイも加えると約192万円になる。走行性能はコンパクトカーの最高水準だが、このカテゴリーのニーズに合っていない。
■CX-3は、なぜここまで落ち込んでしまったのか?
CX-3も9年目に突入。なぜかマツダはコンパクトカーを放置する
CX-3が2015年に登場した時は、1.5Lクリーンディーゼルターボのみを搭載したが、買い得な先代CX-5に比べると割高で販売も伸び悩んだ。
2Lガソリンを加えても回復しなかったが、1.5Lガソリンを格安の200万円以下で用意すると注目され、2020年6月は前年の1.5倍登録された。しかし次第に2019年登場のCX-30に顧客を奪われ、同年8月にはヤリスクロスも発売されてヒットし、今では低迷している。
■今のマツダに必要なクルマとは?
マツダ車の走行性能は、各カテゴリーの最高水準だ。ロードスターの走りが好みなら、すべてのマツダ車を愛せるだろう。ユーザーの「マツダ愛」は深い。それなのに売れゆきは低調だ。
マツダは2010年に国内で約22万台を販売したが、2012年に魂動デザインとSKYACTIV技術による商品構成に移行すると、売れゆきを下げた。2023年も約18万台に留まる。
特定の顧客を対象に、趣味性の強い商品を揃えるメーカーがあってもいいが、マツダは満足できない。「従来の魂動デザインを選ばなかったお客様を振り向かせたい」と、リラックス感覚で市販された商品がMX-30だ。
殺伐とした今の時代に、2代目デミオコージーのような柔和な雰囲気を表現したクルマを造れば、共感を得られるに違いない。
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みんなのコメント
SUVばかりもあるのでは?
社外に変更出来るなら許せるが、こんなゴミ一択なんてありえない。
次は絶対マツダ買わない。