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アルファロメオ・ステルヴィオで越える、アルプスの名所“ステルヴィオ峠”【試乗記】

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アルファロメオ・ステルヴィオで越える、アルプスの名所“ステルヴィオ峠”【試乗記】

Alfa Romeo STELVIO

アルファロメオ・ステルヴィオ

アルファロメオ・ステルヴィオで越える、アルプスの名所“ステルヴィオ峠”【試乗記】

アルファロメオブランド初のSUVが名を借りた名所

アルファロメオの歴史を凝縮する博物館「ムゼオ アルファロメオ」から、その最新モデルとなるステルヴィオ(2.2リッター直噴ディーゼルターボ)と、ジュリア(2.0リッターガソリンターボ)モデルを駆りだし約300kmの道のりを走った。

目指すは“Passo dello STELVIO”。そう、その名前の由来ともなったアルプス山中の名所ステルヴィオ峠を、アルファロメオ・ステルヴィオで走ることがこの旅のハイライトだったのだ。

ステルヴィオは、1910年創業という長い歴史のなかでアルファロメオが初めて放つSUVだ。しかし、そのキレ味鋭い走りは発表当初から高く評価され、キャリアを感じさせない鮮烈なデビューを飾った。

それもそのはずステルヴィオのベースとなるのは、伝説のネーミングをまとって見事な復活を果たした「ジュリア」なのだ。というわけでここではまず、ジュリアの素晴らしさから述べてみたい。

ステルヴィオのキレ味はジュリアあってのもの

ジュリアの素晴らしさをひとことで表せば、それはまさに成熟され尽くしたアルファロメオのハンドリングに尽きる。そしてその根幹にあるのは、なんといっても「フロントエンジン・リヤドライブ=FR」の復活だと私は思っている。

巨額の資本投下を経て誕生した「ジョルジオ・プラットフォーム」の功績は確かに大きい。しかし「FFかFRか?」という議論がもはやマニアの独り言になってしまった今日において、それでも敢えてFRに回帰したことが、現在のアルファロメオを支える精神的な支柱になっているのである。

この想いは果たして、ヨーロッパの大地をジュリアで駆け巡ることによって、より確かなものとなった。街中はイタリア流のワンハンドステアさえ許す軽やかなステアリングさばきで狭い路地をクリアし、ランナバウトを軽快にクルッと回る。そしてひとたびアウトストラーダに入れば、その猫のような身のこなしからは想像できないほど高い直進安定性を、上限130km/hの流れの中で披露する。

好ハンドリングの根幹はシャシー性能にあり

ジュリアが持つその本質を、より色濃く理解できたのはアルプスの山々に足を踏み入れてからだった。一見してステアリングの切り始めには、12:1という超絶クイックなステアリングギヤレシオが大きく影響しているかのように思える。

しかし本質的な曲がりやすさを実現しているのは、そのシャシー性能だ。絶妙なストローク量を確保するサスペンションを荷重移動によってスムーズに動かすそのジオメトリーであり、前後に渡る可視化できないロールセンター軸の傾斜だと感じた。

そしてコーナリングでのリズムを作る段になると、フロントエンジン・リヤドライブの良さが俄然際立ってくる。前後重量配分の適正さゆえ、過大なフロントタイヤへの依存もなく極めて自然にノーズが内側へと入り、コーナーではアクセルによってその姿勢をバランスさせることができる。そしてコーナー出口からこれを踏み込んでいけば、ターボながらもキレのある吹け上がりで、かつてのNAエンジンほどではないにしても気持ち良い加速を味わわせてくれる。

再現された“伝統のFR”をベースとする4WD

ミニバンでは得られない、セダンならではの低い重心。まさにジュリアとダンスを踊っているような気持ちにさせられる、柔軟性のあるコーナリング。こうした走りこそ、アルファロメオがFR時代に伝統としていた身のこなしなのだ。だからこそ彼らは、再起を賭けるためにFRレイアウトの復活を選んだのだと思う。

同時に長らくFRレイアウトが途絶えていたにも関わらず、これを再現したアルファロメオのテストドライバーたちには本当に感心させられる。もはやジュリアはBMW 3シリーズに匹敵する走りを得ていると思う。そしてこのFRの走りを支えるためにこそ、ジョルジオ・プラットフォームは開発されたのである。

ジュリア譲りの研ぎ澄まされたパフォーマンス

そんなジュリアをベースにしているからこそ、ステルヴィオの走りは研ぎ澄まされているのだ。アルファロメオ自身が「まんま65mm車高を上げただけだ」と言い放つのは単なる流用という怠慢ではなく、ジュリアのアーキテクチャーに大きな自信を持っているからに他ならない。

SUVであるステルヴィオは、ジュリアと比較すれば重心が高い。しかしその足まわりは必要以上に固められることなく敢えてロールを残して、その重心移動を旋回へのきっかけとして巧みに利用している。

そしてこの巨体を自在に振り回すときにこそ、12:1のステアリングギヤレシオが活きてくる。折りしもステルヴィオ峠最大の名所であるジグザグのつづら折りで、アルファロメオのステルヴィオは“アンダーステア知らず”と呼べるハンドリングを見せつけた。ブレーキングからターンインにかけて、タイヤすら鳴かせることなく面白いようにそのSUVボディをターンさせ、ディーゼルエンジンをもって急な坂道を駆け上って行くのだ。

高いスポーツ性能を誇る真の“SUV”モデル

これには最大でフロントに50%のトルクを配分する4WDの恩恵も大きい。通常はフロントのトルクを全く意識させることなく旋回性能に貢献し、ここぞという場面でトラクション性能を発揮するFRベースの4WDシステムが、ステルヴィオをスポーツSUVの域にまで高めているのである。

ヘアピンカーブと直線をつないだだけの坂道は、正直ワインディングと呼ぶにはあまりに単調だったが、ここが断崖に築かれたアルプスの生活道路であることや、「ジーロ・デ・イタリア」を始めとした数々のロードレースに用いられる舞台だということを身をもって知ると、その感慨もひとしおだった。

もちろん自動車黎明期においては開発の舞台となり得ただろうが、そのステルヴィオという名前は印象的なつづら折りの名所をもってアルプスの山々を、ひいてはステルヴィオの運動性能の高さを想起させるためにアルファロメオが引用したものなのだろう。BMWで言えばアルピナがそれに当たり、ルノーで言えばアルピーヌ。それだけヨーロッパの人々にとってこの山々は身近であり偉大な存在なのである。

ステルヴィオに息づくヨーロッパの感性

ステルヴィオ峠の頂上に着くと、そこはサイクリストたちのメッカとなっていた。ヨーロッパ中からこの頂きを目指してきた人々が、互いに笑顔を交わし合いながら写真を撮り合い、賑わっていた。

そんな風景を見ていると、当たり前のように自然と溶け込むヨーロピアンたちの気持ちの豊かさを見ているような気がした。アルファロメオの良さは、決してスペックだけでは語れない。その動的質感に対する感動は、こうした人々たちの感性が作り上げているのだと思えた。

REPORT/山田弘樹(Kouki YAMADA)

【SPECIFICATIONS】

アルファロメオ ステルヴィオ 2.2 ターボ ディーゼル Q4

ボディサイズ:全長4690 全幅1905 全高1680mm
ホイールベース:2820mm
トレッド:前1610 後1650mm
車両重量:1820kg

エンジン:直列4気筒ディーゼルターボ
総排気量:2142cc
ボア×ストローク:83.0×99.0mm
圧縮比:15.5
最高出力:154kW(210ps)/3500rpm
最大トルク:470Nm/1750rpm
トランスミッション:8速AT
駆動方式:AWD

ステアリング形式:電動アシスト付きラック&ピニオン
サスペンション形式:前ダブルウイッシュボーン 後マルチリンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤサイズ:前後235/60R18

車両本体価格:617万円(税込)

【問い合わせ】

Alfa Contact

TEL 0120-779-159

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