南米大陸連戦を経て、いよいよ豪州大陸に乗り込んできた新生TCRワールドツアーは、TCRオーストラリア・シリーズの終盤2戦に合流。11月3~5日にシドニー・モータースポーツパークでの勝負を迎えた。
そんなクライマックスに向けた豪華ゲストも参戦し、地元の競技規則を採用して週末3ヒートが争われた高密度のレースウイークは、天候のイタズラにも翻弄され赤旗中断や接触アクシデントも続発する波乱満載の展開となるなか、地元シリーズの初代王者ウィル・ブラウン(メルボルン・パフォーマンス・センター/アウディRS3 LMS 2)が世界戦メンバーを撃破。混沌に満ちたデビューレースから連勝を飾り、RSCレプコ・スーパーカー・チャンピオンシップの今季タイトル候補としての非凡さを見せつけた。
1999年フォーミュラ・ニッポン以来、トム・コロネルが約24年ぶり悲願の初戴冠/TCRヨーロッパ最終戦
一方、主要なTCRワールドツアーのライバルたちが苦戦した週末を経て、最終ヒートのレース3で勝利したロブ・ハフ(コムトゥユー・レーシング/アウディRS3 LMS 2)が、選手権首位ノルベルト・ミケリス(BRCヒョンデN スクアドラ・コルセ/ヒョンデ・エラントラN TCR/ヒョンデ・エラントラN TCR)に1点差まで詰め寄るなど、こちらもタイトル戦線に急浮上している。
次週11月10~12日には“聖地”バサーストのマウントパノラマにて連戦。さらに最終戦としてマカオ“ギア・レース”も控えるTCRワールドツアーだが、初上陸のダウンアンダーでは現地のスポーティング規則を取り入れ、週末はナイトレースの3ヒートで最大105ポイント以上の獲得が可能となった。
そのビッグイベントを前に、国内選手権組の昨季王者であるトニー・ダルベルト(ウォール・レーシング)は、現在ランキング4位につけるシリーズでの巻き返しと「世界戦対策」として、ようやくFL5型ホンダ・シビック・タイプR TCRのデリバリーを受けた。
「本当に待ち遠しかったよ」と、新型モデルの南半球到着を歓迎したチャンピオン。「僕らはネストール(・ジロラミ/開発担当)やJASモータースポーツと定期的に連絡を取ってきたが、あらゆるレポートによると新型シビックはすべての面で少しずつ優れているようだ。シドニーとバサースト直前という完璧なタイミングで受け取れて良かったよ」
その到着と前後して、昨季のWTCR世界ツーリングカー・カップでランク2位を獲得した当のジロラミも、南米に続きシビックでのオーストラリア連戦とマカオ出場が決まった。
「こうしてTCRワールドツアーの終盤3戦に挑めて光栄だ。2019年にオーストラリアでのゲスト参戦を具現化してくれたウォール・レーシングに再合流し、当時は週末3ヒートの完全制覇に貢献してくれた、チャンピオンシップ獲得経験のある素晴らしいチームとまた仕事ができるのを楽しみにしている」
■波乱続出のレース1を世界戦デビューのブラウンが制す
こうして始まった週末は、走り出しのウォームアップから地元ジョシュ・バカン(HMOカスタマー・レーシング/ヒョンデ・エラントラN TCR)が先行。続くFP1とFP2こそ世界戦レギュラーの意地を見せたテッド・ビョーク(リンク&コー・シアン・レーシング/リンク&コー03 TCR)がワン・ツー・スリー・フォー体制の先頭で連続首位タイムを記録する。
しかし予選開始と同時に雨粒が落ち始めた旧イースタンクリークは、トップチームがコースインした途端に豪雨へと変化。これによりリンク&コー陣営は満足なフライングラップも計測できず、マ・キンファ(リンク&コー・シアン・レーシング/リンク&コー03 TCR)を除いて全車がQ1敗退を喫してしまう。
同じくジロラミのシビックも12番手でポールポジション決定戦への進出が絶たれるなか、直後に雨は止みQ2開始以降みるみる路面状況が改善していく。そのスイートスポットを捉えたのは地元の古豪ギャリー・ロジャース・モータースポーツ(GRM)所属のベン・バルグワナ(プジョー308 TCR)で、2番手ブラウンをコンマ8秒、ミケル・アズコナ(BRCヒョンデN スクアドラ・コルセ/ヒョンデ・エラントラN TCR/ヒョンデ・エラントラN TCR)を2列目3番手、そしてこちらも地元勢のベイリー・スウィーニー(HMOカスタマー・レーシング/ヒョンデi30 N TCR)をも4番手に退け、本人さえ「衝撃的」な予選最前列を手にした。
そのまま迎えた土曜レース1でも天候による悪条件は続き、ポールシッターはスタートで敢えなく後退すると、続くラップではザック・ソーター(チーム・ソーター・モータースポーツ/アウディRS3 LMS 2)がダメージを負い、セーフティカー(SC)が導入される。
さらにサンティアゴ・ウルティア(リンク&コー・シアン・レーシング/リンク&コー03 TCR)はジロラミのシビックと接触してサスペンション損傷でピットへ。同じく新型シビックとの初陣だったダルベルトは、ターン1でミケリスにヒットされ高速スピンオフを喫してしまう。
波乱はさらに続き、リスタート直後には24台が参戦したグリッドの大多数がターン2でトラックを離れグリーンを滑走、これでアズコナ、マ・キンファの先頭争いに変わるも、ここで全車ウエットタイヤ装着勧告のため赤旗中断となる。
レース再開は前周回のポジションが適用されたことで、ブラウンがトップランを取り戻すと、SCが消灯した後も「ウィービングを繰り返した」として、最後は3位チェッカーを受けた13番手発進のヤン・エルラシェール(リンク&コー・シアン・レーシング/リンク&コー03 TCR)に、レース後5秒加算のペナルティが課される。
さらに2位フィニッシュだったアズコナも、SCピリオドでのウィービングが検証となり、同じく5秒加算で3位に転落。最終的にいずれの波乱も寄せ付けなかったブラウンが初の世界戦をデビューウインで飾り、2位にマ・キンファが続くリザルトとなった。
■レース2も接触多発。アウディが表彰台独占
「本当にクールな事実だ」と混沌のレースを制した初代豪州王者のブラウン。「ワールドツアーの選手たちを前にどこまでやれるか分からなかったし、こんなレースで勝てたことは驚異的だよ。ドライ、ウエット、接触アクシデントにペナルティ、すべてが揃っていたからね(笑)。コンディションが刻々と変化し、リスタートでは僕もミスをした。本当にクレイジーだったけど、幸運にも赤旗が出てくれて後半はギャップを築いてコントロールすることができたよ」
明けた日曜のレース2は前戦トップ10のリバースとなるも、またも混沌とした展開で先頭発進のジロラミが出遅れ、背後のビョークらに飲み込まれていく。
続くラップでシビックRのミッションが息絶え、早くもSC出動となったレースは、前半から接触が多発し、アズコナはオープニングラップでパンク、エルラシェールも背後からジョーダン・コックス(ギャリー・ロジャース・モータースポーツ/プジョー308 TCR)に撃墜されてしまう。
そんな荒れた状況を10番手から生き抜いたブラウンは、ジャンプスタートのアーロン・キャメロン(ギャリー・ロジャース・モータースポーツ/プジョー308 TCR)を捉え、リードを引き継ぐことに成功。2位チェッカーのキャメロンも8位降格となり、ハフとフレデリック・バービッシュ(コムトゥユー・レーシング/アウディRS3 LMS 2)を従え、連勝のブラウンがアウディ独占の表彰台中央に登壇した。
迎えた最終ヒートは、ここまでの総合獲得ポイントでグリッドが決まる地元シリーズ特有の規則が奏功し、スタートでブラウンを撃破したハフがレースを支配。今度はブラウンのタイム加算で2位に上がったミケリスを抑え、優勝のハフが世界戦のスタンディングでも1点差に猛追する展開となった。
「最後のヒートは非常に良いスタートを切ったが、フレッド(バービッシュ)がインサイドにいた。でもターンインのときには彼の姿はなく、ありがたいことにチームメイトが部屋から出て行ってくれたことで、ターン1の主導権を握ることができた」と、レース2の接触で次戦1グリッド降格の処分を受けながら、タイトル戦線の主役に躍り出たハフ。
「そこからはブラウンに注目していた。彼は素晴らしい週末を過ごしていたからね。彼は世界戦のチャンピオンシップを目指してレースをしているわけではないが、僕にとって勝利はこの先のタイトルファイトでの違いを生む。最後はギャップが作れたのも素晴らしかったね!」
これで新生TCRワールドツアーは第7戦を、同TCRオーストラリアは第6戦を終え、前述のとおり続く11月10~12日には“聖地”マウントパノラマでの連戦が組まれている。
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