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【F1チームの戦い方:小松礼雄コラム第3回】温かい歓迎を受けた春の鈴鹿。悔やみきれないミスと、1ストップ戦略で得た自信

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【F1チームの戦い方:小松礼雄コラム第3回】温かい歓迎を受けた春の鈴鹿。悔やみきれないミスと、1ストップ戦略で得た自信

 2024年シーズンで9年目を迎えたハースF1チームと小松礼雄代表。チーム代表として迎えた日本GPでは、これまで以上にファンから温かい歓迎を受けたという。その一方で、鈴鹿は現在のVF-24と最も相性の悪いコースということで、セクター1をどう攻略するかと頭を悩ませていた。入賞にはあと一歩のところで届かずミスもあったというが、自信を得ることもできた日本GPになったと振り返った。そんな日本GPの事情を小松代表が振り返ります。

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ヒュルケンベルグ「2度目のスタートはアンチストールが作業してしまい最悪だった」:ハース F1第4戦決勝

2024年F1第4戦日本GP
#20 ケビン・マグヌッセン 予選18番手/決勝13位
#27 ニコ・ヒュルケンベルグ 予選12番手/決勝11位

 チーム代表に就任して初めてのホームレースでした。これまでもファンの方々には温かく迎えていただきましたが、今年は木曜のピットウォークでも昨年以上にたくさんの方がハースのガレージの前に来てくださって、1時間半ほど写真を撮ったりサインを書いたりしましたが、それでも時間が足りなくて途中で打ち切るのが申し訳ないくらいでした。

 グランプリが始まる前には六本木での『F1 Tokyo Festival』にも呼んでいただき、サーキットでは木曜にステージで琢磨くんと話したり、土曜の前夜祭に出たりと昨年よりもイベント出演の機会は多かったですね。ヨーロッパのチームで初めて日本人としてチーム代表になったということでたくさん応援してくださって、素直に嬉しかったです。ありがとうございました。

 今年はグランプリの開催時期が春に変わり、うちのケータリングのスタッフとか、海外のジャーナリストの人たちが大阪で桜を見たと話していました。ただ個人的な意見で言うと、桜が見れたのは嬉しかったものの、やはり僕は秋の開催の方が好きでした。子供のころに見ていた日本GPはチャンピオンシップが決まることも多かったので、その舞台になっていた点でもよかったですしね。

 働いている側の立場としては、やっぱりシーズン後半になると忙しくて大変で辛い時もあって、そういう時期の楽しみのひとつであった鈴鹿が春の開催になったことで、秋の楽しみがひとつ減ってしまったなという気持ちもあります。これは僕だけではなくて同じ気持ちでいる他のスタッフも多いです。やはりドライバーだけではなくチームメンバーも応援していただけるという点でも鈴鹿は特別だからです。

 日本GPに向けては、前回のコラムでも書いた通り、今のうちのクルマにとって鈴鹿は難しいコースになるだろうと予想していました。セクター1をどう攻略するかが大きな課題でしたが、実際に走り始めると、想像以上とは言いませんがあそこまで遅いという現実を突きつけられるとちょっと厳しかったです。本当はFP2でいろいろと試そうと思っていたことがあったのですが、悪天候で走れず、FP3でも一発のタイムもロングランも本当に遅かったので苦労しました。

 そこからセットアップを変えて予選に臨みましたが、それでも2台ともQ1落ちになる可能性を現実として受け入れざるをえない状況でした。特にケビンは苦労していたのでQ1で新品のソフトタイヤを3セット投入しましたが、それでも18番手が限界でした。

 一方でニコは本当によくやってくれたと思います。なんとか14番手でQ2に進めましたが、それでもQ2では誰に勝てるのかという状況でした。直前のFP3を見ても角田裕毅(RB)やバルテリ・ボッタス(キック・ザウバー)、アレクサンダー・アルボン(ウイリアムズ)など中団のライバルはうちより速かったですからね。

 でもニコと予選の前に話していた時に、ケビンはQ1で3セット使うつもりだけどどうしようかと聞くと、ニコは「Q1は2セットで走って、それでQ2に進んで12番手までいける」と僕に言ったんです。実際にその通りの結果を出してくれて、2回目のランが終わった後には「だから言ったでしょ」なんて言っていましたけど、本当に信じられないような素晴らしいアタックでした。10番手の角田と0.077秒差、11番手のダニエル・リカルド(RB)とも0.022秒差で、そんなところまでいけるとは考えていなかったです。

 後でデータを見てわかったことですが、Q2でのニコはヘアピンで中団勢のライバルだけでなく、カルロス・サインツ(フェラーリ)、フェルナンド・アロンソ(アストンマーティン)、ランド・ノリス(マクラーレン)など上位チームを上回る速さでした。反対にセクター1でうちと同じくらい遅かったのはダウンフォースを削っていたウイリアムズのアルボンだけで、角田やボッタスとはコンマ3秒、高速コーナーで速いマクラーレンのノリスとはコンマ6秒も離れていました。どれだけうちが高速コーナーで遅かったのかが表れていますが、その反面うちはストレートで速いので、それがレースではポジションを守るのに役に立ちました。

■「会心のレースはまだできていない」入賞を阻んだふたつのミス

 残念ながら鈴鹿でポイントを獲ることはできず、決勝レースではふたつのミスがありました。まずひとつ目は、ニコが再スタートを失敗したことです。先に書いたとおりうちはストレートスピードが速いので、予選でいい位置につけてレーススタートで数台を抜き、そこからこのストレートスピードを活かして後続を抑えることができたはずでした。最終的にニコが11位まで順位を上げたことはもちろんよかったですが、そのレースペースがあるなら10位にも入れたでしょうし悔やんでも悔やみきれないミスです。

 もうひとつはケビンのピットストップです。ケビンは18番グリッドからスタートし、再スタートは16番手からでした。タイヤの感触もよくて、ここから入賞を狙うためには1ストップ戦略で走るしかないということで22周目まで引っ張りました。徐々にボッタスが追いついてきましたが、まだ入賞していないキック・ザウバーにはポイントを獲られたくなかったので、ボッタスに抜かれないようにできるだけ長く走る(先にピットインするとオーバーカットされる可能性もあったので)という判断です。

 うちはボッタスに反応してあのタイミングでのピットストップを決めたのですが、ケビンをピットに呼んだのが遅かったということもあってリヤタイヤの準備が間に合わず、ボッタスを抑えることはできたものの同じ周にピットインした角田とランス・ストロール(アストンマーティン)に抜かれてしまいました。うちはガレージ位置が一番ピットエントリー側なので最初に準備ができていないといけないのですが、そのことを計算したうえでのピットストップだったとはいえ、同時にピットインしたチームのなかで作業時間も一番長くかかりました。

 ケビンのピットストップはボッタスのことだけでなく、エステバン・オコン(アルピーヌ)に詰まりたくないということも考えてのものでした。オコンの後ろで詰まらないためにはどうすればいいかを考えればピットストップのタイミングもわかるはずですし、もっとうまく準備ができたのではないかと反省しています。

 日本GPを終えてRBが7ポイント、ハースが4ポイントで選手権の差は広がりました。もしニコが10位に入賞していたら差は1ポイントだったはずなので、そういうところの詰めがまだまだ甘いです。どのレースもチャンピオンシップがかかっていると思ってやらないといけないとチームには伝えていますが、すべてをまとめ上げた会心のレースというのはまだできていません。後方から10位、11位を争えたのはポジティブな点ですが、いつ1ポイントを獲れるかわからないし、うちが獲れなければライバルにポイントを渡すことになるこの状況は、将来もっと競争力のあるクルマを手にしてさらに高いレベルで戦うための試練だと前向きに捉えています。

 それに、今回ケビンが事実上の1ストップで走り切ることができたというのは自信になりました。日曜は週末の3日間のなかで最も気温が高く、ハードタイヤにとっては好都合ですが、ミディアムタイヤがダメになるのも早いので、あそこまで走れたのは予想外でした。現状のクルマに一番合っていない鈴鹿でここまでやれるなら、ほかのサーキットではもっとやれるだろうと思います。

 次の中国GPでは、アップデートの最初のパーツを投入します。中国、マイアミ、イモラと3戦続けてアップデートを行う予定ですが、中国GPはスプリントレースがあるので今回のように持ち込みのセットアップを失敗すると致命傷になります。そうならないように鈴鹿での反省点を活かさなければいけません。マイアミもスプリントなので、次の2戦はよほどひどいデータが出ない限りアップデートがうまくいっていると仮定してやっていくことになりリスクもありますが、これだけ中団勢が拮抗しているので今僕たちのもっているプロセスを信じて投入することに決めました。

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