リアシートの付いたクラシック・フェラーリ
text:Felix Page(フェリックス・ペイジ)
【画像】フェラーリ・モンディアル 最新4シーター、ローマ、ポルトフィーノと比較 全75枚
translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)
先に触れておこう。フェラーリ・モンディアルの0-100km/h加速時間は、最新のフォード・フィエスタSTやマツダ・ロードスターと大差ない。車重が1t近く多いポルシェ・カイエン・ターボS Eハイブリッドなら、簡単に追い越せる。
最もパワフルな仕様でも、最高出力は300ps。一般的な手に届きやすいモンディアルなら、218psしか得られない。
1980年代のクラシック・フェラーリではある。しかし同世代の288 GTOのようなホモロゲーション・モデルでもないし、手懐けるのが難しいアナログな宇宙船、テスタロッサとも違う。
モンディアルという名前は、イタリア語のアクセントならかなりエキゾチックに聞こえる。ところが世界水準の安全性や環境規制に準拠したモデルとして誕生し、バーで自慢できるような激しさは備わっていない。
かといって、見過ごさないで欲しい。モンディアルの後ろを観察すれば、小さなリアシートがあることがわかる。同時期のフェラーリより、使い勝手では優れている。
英国では3万ポンド(450万円)ほど出せば、状態の悪くない例が見つかる。入手しやすい跳ね馬なのだ。
何より忘れたくない事実は、ミドシップされているのがマラネロで設計されたフラットプレーン・クランクの自然吸気V8エンジンだということ。サウンドは、知らない人が聞けばハイパフォーマンス・フェラーリだと納得させるのに充分以上だ。
特にトゥビやラリーニのマフラーなら、間違いなく効果的。落ち着いた印象のスタイリングとは、少し不釣り合いかもしれないけれど。
ハンドリングはフェラーリの期待通り
サスペンション・ブッシュやボールジョイントが新鮮な状態なら、活き活きとカーブの続く道を走ってくれる。ハンドリングはフェラーリの期待通り。ミドシップだから、重心位置や前後の重量配分も申し分ない。
4シーターのモンディアルが登場したのは1980年。当初モンディアル8として発表され、V8エンジンは3.0L。比較的安価に手に入るが、より高性能を望むなら4バルブのクアトロバルボーレがいい。1982年に登場している。
1985年には排気量が3.2Lに拡大された。とっておきを選びたいなら、1989年に追加されたモンディアルT。1993年のモデル終了まで生産されている。
モンディアルの最終形態として、Tでは排気量が3.4Lへアップ。0-97km/h加速5.2秒と、動的性能も目に見えて向上している。
1983年にはコンバーチブルも追加されたが、ソフトトップの収納構造がリアシートの空間を狭めている。家族全員で、1台の跳ね馬に乗るのは難しいかもしれない。
そもそもフェラーリ・ファンがモンディアルを評価しなかった理由の1つは、冴えないパフォーマンスにあった。また6000台以上という堅調な販売も特別感を薄め、マニアからは敬遠された。
しかし筆者は、民主化されたフェラーリでも気にする必要はないと思う。250 GTOに520万ポンド(7億8000万円)の値段がつく時代。古いフェラーリを手頃に入手できるのなら、歓迎すべきことだ。
不具合を起こしやすいポイント
エンジン
セパレートタイプのサブフレームのおかげで、モンディアルT以前のモデルは整備性が良い。しかし横置きのエンジンで、トランスミッションとのレイアウトがT形状なため、ベルト交換などの作業はしにくい。
過去の整備記録はすべて目を通し、不自然な空白期間がないか確かめる。近年の油脂類やベルトの交換履歴も確認したい。エンジン始動時に過度な白煙が上がる場合、リビルドの必要性がある。多額の出費は覚悟しておきたい。
ボディ
フロントのフードとエンジンカバーのガス・ストラットは、経年劣化で弱くなる。しかし、約50ポンド(7500円)で新品の2本が購入できる。
フェンダーまわりやバッテリートレイ、ドアの下面などにサビがないか確かめたい。ボディパネルの交換部品は見つかりにくく、修復作業も安くは済まない。
フロントスプリッターは割れやすい。購入する前に、可能なら車体の下回りも含めて包括的に確認を済ませたいところ。
インテリア
実用性はあまり期待しないでほしい。リアシートがあっても、フロントシート側は足もと空間がとても狭い。
上質なコノリーレザーは、時間とともに風合いを増してくれる。しかし距離を走るほど摩耗してしまうので、扱いは丁寧に。
シャシー
初期のクルマはメートル法設計のホイールを履いており、合うタイヤを探すのは非常に困難。後期モデルの16インチや17インチのホイールへ変えた方が、タイヤ交換が楽になるだろう。
モンディアルTは、3種類のドライビングモードを備えた電子制御の調整式サスペンションを備えている。警告灯が点いていたら、アジャスターの固着やアクチュエーターの汚れなどを確認する。
電装系
パワーウインドウの開閉は初めから遅い。本当に動作が悪い場合は、内部機構の劣化やスイッチの接触不良などが考えられる。
長期間乗らないとバッテリーが放電してしまうので、トリクル・チャージャーにつないで常時充電しておきたい。ヒューズボックスは燃える場合がある。予め新しいヒューズボックスに交換しておくのも良いだろう。
オーナーの意見を聞いてみる
アラン・カーリ
「モンディアルは所有する喜びがあります。走りも素晴らしく、出かけるたびに楽しめます。タイヤを選びますがハンドリングは素晴らしく、長旅でも問題ありません」
「ただし、シートは硬めで長時間座るのに快適とはいいにくいでしょう。クアトロバルボーレにはパワーステアリングが付きませんが、大変なのは駐車時や低速の交差点くらいです」
「重たいステアリングが気になるなら、フロントタイヤのサイズを少し落とすといいでしょう。空気圧も高めにすると改善します」
英国ではいくら払うべき?
1万ポンド(150万円)~1万9999ポンド(299万円)
レストアが必要な中途半端な状態のモンディアルか、事故を起こしたような部品取り車が英国では見つかる。
2万ポンド(300万円)~2万9999ポンド(449万円)
走行距離の長い、初期のモンディアル8が英国では出てくる。
3万ポンド(450万円)~3万9999ポンド(599万円)
必要な修理などが終わった、条件の悪くないモンディアル・クアトロバルボーレやカブリオレが見つかる。
4万ポンド(600万円)以上
状態の良いクアトロバルボーレやカブリオレのほか、最終のモンディアルTも英国では購入できる。
知っておくべきこと
初期のモンディアルは、フェラーリ308や後の328などと多くの部品を共有している。部品を探す場合は適合モデルを広げることで、電気系統や内装、メカニズムなどが見つけやすくなる。
不動車状態の部品取り用モンディアルも、見過ごさないほうが良い。見た目はピカピカの複製パーツより、多少くたびれたオリジナル部品の方が優れているケースも少なくない。
英国で掘り出し物を発見
フェラーリ・モンディアル・クアトロバルボーレ 登録:1984年 走行:6万4700km 価格:2万9995ポンド(449万円)
よりパワフルなモンディアルTにも惹かれるが、32バルブのフェラーリ製3.0L V8エンジンのパフォーマンスがこの価格で手に入るのなら、不満はないだろう。
タイミングベルト交換後は2000kmも走行しておらず、ボディパネルなどの修復による溶接作業の過去もない。整備記録も揃っているという。
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