あらゆるライフスタイルで楽しめる1台
編集部員それぞれの目線で気になるクルに乗ってみてレポートするAMWリレーインプレ。第9弾はフォルクスワーゲン「ゴルフGTI」。ドイツ車とは縁のない生活を送っている32歳の筆者が試乗し、さらに「ゴルフ」愛好家の友人に助手席インプレをしてもらいました。
VW「ゴルフGTI」は「老舗の蕎麦屋のカツ丼」!? 本家FFホットハッチの高度なトータルバランスは感動ものです【AMWリレーインプレ】
操作系もわかりやすい位置にあるのが嬉しい!
フォルクスワーゲン「ゴルフ」は2024年で、誕生から50周年を迎えた。そのタイミングでホットモデルの「ゴルフGTI」に試乗できるなんて! と喜びながらクルマのキーを受け取った。
今回試乗するモデルは、ゴルフのなかでもハイパフォーマンスバージョンとして進化し続けてきた「GTI」の8代目モデル。初代GTIのワールドプレミアから45年という節目の2021年12月に登場した同車は、初代から続くアイコンであるフロントグリルへの赤い差し色が誇らしく輝く。そこにはVWのがっちりした主張が詰まっているに違いない。
これまで触れる機会がなかったクルマなだけに、恥ずかしながらワクワク! 早く乗りたい気持ちを抑えつつまずはエクステリアをじっくり楽しむ。フロントグリルからつながるヘッドライトには赤いストライプが施されキリッとした表情を見せる。さらにフロントバンパーガーニッシュは大型で、X字型に配置されたフォグランプはチェッカー柄にも見えてカッコいい。
サイドデザインは、プレスラインがピシッと入りシュッとした塊感がある。GTIには専用のスポーツサスペンションが装着されているため、通常モデルと比べて車高を低くセッティングしているのもプロポーションに貢献している。全輪に装着するホイールはオプション設定された19インチアルミホイールで、タイヤサイズは235/35ZR19となる。リアまわりに目を移すと、LEDテールランプにはダイナミックインジケーターを搭載し、特徴的な発光パターンを採用することで後続車への視認性の高さを実現しているとのことだ。そこからさらに目線をずらしたリアバンパー下部にあるディフューザーの左右からは2本のマフラーが突き出し、スタイリングをまとめている。
ちなみにボディサイズは、先代が全長4275mm×全幅1800mm×全高1470mmだったのに対して、現行モデルは全長4295mm×全幅1790mm×全高1465mmと、全長が20mm長くなった一方、全幅は-10mmとスリム化、全高は5mm低くなったプロポーションになっている。
続いてドアを開けてインテリアもチェック。まず目に入る、GTIといえばのタータンチェック柄のシートは、ヘッドレスト一体型のスポーツシートを採用。早速乗り込むと、シートの素材はファブリックで尻触りが心地良い。体を収めただけでホールド性の高さもうかがえる。
パーフォレーテッドレザーを採用した専用のステアリングは、握りが太く個人的には好印象。さらに赤いアクセントとGTIのエンブレムが装着されていることで特別感が得られるのも嬉しい。またステアリングには連結したパドルシフトもあり、峠やサーキットといったシチュエーションで手を離すことなくドライビングに集中できる利便性があることも付け加えておきたい。
ステアリングの先には、デジタルメータークラスターを標準装備。メーターには速度計とタコメーターの表示に加え、ブースト計、時間、外気温、走行距離などが表示される。またオプション設定されているVW純正のインフォテイメントシステム「Discover Pro」は、スマートフォンのようなタッチ操作が可能。ナビゲーション機能をはじめとした、車両の状態や走行データなどをコントロールできる。さらにヘッドライトやハザードといった操作系もわかりやすい位置にあり、初めて乗る人でも迷うことなく操作できる。
その日の気分でドアライブモードを切り替えることが可能
内外装をじっくり眺めていざ試乗へ。シフトノブ前方にあるシルバーのボタンを押すと、やや勇ましい音でエンジンが目覚める。ハザードスイッチの右下「MODE」を押すとインフォテイメントシステムに5つのドライビングプロファイル機能が出現した。盛りだくさんだけど、どうなんだろうといざトライ。
まずはエコモードで走らせてみる。ちなみに、各モードの内容は下記の通り。
・エコ:エンジン/シフトプログラムに加え、エアコンディショナーを省エネモードで作動 ・コンフォート:標準モード ・スポーツ:エンジン/シフトプログラムに加え、ステアリングトルクやアクセルレスポンスを変更 ・カスタム:ACCやステアリングトルクなど、各機能を個別に制御。ドライバーのスタイルに合わせたカスタマイズが可能
さてエコモードでの試乗感覚では、シフトタイミングが早く、エンジン回転を抑えているようだ。低回転から効果的にトルクが発生するため、燃費性能に貢献しているのだろうということがわかる。続いて、コンフォートモードでは、同じスロットル開度でもシフトタイミングがやや遅めになった印象だ。路面の凹凸のいなし方がきれいで不快な突き上げもない。
そしてスポーツモードにすると、クルマのキャラクターが一気に変わる印象を受けた。ステアリングは重くなり、エンジン音が野太くなった。走らせてみると、上記のモード紹介の通り、アクセルレスポンスが劇的に変わり、グッと踏み込むと、2L 直4 DOHCターボ(最高出力245ps/最大トルク370Nm)が襲いかかるのが実感できるのだ。
今度はアクセルをやや踏み込み気味にコーナリングしてみると、まるでスロットカーがレールの上を走るかのように曲がっていく。ゴルフGTIには電子制御油圧式フロントディファレンシャルロックを採用していると言うが、峠やサーキットといったシチュエーションで本領を発揮するであろうゴルフの姿を、一瞬だけ垣間見ることができた(私のドライビングシーンの幻想とともにだけれども……)。
ゴルフ好きにうってつけの1台!?
せっかくゴルフに乗るならと、同じく「きっちりと正確に飛ばす」ことにかける「ゴルフ」(球技の方)好きの友人Kくんに協力してもらい、ゴルフにゴルフで行くのはアリか? を検証してみることにした。ちなみにVWのゴルフという車名はスポーツから取ったものではなく、メキシコ湾流の「Golfstrom(ゴルフ シュトローム/ドイツ語、英語のガルフ ストリームに相当)」に由来するのだそうだ。スポーツのゴルフの語源については諸説さまざまだが、オランダ語で棒を意味する「Kolf(コルフ)がゴルフの発祥の地として言われるスコットランドに伝わり、「Golf(ゴルフ)になったと言われている。
それはさておきKくんと合流し、早速ラゲッジにキャディバックを載せ……
「リアハッチってどうやって開けるの?」
と質問された。エンブレムの上を押し込むと取っ手になって開くんだよと説明をすると「面白いギミックだね!」と喜んでいた。
気を取り直し、8.5インチのキャディバッグをラゲッジルームに載せると、リアシートを畳まない状態なら、ぎりぎり載るかなという感じだった。ならばと、リアシートを倒せば問題なく入る。今回は1人分だったので、片側のみ倒しているが、2人分までなら問題なく片側でも入る。仮に3人分でも、60:40分割可倒式の後席の2名乗車側を倒せば問題なく入る。ちなみにラゲッジスペースの容量は、VDA方式で374L、後席を倒すと1230Lを実現する。つまり8.5インチほどの荷であれば、2名乗車で2人分のバッグとシューズや着替えなどが入ったボストンバッグも問題なく入ることがわかった。
試乗時にはKくんを助手席に乗せて、ドライブモードをカスタムに。自分好みのセッティングをした状態も体験してもらいつつ、ゴルフGTIの印象を聞いてみた。
「音を聞かないとわからないぐらいギアの変速がものすごくスムーズだね。シートも自分にあっていて、曲がっているときも体がブレにくい。助手席だけの印象だけど、ゴルフ場までって高速道路で移動することが多いから、街中のモードはコンフォート、高速はスポーツモードのカチッとした乗り心地にすれば疲れ知らずかもしれない。ゴルフクラブで例えると、スポーツモードが1番ウッドだとすると、コンフォートモードが7番アイアンって感じかな。ボディの大きさも程よく、モード切り替えで誰もが乗りやすい、街中から高速までいろんな場面で使える。踏めば速いし、いろんなデバイスもあるから運転の上達にも最適な感じがする」
あくまでも2名乗車ならという条件つきだが、ゴルフGTIでのゴルフ遊びは大いにアリだということがわかった。さすが、ドイツの名門フォルクスワーゲン「ゴルフ」。あらゆる自動車メーカーが意識している「クルマのベンチマーク」とも呼ばれるようになった世界的ロングセラーのゴルフは、スポーツグレードになっても快適性能を削がずに、あらゆるライフスタイルでもドライビングを楽しめる1台となっていた。
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