軽く吹け上がるエンジンフィールはATでも十分に楽しめる!
適度な速さに上質感もプラスされたGTカー
「NA版RB26“DE”+4速ATを載せるR32スカイライン」オーテックバージョンはオトナのセダンだ!【ManiaxCars】
R32で16年ぶりにGT-Rが復活し、シリーズの頂点に位置するモデルとなった。3代目S54以降、スカイラインにはレースのイメージが強くついているが、同時にGT=グランドツーリングカーという側面も持っていた。R32オーテックバージョンは、それを引き出すモディファイが加えられている。
その最たる例がRB26DEの搭載で、GT-R譲りのRB26DETTからツインターボユニットを外してNA化。オーテックジャパン設計の専用ハイコンプピストンとカムシャフトを組み、等長ステンレス製エキマニを装着し、専用ECUで制御することで、NAらしいパワーフィールとレスポンスを実現している。
ミッションは4速ATのみの設定。スポーティなNAユニットなら5速MTが欲しいところだが、質の高いGTカーを目指したと考えれば、ATの方が相応しいと理解できる。
インパネ周りはベースとなったHNR32に準じるが、ステアリング中央のオーテックのロゴが入ったホーンボタンなどは専用品。また、電子制御フルオートエアコン&サウンドシステムからなるアクティブアメニティシステムを装備するなど、快適性の向上に重きが置かれる。
シート形状はタイプM系と同じだが、表皮がオーテックバージョン専用のエクセーヌ&ダブルラッセル地となる他、ドアトリムにもエクセーヌが用いられる。滑りにくい生地でドライビングポジションを一定に保ちやすいため、長距離ドライブでも疲労を抑えられる。
一方、足回りもコーナリング性能と乗り心地を両立すべく専用チューニング。新車時には専用タイヤとして205/55R16サイズのエクスペディアS-01が装着された。ブレーキはGT-R同様、キャリパーはアルミ製でフロント対向4ポット、リヤ対向2ポット、ローターはドリルドタイプとされ、フロントφ296、リヤφ292が組み合わされる。
取材車両はフルノーマルで走行距離わずか1万3000km。ボディ塗装や内装にもヤレはまったく感じられず極上のコンディションを保っている。もともと生産台数が少なく、最終デリバリーから四半世紀近くが経っているのに、こういう個体が残っていることに驚く。北海道まで足を運んだ甲斐もあるというものだ。
今回は撮影敷地内で軽く試乗しただけだったが、それでもオーテックバージョンの個性を理解することはできた。まず、アクセル操作に対するエンジンのピックアップがやたらといい。RB26からツインターボを外した時点で、「なにやっちゃってんの?」と思ったクルマ好きは少なくないだろうが、ATセレクターレバーでDレンジを選び、走り出した瞬間からそんな思いは吹き飛ぶ。
オーテックバージョンは1480kgという車重だけでなく、ミッションギヤ比もファイナル比もベースのGTS-4と同じ。低中速トルクは排気量が600cc大きいRB26DEの方が上回っていて、それに対してファイナル比が4.375と低めなこともあり、アクセルを踏み込んだ瞬間の加速感はレスポンスの良さも手伝って、「速いっ!」と思えるもの。加えて、軽く吹け上がるエンジンフィールはATでも十分に楽しめる。
設定されたボディ色は専用イエロイッシュグリーンパールメタリックのみ。光の加減によって緑やグレーに見えるなど、表情豊かな色と言える。ホイールもスポーク部がボディ同色とされた専用品でサイズは6.5J×16オフセット+38。標準では205/55R16サイズのエクスペディアS-01が組み合わされていた。
また、ボディのサイズ感がちょうどいい。4ドアセダンとして見た場合、後席の居住性は正直ホメられたものではないけど、アクセルやステアリング操作に対してクルマがリニアに反応してくれることも含め、オーテックバージョンでは“クルマを着る”感覚を味わえるのだ。
適度な速さとドライバーの意に沿った走り。そこに上質感もプラスされたオーテックバージョンは、なるほどGTカーとしての資質を高めていると実感することができた。
■SPECIFICATIONS
車両型式:HNR32改
全長×全幅×全高:4580×1695×1360mm
ホイールベース:2615mm
トレッド(F/R):1465/1465mm
車両重量:1480kg
エンジン型式:RB26DE
エンジン形式:直6DOHC
ボア×ストローク:φ86.0×73.7mm
排気量:2568cc
圧縮比:10.5:1
最高出力:220ps/6800rpm
最大トルク:25.0kgm/5200rpm
トランスミッション:4速AT
サスペンション形式:FRマルチリンク
ブレーキ:FRベンチレーテッドディスク
タイヤサイズ:FR205/55R16
PHOTO&TEXT:廣嶋健太郎(Kentaro HIROSHIMA)
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