もくじ
どんなクルマ?
ー 原点回帰のソフトトップ採用で低重心を実現
ー 日本仕様のパワーユニットは2ℓと3ℓの2種
どんな感じ?
ー 高剛性のボディ&シャシー
ー 引き締まったドライビングパフォーマンス
ー コーナリング能力は高いが軽快感がやや不足
「買い」か?
ー 存在の新鮮さではライバルを上回る
どんなクルマ?
原点回帰のソフトトップ採用で低重心を実現
BMWの2シーターロードスターの最新モデル、Z4。これを近年のBMWロードスターの何代目のモデルとするかは、他のモデルをどう考えるかによって変わる。大型のZ8もすべて含めれば6代目になるが、Z8を別枠として外せば5代目。さらに、少量生産だったZ1も別枠とすると、Z3と先々代+先代Z4に続く4代目、ということになる。
新型Z4像を明確にするには、年代的にもっとも近い先代Z4と比べるのが適切だと思う。そこでまずディメンション的には、先代より85mm長く、75mm幅広く、15mm高くなっているが、逆にホイールベースは25mm短縮された、というのが特徴的なポイントだろう。その一方で、トレッドは前後とも先代モデルより確実に広がっている。
もうひとつ、ボディに関する先代との大きな違いは、トップが先代の電動開閉式ハードトップから、同じく電動開閉式のソフトトップに変わったことだ。これは、Z3以来のロードスターの基本に戻ると同時に、ダイナミックな性能の領域に関していえば、トップが軽くなったことでクルマ全体の重心の低下に寄与するという効果も生んでいる。
スタイリングは最近のBMWデザインの傾向に沿って、これまでのZ4よりも面の抑揚がはっきりした筋肉質なものになった印象をうける。フロントフェンダーから後方に伸びるボディサイドの抉りや、張り出したリアフェンダーなどがそういう要素だが、結果としてスポーツカーらしさが強調されていると思う。ソフトトップの形状も良好だし。
日本仕様のパワーユニットは2ℓと3ℓの2種
一方、当日の試乗車はすべて同じやや茶色味掛かったサンフランシスコレッドという赤だったが、そのためもあってか対向車線を走ってくるZ4を見ると、一瞬、マツダNDロードスターベースのアバルト124のように見えることがあった。前から見たボディの縦横比、ヘッドライトの位置などが似ているからだろう。
それはさておき、搭載されるパワーユニットは2ℓ直4ターボと、3ℓ直6ターボで、前者には本国では197㎰仕様と258ps仕様の2種類があるが、当面日本仕様に積まれるのは2ℓ直4が197ps仕様のみ、それに340ps の3ℓ直6となる。
結果、日本仕様の新型Z4ラインナップは、sDrive20i=566万円、sDrive20i Sport Line=615万円、sDrive20i M Sport=665万円、 M40i=835万円の4モデルになる。今回、箱根ターンパイクをベースとした試乗会で乗ったのは、最上級のZ4 M40iだった。
どんな感じ?
高剛性のボディ&シャシー
大抵のクルマでそうするように、シートをもっとも低い位置にセットすると、着座位置はかなり低くなって、コクピットに潜り込んだ感じになる。そうなるのは、フェンダーラインが深く、ウエストラインが高い今風のスタイリングのためも大いにあると思う。そこで充分な前方視界を得るために、Mスポーツシートを少し上げて対応する。
ちなみにソフトトップは、50km/h以下なら、コクピットのスイッチを押すだけでたった10秒で開閉できるが、試乗日は好天だったので、オープンのまま走り出す。少し走っただけで感じた第一印象は、ボディとシャシーの剛性が高い、という実感だった。
もちろん昨今のオープンスポーツ、ボディの緩いクルマになどまず遭遇しないが、Z4のそれはなかでも飛び切りの部類に思えた。多くのBMWと違って、Z4のタイヤはランフラットではないのでショックが少ないことも、その印象に効果を発揮しているはずだ。
しかも、今どきのオープン2シーターは大抵そうだが、オープン走行時のコクピットの風仕舞もいい。リアにメッシュ式のディフレクターが装着してあった試乗車では、サイドウインドーを上げておけば、被ったキャップが飛ぶ心配などまったくなかった。
引き締まったドライビングパフォーマンス
しかも直6のM40iは、アダプティブMスポーツサスペンションを標準装備するから、脚も硬い。ドライビングパフォーマンスコントロールのモードをスポーツはもちろん、ダンピング可変のアダプティブにセットしておいても、ボディは余計な上下動を見せず、常に引き締まった感触を実感させる。コンフォートを選べばさすがに柔らかさを感じさせるが、クルマのキャラクターに合っている普段使いはアダプティブだろうと思った。
しかもそれに加えてZ4、ステアリングの感触もかなり締まっていて、その操舵力も今どきのクルマとしては明らかに重い部類ときている。さらにバリアブルレシオを採用していることもあって、切り込んだときのレスポンスも全般にクィックだから、そこからもBMWが想定するスポーツカー像が感じ取れるような気がする。
一方、340㎰と51.0kg-mを発生する3ℓ直6ツインパワーターボエンジンと、変速の滑らかな8段ATの組み合わせは、スタイリングのイメージからすると重い1570kgの車重を、スムーズに、しかも充分な勢いで気持ちよく加速させる。
このエンジン、ストレート6らしい滑らかな回転感と音を味わわせてくれる他、実用域から充分なトルクを生み出しながら、6500rpmのレッドゾーンに至るまで回転上昇の勢いを鈍らせずに吹け上がっていく、ターボらしからぬ高回転域のレスポンスに感心させられた。さすがBMW=バイエルンのエンジン工場の製品である。
コーナリング能力は高いが軽快感がやや不足
では、ある意味でスポーツカーの命といえるワインディングでの印象はどうだったか。ショートホイールベース、ワイドトレッド、低重心、それに50:50の前後重量配分と、四拍子そろったシャシーを持つZ4だけに、コーナリングは得意中の得意という印象で、手応え充分なステアリングを切り込むと、すぐさま身を翻してコーナーに飛び込んでいく。
コーナーの連続を縫って走る際のハンドリングはまさにオンザレールという印象で、アンダーステアをほとんど感じさせず、19インチのミシュラン パイロットスーパースポーツがガッチリと路面を捉えたまま、狙ったラインをハイペースでトレースしていく。
M40iはMスポーツディファレンシャルを標準で備えているからその効果を試すべく、スポーツモードで上りのタイトベンドを攻めたら、テールがツツッとスライドしつつもボディが前に押し出されるのを感じ取れた。その効果を明確に味わうには公道上ではなく、サーキットに持ち込む必要があるだろう。
—–
というわけでZ4 M40i、すこぶるコーナリング能力の高いクルマという印象を得たが、ひとつだけ物足りなく感じたのは、僕がスポーツカーに求める軽快さを明確に実感できなかったことだ。ライトウェイトスポーツのようなヒラリヒラリとした軽快感が、BMWが重視していると思われるスタビリティと両立し難いものなのは理解しているが、できればもう少しその感覚が欲しかったと思うのは、贅沢だろうか。
そういう意味では、車重1490kgと6気筒モデルより90kg軽く、しかも軽くなる部分の大半が前輪荷重にあると思われる4気筒搭載モデルの方が、挙動が軽快である可能性は大いにある。できれば近いうちに、4気筒のZ4に乗ってみたいものだと思う。
「買い」か?
存在の新鮮さではライバルを上回る
当方はまだ新しいGRスープラを走らせた経験がないので、敢えて触れなかったが、スープラはこのZ4と基本的に同じシャシー+パワートレインで成り立っている。だからその乗り味が互いにどう異なるのかという点には興味はあるが、購買者がZ4かスープラかを迷うケースはかなり稀だろうと思う。オープンとクーペというボディ形態の違い、それにブランドキャラクターの違いが、はっきりしているからだ。
それよりもむしろ、スポーツカーとしての形態から考えると、マツダベースのアバルト124スパイダーの方が、Z4の特に4気筒モデルのライバルになり得る気がするが、しかしこの両車には、プライスに大きな違いがある。124スパイダーが400万円前後なのに対して、Z4のプライスは4気筒モデルでも566~665万円の間にあるからだ。
となると6気筒M40iのライバルは、巷間よくいわれるポルシェボクスターになるのだろうか。あちらはミドエンジンだが、エンジンそのものは水平対向4気筒ターボ。ボディサイズはZ4がボクスターに対して50mm短く、65mm幅広く、25mm高く、車重は160~180kg重い。で、835万円というプライスは、ボクスターとSの中間に位置している。
スポーツカーとしてのピュアさではボクスターがやや上回る気はするが、すでに街の景色と化しているボクスターに対して、存在の新鮮さではニューZ4が明らかに上回る、といっていいだろう。そういった諸々の条件を含んで、Z4に対する最終結論は4気筒モデルに乗ってから出したい、というのが僕の正直な見解である。
BMW Z4のスペック
BMW Z4 M40i
■価格 835万円
■全長×全幅×全高 4335×1865×1305mm
■最高速度 –
■0-100km/h加速 4.5秒
■燃費(WLTCモード) 12.2km/ℓ
■CO2排出量 –
■車両重量 1570kg
■エンジン 直列6気筒2997ccターボ
■最高出力 340ps/5000rpm
■最大トルク 51.0kg-m/1600-4500rpm
■ギアボックス 8速オートマティック
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