現在位置: carview! > ニュース > ニューモデル > 【別の時代へタイムスリップ】ベントレー・ブロワー・コンティニュエーションへ試乗 後編

ここから本文です

【別の時代へタイムスリップ】ベントレー・ブロワー・コンティニュエーションへ試乗 後編

掲載 更新
【別の時代へタイムスリップ】ベントレー・ブロワー・コンティニュエーションへ試乗 後編

細部に至るまで見事に復刻

text:Andrew Frankel(アンドリュー・フランケル)

【画像】復刻版ベントレー・ブロワー 最新バカラル 復刻版はほかにも 全90枚

translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)


かつてのレーシングドライバー、ヘンリー・バーキンがドライブしたベントレー・ブロワーの隣に、新しく作られたベントレー・ブロワー・コンティニュエーションの試作車が停まっている。シュールな眺めだ。

思わず、両車の違いを観察してしまった。オリジナルのブロワーのペダルは、ダブルクラッチでの変速が長年繰り返され、表面が滑らかに摩耗している。メーターの文字盤は、太陽光を90年も浴び続けてきた結果、少し色あせている。

しかし、ダッシュボードに付けられたラップカウンターなど、細部に至るまで見事に復刻されている。このラップカウンター、本来は1930年のル・マン出場前に、フランスのどこかのホテルで入手したものらしい。それも一度バラし、復元してある。

ブロワーのシートに座ると、巨大なステアリングホイールを抱える格好になる。メーターが無計画に並んでいるように見え、クルマではなく、古い複葉機のような気分にもなる。

エンジンの始動プロセスは複雑だが、難しいわけではない。最初に隠れた場所にあるカットオフ・キーを回してオンにし、次に燃料ポンプを機能させる。必要なら、手動ポンプでエンジンへガソリンを余計に送ることもできる。

点火用の電気を生み出す発電機、2つのマグネトーをオンにする。クルマが進んでしまえば、バッテリーは不要だ。続いてステアリングホイール上のレバーを操作し、点火タイミングを少し遅らせる。最後にスターター用の大きなボタンを押せば完了。

驚くほどモダンな技術を載せる4.4L 4気筒

エンジンが温まっていれば、すぐにアイドリングを始める。4.4Lと大排気量でも、シリンダーは縦に4本だけ。1気筒あたり1L以上の大きさがあるが、驚くほどモダンな技術も載せている。

イグニションはツインスパークだし、ヘッドはオーバーヘッドカム。1気筒毎に4つのバルブが付いている。充分に現代的な仕様だ。ベントレーは、今から100年前にこの技術を確立していた。

4.4Lのスーパーチャージャーで243ps/4200rpmは控えめに思える。しかし当時の典型的なクルマ、例えばオースチン・セブンより20倍もパワフルだった。今でいうなら、2000ps以上に相当するだろう。

復刻されたブロワーに近づくことですら、勇気がいる。なんとベントレーは太っ腹なのだろう。100万ポンド(1億5000万円)の価値があるし、運転も簡単ではない。これまでも、ベントレーは筆者を信頼してくれてきたことに感謝したい。

クルマは開発直後ということもあって、ビンテージ・ベントレーの基準でいっても少し荒削りなところがある。クラッチのつながる位置はペダルの手前すぎ、スロットルのリンケージにはクセがあり、ブレーキはまだ慣らしの前。

MTには変速時の回転数を合わせてくれるシンクロメッシュがなく、ブレーキとアクセルのペダルは現代とは逆の配置。それでなくてもチャレンジングなクルマなのに、いつも以上に高い集中力が求められる。

もっとも、よくある初期の不備といったところ。予想の範囲とはいえるだろう。

世界中でこれだけ、という体験に包まれる

エンジンは感心するほど完璧に仕上がっており、オリジナルの2号車より力強い印象を受ける。ベントレーがスーパーチャージャーのブースト圧を制限していても。シャシーは、予想より完成形の手前側にあるようだ。

速度を増していくと、世界中でこれだけ、という体験に包まれる。小さなフロントスクリーンの後ろに腰を掛け、大きなステアリングホイールを握りながら、ミルブルックのバンクコーナーを突き進む。

ブルックランズ・サーキットを駆けるバーキンが、筆者に降りてくる。冴えない表現かもしれないが、そんな体験だった。

アクセルペダルを踏み続ければ、速度は190km/hを超えるだろう。しかし、160km/hで走りたいという筆者の希望を、ベントレーは丁重に断った。正しい判断だと思う。

ベントレーがカー・ゼロと呼ぶ、ブロワー・コンティニュエーションの1台目は開発途中。激しく攻め立てるような走り方はできない。

例え能力の3分の2程度しか許されなかったとしても、別の時代へタイムスリップする入り口のようなクルマだった。命がけで戦ったレーシングドライバーが本当のヒーローだった時代を、鮮明に感じ取れる。

ベントレー・ブロワー・コンティニュエーションのカー・ゼロは、とても貴重で特別な経験を与えてくれた。多くの人の記憶をはるかに超えた、昔の時代の体験を。完成したのなら、さらに別の意味も持つクルマとなるのだろう。

【キャンペーン】第2・4 金土日はお得に給油!車検月登録でガソリン・軽油5円/L引き!(要マイカー登録)

こんな記事も読まれています

元ハースのグロージャン、旧知の小松代表の仕事ぶりを支持「チームから最高の力を引き出した。誇りに思う」
元ハースのグロージャン、旧知の小松代表の仕事ぶりを支持「チームから最高の力を引き出した。誇りに思う」
AUTOSPORT web
本体35万円! ホンダの「“超”コンパクトスポーツカー」がスゴい! 全長3.4m×「600キロ切り」軽量ボディ! 画期的素材でめちゃ楽しそうな「現存1台」車とは
本体35万円! ホンダの「“超”コンパクトスポーツカー」がスゴい! 全長3.4m×「600キロ切り」軽量ボディ! 画期的素材でめちゃ楽しそうな「現存1台」車とは
くるまのニュース
リアウィンドウがない! ジャガー、新型EVの予告画像を初公開 12月2日正式発表予定
リアウィンドウがない! ジャガー、新型EVの予告画像を初公開 12月2日正式発表予定
AUTOCAR JAPAN
最近よく聞く「LFP」と「NMC」は全部同じ? EV用バッテリーの作り方、性能の違い
最近よく聞く「LFP」と「NMC」は全部同じ? EV用バッテリーの作り方、性能の違い
AUTOCAR JAPAN
アロンソのペナルティポイントはグリッド上で最多の8点。2025年序盤戦まで出場停止の回避が求められる
アロンソのペナルティポイントはグリッド上で最多の8点。2025年序盤戦まで出場停止の回避が求められる
AUTOSPORT web
「俺のオプカン~仙台場所~」初開催!「オープンカントリー」を愛する男性ユーザーが集まって工場見学…川畑真人選手のトークショーで大盛りあがり
「俺のオプカン~仙台場所~」初開催!「オープンカントリー」を愛する男性ユーザーが集まって工場見学…川畑真人選手のトークショーで大盛りあがり
Auto Messe Web
「ラリーのコースなのでトンネル工事を休止します」 名古屋‐飯田の大動脈 旧道がレース仕様に!
「ラリーのコースなのでトンネル工事を休止します」 名古屋‐飯田の大動脈 旧道がレース仕様に!
乗りものニュース
紫ボディはオーロラがモチーフ、中国ユーザーが求めた特別なインフィニティ…広州モーターショー2024
紫ボディはオーロラがモチーフ、中国ユーザーが求めた特別なインフィニティ…広州モーターショー2024
レスポンス
『頭文字D』愛が爆発。パンダカラーで登場のグリアジン、ラリージャパンで公道最速伝説を狙う
『頭文字D』愛が爆発。パンダカラーで登場のグリアジン、ラリージャパンで公道最速伝説を狙う
AUTOSPORT web
トヨタ勝田貴元、WRCラリージャパンDAY2は不運な後退も総合3番手に0.1秒差まで肉薄「起こったことを考えれば悪くない順位」
トヨタ勝田貴元、WRCラリージャパンDAY2は不運な後退も総合3番手に0.1秒差まで肉薄「起こったことを考えれば悪くない順位」
motorsport.com 日本版
エコの時代に逆行!? 「やっぱ気持ちいいのは大排気量のトルクだよね」……800馬力超のエンジンが吠える「アメ車」マッスルカーの“クセになる世界”とは
エコの時代に逆行!? 「やっぱ気持ちいいのは大排気量のトルクだよね」……800馬力超のエンジンが吠える「アメ車」マッスルカーの“クセになる世界”とは
VAGUE
日産「新型ラグジュアリーSUV」世界初公開! 斬新「紫」内装&オラオラ「ゴールド」アクセントで超カッコイイ! ド迫力エアロもスゴイ「QX60C」中国に登場
日産「新型ラグジュアリーSUV」世界初公開! 斬新「紫」内装&オラオラ「ゴールド」アクセントで超カッコイイ! ド迫力エアロもスゴイ「QX60C」中国に登場
くるまのニュース
変化と進化──新型ロールス・ロイス ゴースト シリーズII試乗記
変化と進化──新型ロールス・ロイス ゴースト シリーズII試乗記
GQ JAPAN
加熱する中国高級SUV市場、キャデラック『XT6』2025年型は「エグゼクティブシート」アピール
加熱する中国高級SUV市場、キャデラック『XT6』2025年型は「エグゼクティブシート」アピール
レスポンス
メルセデス、ラスベガス初日の好調は「なんでか分からない」予選に向けて”ダスト乞い”?
メルセデス、ラスベガス初日の好調は「なんでか分からない」予選に向けて”ダスト乞い”?
motorsport.com 日本版
Moto2チャンピオンに輝いた小椋藍、日本人初となる『トライアンフトリプルトロフィー』を受賞
Moto2チャンピオンに輝いた小椋藍、日本人初となる『トライアンフトリプルトロフィー』を受賞
AUTOSPORT web
フィアット新型「600e」と暮らしてみたら「500L」との2台体制を夢見てしまい…ファミリーカーとしてオススメの1台です【週刊チンクエチェントVol.47】
フィアット新型「600e」と暮らしてみたら「500L」との2台体制を夢見てしまい…ファミリーカーとしてオススメの1台です【週刊チンクエチェントVol.47】
Auto Messe Web
なんとも物騒な「煤殺し」ってなんだ!? トラックドライバー御用達アイテムの正体とは
なんとも物騒な「煤殺し」ってなんだ!? トラックドライバー御用達アイテムの正体とは
WEB CARTOP

みんなのコメント

この記事にはまだコメントがありません。
この記事に対するあなたの意見や感想を投稿しませんか?

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村