■スーパーカー少年の憧れだった「イオタ」はまさしくコレ! イオタ仕様ミウラ「P400SVR」が完全フルレストア
クラシックカーの美しさやコンディション、あるいはヒストリーを競うクラシックカーイベント「コンクール・デレガンス」。この分野において、イタリアの「コンコルソ・デレガンツァ・ヴィラ・デステ」とともに世界最高峰と称される「ペブルビーチ・コンクール・デレガンス」では、アメリカのみならず全世界から最上級のクラシックカーが集結する。
蘇ったデ・トマソは1億円! ペブルビーチで見た超弩級スーパーカー3選
筆者が訪問した2019年は、29のクラスに分けられた約200台の名車たちが正式招待・出品されたが、その招待枠を得るために応募された車両は、実に1000台以上に及んだとのことである。
そんな狭き門をくぐってきた名車中の名車たちは、いずれも素晴らしいマスターピースばかりである。
今回は、そのなかでも筆者を特に魅了してくれた3台の名車をセレクト。ご紹介させていただくことにしよう。
●ランボルギーニ・ミウラP400SVR(1968年)
2019年のペブルビーチ・コンクールでは、ランボルギーニ本社のレストア部門「ポロストリコ」のバックアップにより、ミウラだけが対象となる「クラスN:ランボルギーニ・ミウラ」が初めて設定された。
元祖スーパーカーとも称されるスーパースターの人気は万国共通のようで、会場でも常に黒山の人だかりができていた。
このときエントリーされたミウラは、総計5台。いずれ劣らぬヒストリーの持ち主である。イラン元国王パフラヴィー2世(パーレビ国王)のオーダーによって作られたP400ミウラや、映画『Italian Job(邦題:ミニミニ大作戦)』で美しい快走シーンを披露した、同じくP400ミウラなど、すべてポロストリコでフルレストアされた新車同様のコンディションのミウラばかりであった。
しかし、われわれ日本人ファンにとってもっとも注目すべき1台といえば、1970年代以来40年以上にわたって日本国内でコレクションされている、ランボルギーニ本社謹製のイオタ仕様ミウラ「P400SVR」に違いないだろう。
もっとも有名なイオタ仕様ミウラのひとつともいわれるP400SVRは、1968年型のP400ミウラをベースとして、ランボルギーニ本社工房内で1975年に製作されたものである。
モディファイを依頼したのは、当時スイスにおいてランボルギーニ社の正規代理店を営んでいたヘルベルト・ハーネ氏だった。さらにハーネ氏は、BBS社製アロイホイールやルーフ上のウイングスポイラーなど、現在に至るアップデートをおこなったのち、1976年に日本のさるスペシャリストに譲渡。以来オーナーは代替わりしながらも、ずっと日本に生息している個体である。
ちなみに、この年の「ランボルギーニ・ミウラ」クラス第1位となったのは、2018年夏にポロストリコから完成がアナウンスされた、1972年型のミウラP400SVであった。
かつてはプジョー・スポール総監督、そしてスクーデリア・フェラーリでも総監督として同チームのF1黄金時代を率いたのち、現在では国際自動車連盟(FIA)の会長を務めるジャン・トッド氏のもとに収められたミウラである。
■クラシックカーを「プリザベーション」で愛でる
ペブルビーチ・コンクール・デレガンスに正式出品されるクラシックカーは、眩いばかりにフルレストアされたクルマばかりではない。
むしろ近年では、新車としてデリバリーされて以来レストアを受けることなく現在まで維持されてきた、いわゆる「プリザベーション」車両にも特設クラスが設けられ、それぞれの歴史をしのぶ素晴らしいクラシックカーが並ぶことになった。
●アストンマーティンDB5ヴァンテージ(1965年)
2019年のペブルビーチにおいて、第二次大戦後の生産車両を対象とする「クラスL2:戦後プリザベーション」にて第1位を獲得したのは、まさしく奇跡と言いたくなるようなアストンマーティン「DB5ヴァンテージ」だった。
アストンマーティン「DB5」は、「DB4シリーズ5」の後継車として1963年夏にデビュー。1965年秋に「DB6」に跡目を譲るまで、1000台あまりが生産されたといわれる、1960年代アストンの傑作である。
そして、スタンダードのSU製キャブレターからウェーバー社製キャブレターに換装することで325psのパワーを得た高性能版DB5ヴァンテージは、わずか68台(65台説もあり)が生産されたに過ぎない。
この時のクラスL1出品車両は、さらに17台のみに限定されるという左ハンドル仕様のDB5ヴァンテージであった。1965年に新車としてアメリカ合衆国にデリバリーされて以来、ずっと同じ家族の間で維持されてきたとのことである。
2019年までの54年間に刻まれた走行距離は、約7万2000マイル(約11万5000km)。ボディペイントに細かいリタッチを施しただけで、内外装ともオリジナルと謳われていた。
たしかに、間近まで近寄ってみればアルミ製ボディの色つやは今ひとつ。細かいスクラッチ傷などもあちこちに散見された。また本革レザーの内装もそれなりにくたびれてはいたのだが、それでも半世紀以上の時を経た個体としては、まさしく奇跡のコンディション。歴史とストーリーを感じさせる、クラスウィンも納得の一台であった。
●ブガッティT59GP(1933年)
2019年のペブルビーチ・コンクールにて、筆者を個人的に最もエキサイトさせてくれたトピックのひとつは、現代のF1GPに相当するグランプリ・レースのために、ブガッティが1933年に4台のみ製作した「T59GP」であった。その全4台が一堂に集結したのである。
ブガッティT59GPは、1924年の初登場以来、グランプリ・レースとスポーツカーレースで大活躍したT35シリーズ、そしてその改良型として初めてDOHCエンジンを搭載したT51GPに代わる、グランプリ専用のシングルシーターマシンである。
この時代のグランプリは、「車両重量750kg以下」というレギュレーションで戦われていた。こうした時代にT59GPは、当時最強のGPマシンとして君臨していたアルファロメオ「ティーポB」打倒を目指して開発された歴史を持つ。
しかし、もともとツーリングカー/スーパースポーツカーとして開発された「T57」シリーズベースの3.3リッター直列8気筒DOHCエンジンでは、純粋なレーシングカーとして徹底的に造り込まれたティーポBに、パワーとパフォーマンスの面で一歩及ばなかった。
しかも翌1934年シーズンからAIACRグランプリに参入してきたドイツ勢(メルセデス・ベンツ&アウトウニオン)には、アルファロメオともどもまるで歯が立たなかったという、悲劇的なマシンなのだ。
しかし、生来のアーティストでもあったエットレ・ブガッティが、性能面に目を瞑ってでも徹底してこだわった芸術性がT59GPには散見される。
たとえば軽合金ディスクにワイヤーを組み合わせた美しいホイールなど、エクステリアからメカニズムに至るまで、随所にその芸術的な美しさが発露していることから、今なおカリスマ的な存在となっているのだ。
ちなみにこの日の表彰ステージで4台が勢ぞろいしたなか、最前列に置かれた1台は、超一流のクラシックカー・コレクターとしても知られるファッションデザイナー、ラルフ・ローレン氏のコレクションのクルマであった。
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みんなのコメント
カウンタックと双璧だったが、俺は、SVR派だった
このままでまた市販したら?
最近のランボルギーニのデザインは嫌い。