もくじ
前編
ー元F1ドライバーが996を選ぶ理由
ー996、なぜ長い間不人気だった?
ー993が「最後に911」になる可能性もあった
ー996、顧客をどんな仕掛けで惹きつけた?
ー993と996、両者の明らかな違い
空冷と水冷、あなたはどっち? ポルシェ993と996を比較試乗(前編)
後編
ー993と996 音やステアフィールの違いは?
ー993オーナーが語る、993の実用性
ー993と996 オーナーの語る「ポルシェ像」
ー996、これから価値は高まるのか?
993と996 音やステアフィールの違いは?
ポルシェの技術者は、空冷を水冷に変えることで水平対向6気筒エンジンの魅力ができるだけ損なわれることがないよう努力した。
この試みはほぼ成功しているとわたしは思う。水冷エンジンは非常に滑らかに回り、やや抑えられてはいるが、まちがいなく911ならではのエグゾーストサウンドを響かせながらすぐに6000rpm以上まで吹け上がる。
一方の993のエグゾーストサウンドはもっと低音が大きく、リアでいかにもメカが仕事をしているような機械的な鋭さを感じる。
ストレートでは体感的にも、またデータ上でも996は993より速い。993も996も身体がシートに押しつけられるような加速を感じさせてくれるが、996の方がスロットルの動作により俊敏に反応する。
ただ、加速性能は911の総合的魅力の一部に過ぎないことを忘れないでほしい。
993と比べると996のステアリングはほんのわずかにフィーリングが欠ける部分があるが、これは取るに足らないほどわずかな差で、洗練された乗り心地や節度あるトランスミッションが十分に補ってくれる。
どちらのモデルも、多くのライバル車が決して真似できないような絶妙な方法をもって路面の状態を一貫してドライバーに伝えてくれるのだ。
もうひとつ、両者に共通している部分がある。
993オーナーが語る、993の実用性
993と996に共通する資質としては、凄まじい性能にもかかわらず実用性が高いことが挙げられる。
写真の993のオーナー、クリス・マッキンレーが、妻のケーティと2歳の息子テディを連れて、ヨークシャーからミッドランドまで本誌の写真撮影のために快適に移動してきたことが、このモデルの実用性を実証しているだろう。
幼いテディも、狭いバックシートに合わせて設計されたポルシェのチャイルドシートのお陰で、ドライブを楽しめたようだ。ベビーカーを積む十分なスペースもあった。こんなことができるスーパーカーは、他にはなかなかないだろう。
「最後の空冷911である993をとても気に入っているんです。希望通りの色の組み合わせもそうですし、走らせるのはもちろんのこと、ガレージで眺めているだけでも楽しむことができますね。2時間以上眺めていて、妻に呆れられたこともありますよ」とマッキンレーは語ってくれた。
「買ってからまだ1年しか経っていませんが、その間、ホイールアーチのライナーを取り外してその下をクリーニングし、ワックスを掛けましたね」
「あとはエンジンベイも掃除しました。メンテナンスといえばこれくらいのものです。あ、そうそう。どうしてポルシェは、ケーブル結束具を鋭利にするんでしょうか。お陰で手を突っ込む度に怪我をしてしまうんですよね」と、満更でもなさそうな表情でテンポよく話が続く。
993と996 オーナーの語る「ポルシェ像」
「夏にはこのクルマでフランスのカルカソンヌに行きました。ポーツマスまでクルマを走らせ、ビルバオまではフェリーに乗り、ピレネーまでドライブし、そこでわたしの父と母と合流しました。この長距離ドライブ、特に山越えが楽しくて堪りませんでした」と、のろけ話も勢いを増すばかりだ。
「ポルシェ991を貸りたこともありますよ。ただ、最近のモデルは速すぎます。ほんの数秒アクセルを踏み込めば、あっという間にモーターウェイの終点まで到着してしまいそうな気分になります。それに比べると僕の993は、絶対的な速さはないけれど、夢中にしてくれます。特に長距離ドライブでそう感じますね」
一方、996のオーナー、アリステア・アルブレット(音楽プロデューサー)は、マッキンレーの993に乗り込んで「いやぁクラシックですね。僕の996はもっとモダンですよ」と胸を張る。
「ずっと昔にマセラティ・グランスポーツを持っていたこともあるんですよ。あれは速かったなぁ。身の危険を感じる速さでしたね。レンジローバーにも乗っていましたが、乗り続けている間に価値が半分に下がってしまったのには泣かされました。整備代も嵩み、ランニングコストもかなりの金額でした。もう、クルマにお金をかけるのにウンザリしちゃったんです」
「それに比べると996は最高のオモチャです。気に入っていますよ! このクルマは、走行距離がまだ短く、オーナー履歴もはっきりしていますから、価値が下がることもないでしょうね」とアルブレットは語ってくれた。
本当にその通りだ、とわたしも思った。
996、これから価値は高まるのか?
50周年記念の記事を掲載したときには、およそ£10,000(130万円)で996を見つけることができたが、現在、この程度の金額では、走行距離が10万マイル以上で、ティプトロニックを搭載したモデルしか購入できない。
予算を£16,000(208万円)から£7,000(221万円)に増額できるなら、走行距離もほどほどでオーナー履歴のはっきりした、モデルチェンジ後の3.6ℓマニュアルが手に入る、といった具合である。
程度が同じくらいの993を手に入れるなら、2倍の金額が必要になるのだから、996は、ロード&トラック誌がかつて書いたように、今でも「今世紀最大のお買い得な911」といえるだろう。
これまでの動向を考えれば、じわじわと価値が高まるのも十分にあり得るのではないだろうか。
伝統的ポルシェファンがどう言おうが、996はどの部分をとっても911であり、たとえ993の隣を走ったとしても、動的性能に不満を感じることはない。
996はまちがいなくもっとも長足の進化を遂げた911だ。少なくとも993とこのクルマの間には別のモデルがもう1世代あったとしても不思議ではないくらいに大きな違いがある。
発売当時、996は、それまでポルシェを購入候補にしなかったような層を惹きつけ、993より遙かに沢山販売された。
ティフ・ニーデルが言うように、「これ以前のポルシェに納得したことはなく、これ以降のポルシェにこれほど惚れ込んだこともない」と多くの人に感じさせたことが、996の何よりの存在意義ではないだろうか。
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